「疲労」と「疲労“感”」は別もの!?自己流では「疲労“感”」しかとれていないかも!?
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「疲労」と「疲労“感”」は別もの!?自己流では「疲労“感”」しかとれていないかも!?
鰻やにんにくには疲労“感”を抑える成分が
私たちは、疲労という言葉を、とてもあいまいに考えているようです。日本疲労学会では、【疲労】と【疲労感】は、明確に区別して使われています。
「疲労と疲労感は、同じものとして語られることが多いようですが、実は別のものです(下記のコラムを参照)。仕事や家事、運動をしたときに、『疲れた』と感じますね。それが【疲労感】。脳で感じているものです。一方の【疲労】は、細胞や組織の機能が低下した状態。いわば、身体のダメージです。脳で感じるものと、身体の中にあるものですからまったく別のものですが、どちらも【疲労因子(*)】という物質が原因になっているのは同じ。身体へのさまざまな負荷によって生じた疲労因子が、炎症性サイトカインを作ることによって疲労感を生み、また、身体のダメージである疲労を引き起こします」
本当は疲れているのに、気づくことができないのは、疲労因子の作用がふたつにわかれるため。
「一方の疲労感だけを消すことができるので、身体の中にある疲労に気づけなくなるのです。例えば“疲労回復に役立つもの”としてよく知られている、栄養ドリンクやエナジードリンク。飲めば疲れがなくなったように感じますが、多くの場合、疲労感だけが抑えられています。栄養ドリンクやエナジードリンクには、疲労感を生む炎症性サイトカインが作られないようにする成分が多く入っています。代表的なのは抗酸化物質。細胞や組織の障害を防ぐ作用があるよい成分ですが、疲労感を抑えるようにも働いているのです」
疲れたときによく食べられている鰻やにんにくも、疲労感を抑えるもの。鰻が含むビタミンAやビタミンE、にんにくが含むビタミンCなどの抗酸化物質が、疲労感を抑えているのです。
「カフェインは、興奮作用によって脳に生じた疲労感を打ち消します。コーヒーにはカフェインに加え、グルクロン酸という疲労感を抑える成分も含まれますから、飲み過ぎには注意が必要です」
なんとなく同じような意味で使っている【疲労感】と【疲労】という言葉。実はこれ、それぞれ違うものです。疲労因子が炎症性サイトカインを作り、それが脳に伝わると【疲労感】に。一方で、身体のダメージである【疲労】を増大させる作用もあります。栄養ドリンクなどは、疲労感を抑える作用があるので、疲労に気づかないことがあります。
適度な疲労感は必要。大切な【生体アラーム】
疲労感がなくなれば、仕事も運動も楽になるのでは? と思われるかもしれません。もちろん疲労感を抑えるのは悪いことではありませんが、疲労感だけを長く抑え続けることには、危険が潜んでいます。身体のダメージ回復に必要な休息を、取ろうと思わなくなるからです。
「植物に例えるなら、疲労感は地上に生える葉の部分、身体の疲労は根の部分。これまで疲労回復によいとされてきたものは、葉の部分だけを刈り取っているようなもの。根の部分は残っていますから、疲労そのものが回復しているわけではありません。疲労感は、身体の異変を伝える【生体アラーム】です。激しい運動をしたときに休みたくなるのは、『疲れた』と感じているから。これ以上運動すると危険だ、休みなさいという知らせを受け取れているのです。この生体アラームがきちんと働いて適切な休息をとらないと、身体の中にある疲労がどんどん大きくなってしまうわけです」
「普段あまり疲れを感じない」という人は、もしかしたら疲労“感”を抑えるものを多く摂っているかもしれません。