
魚料理を難しくしているのは、思い込みが原因!?“魚の伝道師”ウエカツさんが教えてくれる魚の特徴や調理の仕組みは、「まさか! そうだったの?」と驚かされることばかり。思い込みをひとつずつ解消していけば、魚料理がきっと、易しくなるはず!
読了時間:5分
煮魚の味が決まらない?調味料の順番が違うかも。
「さしすせそ」ではなく、調味料の機能で考える。
「魚料理は難しい」。そんな“思い込み”を取っ払ってもらいたい、という想いからスタートしたこの企画。今回は、魚料理の中で「最もハードルが高い」と多くの人が感じている、煮魚をテーマにお話ししよう。本当は、煮魚は実に簡単。仕組みがわかれば、一気にハードルが下がるはずだよ。
煮魚が苦手な理由は、味つけが難しいことではないだろうか? 調味料の分量の加減が難しいと思っているかもしれないけど、実は、分量ではなく、順番が重要。「さしすせそ」で順番を覚えている人も多いかもしれないね。「さ」は砂糖、「し」は塩、「す」は酢、「せ」は醤油、「そ」は味噌のことだ。もちろん、それで覚えてもいいんだけど、それには和食に重要な、酒やみりんは入っていない。実際には「さしすせそ」は使いにくいと言える。それに、順番をただ暗記するよりも、なぜその調味料がそこで必要なのか? を、理解して料理したほうがいい。旨い煮魚を作れるのはもちろん、料理の腕前がぐんと上達するはずだから。
先に細胞を緩めるもの、後に細胞を締めるもの。
調味料は、“味つけ”だけでなく、素材に働きかける“機能”がある。これまでにも、塩には脱水や、保存性を高めるという機能、酒には、においを分解する機能があることを紹介したよね。料理をする際の調味料の順番は、それが“細胞を緩める”機能のものか、“細胞を締める”機能のものかで考えよう。
細胞を緩める調味料は、酒と砂糖。一方の細胞を締める調味料には、塩、醤油、酢、みりん、味噌がある。順番は、緩めるほうが先で、締めるほうが後。細胞を緩めることで味を入りやすくして、締めることで味を閉じ込めるというわけ。単純明快な仕組みだよね。
調味料の役割
味をつけるだけではなく、素材を変化させる役割もある。「さしすせそ」と覚えるよりも、その仕組みを覚えよう。
先に入れる調味料|細胞を緩める役割
素材の細胞を緩めて、味を入りやすくするので……「先に入れる調味料」
- 砂糖
- 酒
後から入れる調味料|細胞を締める役割
細胞を締め、入った味を閉じ込めるので……「後から入れる調味料」
- 塩
- 味噌
- 醤油
- みりん
- 酢
煮魚の定番!
カレイの煮つけ、どう作ってる?ただ煮るだけではないんです。
調味料を鍋に入れて沸騰させ、魚を入れ、落とし蓋をして煮る。煮魚の作り方はほぼこんな感じ。しっかり味をつけるためにと、長い時間煮ていない? それでは味が入らないし、身が硬くなってしまうだけだ。素材に働きかける調味料の機能を利用して作れば、短時間で、味のしみ込んだ旨いカレイの煮つけができ上がる。
煮魚の定番!カレイの煮付け
煮魚のレシピは、多くが「すべての調味料を煮立て、魚を入れ、落とし蓋をして煮る」というものだ。今回お伝えする煮魚の作り方は、それとはまったく違う。まずは、フライパンに酒を沸騰させ、魚を入れ、砂糖を入れる。ここで酒蒸しにしながら魚の細胞を緩めるわけだ。ある程度火が通ったら、次に醤油、みりんを入れて仕上げていく。細胞を締めるから、魚に入った味を閉じ込めることができる(カレイの煮つけの作り方は下を参照)。
醤油とみりんを入れて仕上げていく際に、煮汁を魚に回しかけるんだけど、これは魚に味を入れていくための大切な作業。「煮物は、冷めるときに味が入る」というのと同じ原理だ。細胞は高温になるとふくらみ、温度が下がるとしぼむ。しぼむときに、素材が煮汁を吸い込んで味が入っていくんだ。魚に煮汁をかけた瞬間に細胞が熱せられてふくらみ、次の瞬間には温度が下がるから、それを繰り返すことで、どんどん味がしみ込んでいく。だから魚が煮汁につかっている必要はない。そして、忘れてはいけないのが、フライパンを火から下ろした後も、しばらく煮汁を回しかけ続けること。加熱を止めて温度が下がっていくときにも煮汁をかけることで、さらにしっかり味が入るんだ。
カレイの煮付けの作り方
カレイだけでなく、どんな魚でもこの方法で作れる。鯛や鱈、鯖、あじ、いわしなど手に入りやすい魚で試してみよう。
1| 洗って、切り込みを入れる
カレイを流水で洗い、水分を拭き取ったら、腹と背の両方に切り込みを入れる。包丁が骨に当たるまで深く切り込む
2| 酒を沸騰させる
フライパンに酒を少し入れ、強火で沸騰させる。これで、カレイがフライパンにくっつくのを防げる
3| 酒を足し、砂糖を入れる
❷のフライパンに、カレイを入れ、3分の1がつかる程度に酒を足して、ほの甘くなる程度に砂糖を入れる
4| 蓋をして、蒸す
フライパンに蓋をして、中火で酒蒸しにする。カレイの身が浮いて中の骨が見えるようになったら、火が通ったサイン
5| 醤油、みりんを入れる
弱火にして、醤油を入れる。好みの塩味になったか味見。次にみりんを入れ、好みの甘味になったか味見をする
6| 煮汁をかけ仕上げていく
カレイにつやが出るまで煮汁をかけながら煮る。目安は3分。火を止めてからも、しばらく煮汁をかけ続け、味をしみ込ませる
調味料の分量は味をみながら決める。
煮魚の定番、カレイの煮つけのほかに、鯖の味噌煮の作り方も紹介しておこう。基本はカレイの煮つけと同じ。違う点は、醤油を味噌に変えること、醤油が入らない分、最初に入れる酒の量を増やすこと(鯖の半分がつかるくらい)、くらいだ。生姜を入れるなら、酒と砂糖を入れるときに。ただ、入れなくてもいいよ。青魚はにおいが強いから生姜は必須だと思っているかもしれないけど、生姜にはにおいを消す成分はないんだ(においを隠す作用はあるけどね)。調味料の機能を利用して下処理(「魚の洗い方」を参照)をしておけば、においは気にならないわけだから、生姜は不要。でも、煮汁を吸った生姜は旨いから入れたい、はアリだ。下茹でした大根やごぼうなどの根菜を入れてもいいね。
よく「調味料はどれくらい入れたらいいのか?」と、聞かれるんだけど、それは自分で決めよう、と僕は答えている。料理をしながら、自分の舌で確かめながら味を決めていくんだ。「レシピに書いてある通りに調味料を入れたのに、味が決まらない」と言う人がいるけど、味の好みは人それぞれだ。甘味の強いほうがいいのか、塩味の強いほうがいいのか、自分の好みに合わせて味を作るのが、旨い料理を作る秘訣だと思うよ。
煮魚は、時間がかかる上に失敗が多いと思っていたでしょ? 本当は短時間で簡単に旨く作れるものなんだ。何度も失敗して、作らなくなってしまったって人でも、これなら上手くいくはずだ。
鯖の味噌煮の作り方は、カレイの煮つけとほぼ同じ。好みに応じて砂糖を増やしたり、醤油を加えてもいい。調味料の分量は自分で決めていいんだ
















