年齢を重ねて、太りやすくなった……。30~40代に身体が変わってしまった、と感じたことはありませんか? それには、ある脂肪の減少が関係していると言われています。脂肪が減って太りやすくなるとは、ちょっと考えにくいことですが、エネルギーを溜め込むあの脂肪とは違い、エネルギーを燃やす脂肪があるのです。
脂肪を燃焼させる!『褐色脂肪細胞』&『ベージュ脂肪細胞』
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脂肪を燃焼させる!『褐色脂肪細胞』&『ベージュ脂肪細胞』
皮下脂肪、内臓脂肪とは正反対の働きが!
お尻や太ももにつきやすい皮下脂肪や、お腹周りを大きくする内臓脂肪。なかなか落ちてくれない身体のお肉を見る度、ため息をついてしまいます……。脂肪は「なくなればいいのに」と感じてしまうほど、イヤなもの。でも、「なくなっていく」ことで、肥満につながる脂肪があるのです。
「それは、褐色脂肪細胞と言われるものです。加齢とともに“なくなって”いくことで、いわゆる“中年太り”になると考えられています」と、褐色脂肪細胞を研究する、京都大学の後藤 剛先生。
「皮下脂肪や内臓脂肪にあたるのが白色脂肪細胞。褐色脂肪細胞と白色脂肪細胞は働きがまったく違います。白色脂肪細胞はエネルギーを蓄えるのが主な仕事。使い切れず余った糖質や脂質をとり込み、エネルギーとして蓄えます。その量が増えることで肥満になるのです。一方の褐色脂肪細胞は、熱を作り出すのが主な仕事。糖質や脂質をとり込んで熱を作ります」
加齢とともに増加していくBMI。それとは逆に減少していく褐色脂肪(下のグラフを参照)。“脂肪を燃やす脂肪”とも言える褐色脂肪細胞がなくなると、太りやすくなるというのも納得です。肥満予防のためにずっと味方であってほしい脂肪ですが、なぜなくなっていくのでしょうか?
加齢による褐色脂肪細胞の検出率とBMIの変化
参考文献:斉藤昌之, 化学と生物 Vol.50, No.1, 2012
褐色脂肪細胞は、加齢とともに減少し、逆にBMIは高くなっていきます。これがいわゆる“中年太り”の原因のひとつだと言えます
「褐色脂肪細胞は、赤ちゃんに最も多くあります。その理由は、体温を維持するため。命を守るためなのです。私たちは、厳しい寒さの中に置かれると、ぶるぶる震えますね。そうして筋肉を動かして熱を作っているのですが、赤ちゃんは筋肉が少なく、自分で体温を調節できません。赤ちゃんは生命維持のため褐色脂肪細胞が多くありますが、その後必要がなくなり、次第に減っていくのです」
筋肉を鍛えるように褐色脂肪細胞を活性化!
食事制限でのダイエットが失敗しやすいのは、よく知られています。私たちの身体は飢餓に備えて動くようにできているので、わずかな食事であっても、そこからエネルギーを蓄えようとするからです。
「ダイエットはカロリー制限よりエネルギー消費。筋肉を鍛えて代謝を上げれば、健康的に体重を減らせます。同じように褐色脂肪細胞を活性化させればエネルギー消費が高まり、肥満治療につながるはずだと、研究が進められているのです」
褐色脂肪細胞が減っていくのは事実ですが、活性化させるのは可能。中高年でも褐色脂肪細胞の活性が高い人は、スリムな体型を維持しているという研究データ(*)もあります。年齢を理由に、あきらめなくてもいいのです! 褐色細胞が活性化するのはどんなとき? 私たちができることは? 詳しくお伝えしていきます!
(*)斉藤昌之, 化学と生物 Vol.50, No.1, 2012