vol.1
[今回の野菜] 嬬恋キャベツ (群馬県 嬬恋村)
サラダや炒め物、ロールキャベツに温野菜など、料理の幅を広げてくれる。そんな食べやすさや手軽さから、食卓をいつも彩ってくれる身近で栄養豊富な野菜「キャベツ」。ビタミンCを多く含み、胃の動きを助けるビタミンUも含む特徴があります。そのキャベツの名産地として全国に知られる、群馬県の嬬恋村を訪れました。
日本一の夏秋キャベツの産地には、 大地と人のステキな関係がありました。
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日本一の夏秋キャベツの産地には、 大地と人のステキな関係がありました。
思わず溜め息、夏でも涼しい絶好のロケーション
1年中食べられる、ビタミンたっぷりのキャベツ。時期や産地でキャベツの特徴は違いますが、中でも嬬恋の夏秋キャベツはその甘さが魅力的で、日本一の生産量を誇ります。見渡す限り広がるキャベツ畑は、東京ドーム約641個にあたる3,000ha。嬬恋を歩いて驚いたのは、6〜9月でも平均15〜20℃という涼しい高原の気候でした。そんな嬬恋の大地は、高温や干ばつに弱いキャベツにとって、まさにぴったりのロケーションといいます。しかも、嬬恋キャベツは様々な品種があり、6月〜10月の間、それぞれの時期や標高にあわせた品種の苗が植えられるそうです。この広大な大地で、一心にキャベツづくりに励まれる黒岩さんにお話を聞くことができました。自然と向き合って歩んできた、嬬恋のキャベツづくり。
明治33年から140年以上も続いている嬬恋のキャベツづくり。小さな畑ではじまったキャベツづくりも、今では村を変えた一大産業です。その力のもとになったのは、寒さと暖かさの差による「朝露(あさつゆ)」が生むキャベツの甘さ。そう、大地の恵みが、村の恵みとなっています。嬬恋に広がる畑のほとんどが、代々受け継がれてきたそうです。黒岩さんもその一人。「長雨や過酷な暑さはキャベツの大敵。キャベツづくりは自然との戦いでもあります。だからこそ、自然と向き合いながら、目で見て、手でふれて、キャベツの健康状態を管理する技術が培われています」と、黒岩さん。畑とともに、キャベツづくりへの情熱も受け継いでいるように感じられました。だから、嬬恋のキャベツって“おいしい”んだ!
足を運んだのは、ちょうど収穫期。それぞれの農家の家族はもちろん、アルバイトの皆さんが力を合わせて取り組む、村がひとつになる時です。キャベツの収穫は、広大な畑にもかかわらず機械を使うことなく、一つひとつ手作業で行われます。また、嬬恋のキャベツは収穫を経て、しっかりと冷してから出荷されます。そこで注目したいのは通風予冷と真空予冷。キャベツの葉がしなびないように考えられた予冷です。「おいしいまま届けたいですから」と、黒岩さん。収穫から出荷までのきめ細かな気配りは、ベストな状態でキャベツを届けるため。そこにはキャベツへの想い、食べる人への想いがありました。嬬恋の大地に、思わずこぼれる「ありがとう」
「おいしいと言ってもらうのが何よりもうれしい。だからこそ、安心して食べていただくことが第一」と、黒岩さんは言います。私たちの持っている、あたりまえの安心は、農家一人ひとりの徹底した品質管理があるから。嬬恋の大地に感謝する作り手。それに応えるように育つキャベツ。そんなお話を聞くほど、食卓へ届くおいしいキャベツに、自然と感謝の気持ちが湧いてきます。お話を聞く一方で、もうひとつ心に残ったのは、嬬恋では後継ぎに困っている農家の方が比較的少ないこと。一度は村を離れた子どもたちも、いつしか帰ってくる。それは畑を見て、手伝ってきた思い出が強く残っているからかもしれません。それも、ここに来て感じられた、嬬恋という大地の魅力でした。- チェックすべきは葉の巻き具合い。
季節で使い分けると、もっとおいしい。 今回、お話をお聞きした黒岩さんによるキャベツの見分け方をご紹介。煮物や炒め物におすすめの秋キャベツは、葉がしっかりと巻かれたものが、おいしいそうです。おいしいキャベツは密度が高く、ずっしりと重くなるので、見た目で判断できないときは持ち比べるといいそう。また、夏キャベツはサラダなどの生食向きで、葉の巻きがふんわりとしているものが柔らかくておいしいとのことです。選ぶ時の参考にしてみてください。