女性ホルモンだけじゃない。膣内の乳酸菌の減少も原因に。
痛みやかゆみ。GSMはこうして起こる。
更年期症状は、女性ホルモン・エストロゲンの低下によって起こる。それは広く知られていること。実は、筆者はかつて“エストロゲンの低下”という言葉に不安になり、耳をふさぎたくなるような思いでした。筆者の友人もやはり同じで、今でもその話をし始めると途端に表情が曇ります。もしかしたら、あなたもそうかもしれませんね。でも、この先も読み進めてほしいのです。仕組みがわかると、どう対策をすればいいのかがわかりやすくなるからです。
「GSM症状が起こるきっかけとして、ひとつにエストロゲン不足による腟壁の菲薄化が挙げられます。腟壁が薄くなることで、水分を蓄えづらい状態になり自然な潤いが減少。腟、外陰部が乾燥し刺激に弱くなります。痛みやかゆみが起こるのはこのためです」
乾燥やヒリヒリとした痛みは、筆者の周りからもよく聞きます。中にはショーツが当たっただけで痛いという女性もいました。
「尿漏れや頻尿、尿意切迫などは、骨盤底筋のゆるみとも関係しています。これもエストロゲン不足が原因。私たちが40~90歳の日本人女性1万人を対象に行った大規模調査では、尿漏れ、頻尿が最も頻度が高いことがわかりました(下のグラフを参照)」
デリケート部位の変化によって起こる、
さまざまな不快症状。
10,000人が回答した不快症状。
デリケート部位に、どんな症状がありますか?
腟内フローラの乱れが、さまざまな不調の原因に。
腟壁が薄くなる。骨盤底筋がゆるむ。そして、さらに変化することがあるのだそうです。それは腟内の環境。腸にさまざまな細菌が生息して集団を形成する腸内フローラがあるのと同じように、腟にも多くの細菌が生息し、【腟内フローラ】を形成、環境を維持しているのです。
「腟壁の中には、糖の一種であるグリコーゲンが蓄えられていて、腟内に生息するラクトバチルス属の乳酸菌は、それを餌にして乳酸を作っています。腟内は乳酸が多い状態、つまり弱酸性が保たれることで雑菌の増殖を防ぐ自浄作用が働いているのです。しかし、腟壁が薄くなるとグリコーゲンが減少。十分な餌を得られないためラクトバチルス属乳酸菌も減少します。それによって腟内フローラが乱れ、大腸菌など病原性を持った菌が増えてくるのです。起こりやすくなるのは、細菌性腟症。においの強い、粘調なおりものが増えるといった症状がみられる感染症です。腟内で増えた悪い菌は膀胱へも移りますから、膀胱炎にもかかりやすくなり、再発も多くなります。さらには性感染症や子宮頸がんのリスクが高まることもわかっています」
“エストロゲンの低下”は、こんなにも影響が広がっていくのかと、驚いた筆者。筆者にも思い当たる不調があり、どんな仕組みでそれが起こっているのかがわかり、すっきりしたような気持ちもあります。できるだけ進行しないよう、しっかり対策しよう! との思いを強くしました。