肥満がさまざまな病気につながることはよく知られていますが、“太っていないから健康”だとも言い切れません。実は、肥満ではない人でも溜まってしまう“第三の脂肪”があるのです。知らぬ間に溜まる、第三の脂肪。それは、日本人特有の体質にも理由がありました。
太っていなくてもキケン!!知らぬ間に溜まる第三の脂肪
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太っていなくてもキケン!!知らぬ間に溜まる第三の脂肪
溜まってはいけない“ありえない”脂肪。
肥満は、美と健康の敵。太らないように注意している人は多いでしょう。しかし最近、太っていない人でも溜まってしまう、新たな脂肪があることがわかってきました。太ももやお尻につきやすい皮下脂肪とも、お腹周りを大きくする内臓脂肪とも違う“新たな敵”。それが、第三の脂肪とも呼ばれている異所性脂肪。骨格筋(筋肉)や肝臓、心臓など、脂肪がつくはずのない場所に溜まってしまう、“ありえない”脂肪です。
皮下脂肪も内臓脂肪も、それぞれ体温維持や内臓や骨を支える働きがあり、ある程度は必要なもの。それに対して、異所性脂肪は蓄積したその臓器の機能を悪化させ、重大疾患を引き起こすと考えられています。
「代表的なのは脂肪肝。“フォアグラ状態”とも揶揄される、脂が肝臓に溜まる病変です。溜まっているその脂こそ、異所性脂肪。お酒を飲む人がかかると思われていますが、飲酒が原因ではない脂肪肝もあります。非アルコール性脂肪性肝疾患といって、のちに肝硬変や肝がんになることもあります。ほか、肝臓と骨格筋に溜まれば糖尿病や高血圧などのリスクが高まります」
と、糖尿病を専門に異所性脂肪を研究する、順天堂大学の竹野景海先生。
“太れない”日本人。標準体型でも病気を発症。
異所性脂肪が怖いのは、肥満ではない人にも溜まってしまうこと。日本人は標準体型でも、さまざまな病気を発症してしまうことがあります。
「脂肪肝や糖尿病など生活習慣病がある人は、欧米人では多くがBMI30を超える肥満です。しかし、日本人をはじめとするアジア人は、BMI25以下の標準体型で発症することが多い。脂肪肝に関してはBMI23でも発症することがわかっています(下のグラフを参照)。そして、糖尿病を発症する人の平均のBMIは、現在でも25未満と報告されています。なぜ日本人は、肥満でなくても糖尿病を発症するのか? 原因として、欧米人に比べてインスリンの分泌が少ないことがありますが、そこに異所性脂肪も関係していることがわかってきたのです」
標準であるBMI25を超えて脂肪肝の有病率が高くなっているのは、ほぼ欧米の国々。対してアジア諸国は、25未満でも有病率が高くなることが報告されています。特に日本は、23を超えた途端に約10%も有病率が上がるとの報告も。BMIの変化はほんのわずかですが、身体の中は異所性脂肪によって大きく変化している可能性が考えられます。
身体にとって害となる場合が多くある異所性脂肪。日本人は、“太れない体質”だからこそ、異所性脂肪が溜まりやすい可能性があるのです。
「日本人は、欧米人のように太れる人は多くありません。皮下脂肪、内臓脂肪を蓄える力が弱いからこそ、余ったエネルギーを異所性脂肪として蓄えようとするのかもしれません」