知っているようで知らない!?免疫のメカニズム
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知っているようで知らない!?免疫のメカニズム
苦手や困難を乗り越えたときの例えとして「免疫ができた」と表現することがあるように、免疫という言葉を、知らない人はいないはず。でも、それがどんなもので、どう働いているのかをご存知ですか?知っているようで知らない、免疫の仕組みや働きをお伝えします。
ヒトが備える免疫力。個人差があるのはなぜ?
生命維持になくてはならないものでありながら、免疫がどのような仕組みで、どのように働いているのか、よくわからない、という人も多いはず。そもそも免疫とは何なのでしょうか?
「免疫とは、骨髄や胸腺、脾臓、リンパ節、血管、皮膚、腸管などさまざまな臓器や器官が連携して構成される、いわば身体を守るためのネットワークシステムです。ウイルスや細菌など異物の侵入を防いだり、細胞を修復・再生させたり、身体の機能を正常な状態に保つなどの働きがあります」
そうした免疫の力を免疫力と呼んでいます。免疫は、特別な病気や障害がない限りすべての人に備わっていますが、免疫力の強さには人によって差があります。それはなぜなのでしょうか?
「免疫システムの主役であるリンパ球には、T細胞やB細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞といった免疫細胞があります。T細胞とB細胞の力の強さは一生を通して変わらないのですが、NK細胞はその人の状態によって大きく変化します。それによって免疫力に個人差が生じるのです」
免疫細胞には、“軍隊”と“おまわりさん”がある!
T細胞とB細胞、そしてNK細胞。それぞれの働きで、体内の異物を攻撃し、連携しあって撲滅しようとするのだそうです。
「ヒトの身体をひとつの国家に例えると、T細胞とB細胞は国を守る軍隊のような存在です。軍隊ですからとても強靭。ヒトが200歳まで生きたとしてもその力の強さは少しも衰えません。目や心臓などは、100歳にもなるとやはり機能は衰えますが、T細胞もB細胞もまったく変わらないのは、免疫がヒトの命にとってそれだけ重要なものだということです」
軍隊が動くのは、普段とは違う、大事が起こったとき。例えば風邪で高熱が出たときにT細胞とB細胞はウイルスを攻撃し処理をしますが、平和なとき、つまり健康なときにはどちらも働くことはありません。
「一方、NK細胞は街の治安を守る警察官、いわゆるおまわりさんのような存在です。T細胞やB細胞がリンパ球の80%を占めるのに対して、NK細胞は20%しかないのですが、このNK細胞こそが、ヒトの健康を日々守っているのです」
免疫は大きく、生まれながらに備えている自然免疫と、出生後、病原体などと接することで得られる獲得免疫に分けられます。おまわりさんに例えられるNK細胞は自然免疫、軍隊に例えられるT細胞・B細胞は獲得免疫にあたります。それぞれ、役割が異なり、協働しながら身体を守ってくれています。
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体内に入り込んできたウイルスや細菌などの"敵"を最前線で攻撃するのが主な働き。NK細胞のほか、顆粒球、マクロファージなどの細胞が、協働して敵に攻撃を仕掛けます。NK細胞は体内を巡回し、がん細胞を発見すると指令を必要とすることなく攻撃。生まれながらにして強力な殺傷能力を持つことから、"ナチュラルキラー"と名づけられました。
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自然免疫で対処しきれなかった"敵"を攻撃、そしてそれぞれの敵に応じた最良の攻撃法を記憶していくのが主な働き。初めて出合う敵に対しては数日準備期間が必要ですが、すでに出合っている敵にはすみやかに攻撃を仕掛けます。一度はしかにかかると、二度とかからないのは、この働きによるものです。
5000個のがん細胞を毎日NK細胞が撃退!
驚くべきことに、おまわりさんに例えられるNK細胞が、実はがんの発症を防いでいるのです。
「ヒトの身体には、毎日、約1兆個もの新しい細胞が生まれています。それだけの膨大な数が生まれるわけですから、中には不良品のようなものもできてしまいます。それががん細胞。誰の身体でも1日約5000個のがん細胞が毎日生まれているのです。そのがん細胞を撲滅しているのが、日々、身体の中をパトロールしているNK細胞なのです」
医者からがんだと言われないのは、NK細胞が働いているからだと先生。ただ、おまわりさんに例えられるだけに、軍隊のような強靭さはありません。
「先述のように、NK細胞は加齢に加えて、その人の状態によって変化します。悪い生活習慣やストレスが続くと、数が減少したり、その力自体が弱まってしまうのです。NK細胞は、がん細胞など変質した細胞への殺傷能力は高いのですが、T細胞やB細胞と違って、さまざまな要因に影響を受けやすい。『免疫力を高める』というのは、このNK細胞を活性化させる、ということなのです」
健康のためには、NK細胞を活性化させること。しかし、誤った健康習慣によって、その力を弱めてしまっているケースが実に多いようです。NK細胞に悪影響を及ぼす習慣・考え方とは……? 次ページで、その例を紹介します。