魚料理を難しくしているのは、思い込みが原因!?“魚の伝道師”ウエカツさんが教えてくれる魚の特徴や調理の仕組みは、「まさか! そうだったの?」と驚かされることばかり。思い込みをひとつずつ解消していけば、魚料理がきっと、易しくなるはず!
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ウエカツさんこと
上田勝彦さん(うえだ・かつひこ)
(株)ウエカツ水産 代表取締役、東京海洋大学客員教授。1964年、島根県生まれ。長崎大学水産学部卒業後、漁師を経て水産庁の職員に。魚の鮮度保持技術や地域加工品の開発、食育関連の事業に携わる。2015年に(株)ウエカツ水産を立ち上げ、全国の水産関係者の相談に応じるほか、トークと料理で魚の魅力を伝える
煮魚の味が決まらない?
調味料の順番が違うかも。
「さしすせそ」ではなく、調味料の機能で考える。
「魚料理は難しい」。そんな“思い込み”を取っ払ってもらいたい、という想いからスタートしたこの企画。今回は、魚料理の中で「最もハードルが高い」と多くの人が感じている、煮魚をテーマにお話ししよう。本当は、煮魚は実に簡単。仕組みがわかれば、一気にハードルが下がるはずだよ。
煮魚が苦手な理由は、味つけが難しいことではないだろうか? 調味料の分量の加減が難しいと思っているかもしれないけど、実は、分量ではなく、順番が重要。「さしすせそ」で順番を覚えている人も多いかもしれないね。「さ」は砂糖、「し」は塩、「す」は酢、「せ」は醤油、「そ」は味噌のことだ。もちろん、それで覚えてもいいんだけど、それには和食に重要な、酒やみりんは入っていない。実際には「さしすせそ」は使いにくいと言える。それに、順番をただ暗記するよりも、なぜその調味料がそこで必要なのか? を、理解して料理したほうがいい。旨い煮魚を作れるのはもちろん、料理の腕前がぐんと上達するはずだから。
先に細胞を緩めるもの、後に細胞を締めるもの。
調味料は、“味つけ”だけでなく、素材に働きかける“機能”がある。これまでにも、塩には脱水や、保存性を高めるという機能、酒には、においを分解する機能があることを紹介したよね。料理をする際の調味料の順番は、それが“細胞を緩める”機能のものか、“細胞を締める”機能のものかで考えよう。
細胞を緩める調味料は、酒と砂糖。一方の細胞を締める調味料には、塩、醤油、酢、みりん、味噌がある。順番は、緩めるほうが先で、締めるほうが後。細胞を緩めることで味を入りやすくして、締めることで味を閉じ込めるというわけ。単純明快な仕組みだよね。
味をつけるだけではなく、素材を変化させる役割もある。
「さしすせそ」と覚えるよりも、その仕組みを覚えよう。
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素材の細胞を緩めて、
味を入りやすくするので……
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細胞を締め、入った味を
閉じ込めるので……
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- 煮魚の定番!カレイの煮つけ、どう作ってる?
ただ煮るだけではないんです。 - 調味料を鍋に入れて沸騰させ、魚を入れ、落とし蓋をして煮る。煮魚の作り方はほぼこんな感じ。しっかり味をつけるためにと、長い時間煮ていない? それでは味が入らないし、身が硬くなってしまうだけだ。素材に働きかける調味料の機能を利用して作れば、短時間で、味のしみ込んだ旨いカレイの煮つけができ上がる。
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