魚料理を難しくしているのは、思い込みが原因!?“魚の伝道師”ウエカツさんが教えてくれる魚の特徴や調理の仕組みは、「まさか! そうだったの?」と驚かされることばかり。思い込みをひとつずつ解消していけば、魚料理がきっと、易しくなるはず!
ウエカツさんこと
上田勝彦さん(うえだ・かつひこ)
(株)ウエカツ水産 代表取締役、東京海洋大学客員教授。1964年、島根県生まれ。長崎大学水産学部卒業後、漁師を経て水産庁の職員に。魚の鮮度保持技術や地域加工品の開発、食育関連の事業に携わる。2015年に(株)ウエカツ水産を立ち上げ、全国の水産関係者の相談に応じるほか、トークと料理で魚の魅力を伝える
わさび醤油だけじゃない!
まぐろの刺身は、もっと愉しめる。
冷凍技術の向上で旨いまぐろが身近に。
まぐろは、古くから食べられてきた魚。縄文時代の遺跡から骨が発掘されている。ただ、江戸時代には価値が低い魚という意味で“下魚”と言われ、明治・大正には、あじや鯖と同じ大衆魚とされていた。それは、海から市場まで運ぶのに時間がかかったことが理由。まぐろは傷みやすく、市場に届くまでに味が落ちてしまうからだ。
今は、交通網も冷凍保存技術も発達し、まぐろの価値は大きく変わった。高級な料理屋でなくたって、おいしいまぐろが生で食べられる。スーパーで売られている冷凍のものも十分旨い。魚が苦手でも、まぐろの刺身だけは好きという子どもも多いよね。チェーンの寿司店でも、常に人気の上位だ。
今回は、まぐろの刺身をもっと好きになってもらえるような料理をお伝えしよう。“刺身は醤油とわさびで食べる”のが当たり前になっているけど、本当はもっといろんな愉しみ方があるんだよ。
塩で締めれば、刺身が劇的に変化。
まずは、塩まぐろを作ってみよう。これは塩締めという技術で作るもので、ただ塩をまぶして少しの時間おいておくだけ。実に簡単なんだが、これだけで劇的にまぐろの刺身が旨くなるんだ(詳しい作り方は次のページに)。
塩締めの大きな魅力は、魚そのものの味が濃厚になること。塩の脱水効果で余分な水分が抜けるから、魚の味がはっきりする。醤油は必要ない。そのままでもいいし、白髪ねぎなど薬味をのせてもいい。身も引き締まるし、ねっとりとした食感になって、今まで食べてきたまぐろの刺身とは違うことがすぐわかるはずだよ。
塩をまぶして、5分ほどで表面にほんのりと塩味が入る。一晩おいておくと、中までしっかり塩味が入って、まるで生ハムみたいになる。これもまた旨いよ。
塩まぐろだけでも十分愉しんでもらえると思うけど、そこから、さらにアレンジもできる。酢締めにする和風、カルパッチョのような洋風、そして、ピリ辛の中華風。それぞれ、まったく違ったまぐろの魅力が感じられるよ。
塩まぐろと、和・洋・中のアレンジ
まぐろの刺身は「わさび醤油で食べるもの」だと思ってない? それはそれでおいしいけど、もっと多彩な愉しみ方があるんだ。まずは、塩締めの技術で作る、塩まぐろ。味が凝縮するから、そのままで十分旨い。塩まぐろから、簡単に和風、洋風、中華風の料理にアレンジできる。まぐろの新たな味わいに出合えるよ。