毛細血管のゴースト化が健康を左右する!?
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毛細血管のゴースト化が健康を左右する!?
身体中に張り巡らされている血管。そのほとんどが、実は毛細血管です。毛細血管が担う役割とは? それがわかれば、消えてはいけない理由もわかります!
血管の90%が毛細血管!〝輸送機関〟の役割が。
血管が大事、と聞いても、あまりピンとこないかもしれません。先生が診ている多くの女性も「血管が消えている」「血管が劣化している」とわかっても、きょとんとしていることが多いそうです。なぜ、血管が重要なのでしょうか。
「血管というと太い血管を想像されるかもしれませんが、重要なのは、毛細血管。血管の90%を占め、ゴースト化するのも毛細血管を指しています。皮膚を通して見えるのはかなり太い血管。ここから枝分かれして、身体中のあらゆる臓器・器官にびっしりと毛細血管が張り巡らされているのです」
毛細血管をはじめとするすべての血管をつないでいくと、約10万キロメートル、地球を2周半するほどの長さになるのだそうです。
「なぜ、身体中に張り巡らされているかというと、血流によって身体中の細胞に必要なものを届けたり、細胞から不要なものを回収したりするためです。血液は、心臓から送り出されたあと、動脈、毛細血管・リンパ管、静脈を通り、再び心臓に戻ってきます。身体中にある毛細血管を通ることによって、酸素やグルコースなどの栄養を細胞に届け、回収した二酸化炭素を肺で酸素に交換、老廃物を腎臓へ運んでいるのです。それによって、身体中にある60兆個もの細胞を支え、正常な働きを維持しているのです」
毛細血管の量と質が健康を左右する!?
血管は、大切なものを運ぶ重要な輸送機関。健康な血管であればその役割を担うことができますが、劣化すると、届けるもの、回収したものが血管の外へ漏れ出てしまいます(下の図を参照)。疾患や不調は、血管が衰えたり、消えてしまった部分に現れるのです。
血管は内皮細胞と、その外側に巻きつくようにしてある壁細胞でできています。それぞれが密着していることで、安定を保っています。
安定した血管であれば、酸素や栄養、水分をすみやかに運ぶことができ、二酸化炭素や老廃物を回収できます。また、静脈と並走するリンパ管での老廃物の回収もスムーズに行われます。しかし、毛細血管の壁細胞がはがれると、内皮細胞との間にすき間ができ、不安定な状態になります。そこから栄養などの必要なもの、老廃物などの不要なものが漏れ出し、輸送機関としての役割が不完全になってしまいます。
「血液の循環は、命を支えるための重要な働き。これがうまくいかないことで、さまざまな病気が現れます。毛細血管が劣化して起こる病気として、わかりやすいのが糖尿病による合併症。糖尿病は、食べ物から得た糖分を処理できず、血中に糖があふれる状態が続いて発症する病気。糖尿病が進行すると、全身のさまざまな臓器にある毛細血管が傷つき、次第に朽ちていきます。人工透析が必要になる腎不全、最悪の場合失明してしまう網膜症、壊疽(えそ)から足の切断を余儀なくされる場合もある神経障害という糖尿病の三大合併症は、毛細血管のトラブルから起こるもの。糖尿病だけでなく、毛細血管は、生活習慣病予防の要になるのです」
脳の毛細血管が詰まると、酸素や栄養が届かなくなって脳梗塞が起こります。高血圧や動脈硬化なども毛細血管のトラブルが原因だと考えられています。
「脳梗塞で倒れて、亡くなる人と、そうでない人がいます。その違いは、毛細血管の量・質に関係していると言えます。量が多い、質がいい人は、健康で長生きできると考えられます」
毛細血管の健康は大きな病気だけでなく、女性にとって身近な問題である美容面にも大きくかかわっています。