「雨が降ると、頭が痛くなる」「季節の変わり目は、めまいがひどい」気象の変化で不調が現れる【気象病】についての連載がスタートします。それを前に、気象病とは何か? を、まず先生にお聞きしました。
「〝感じやすい〟人は不調が起こりやすい。 それはもう、個性なんです」
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頭痛にめまい…。気象によって起こる理由。
本誌編集スタッフの数名が、ときどき訴える頭痛やめまいなどの不調。聞けば「雨が降る日はいつも」とか「春になると毎年」とか、気象や季節の変化によって起こっているのだとか。もしかしたら、同じように【気象病】に悩む読者も多いのでは? と、本誌40号(春号)で、アンケートを実施。結果は、やはり約60%が「経験がある」との回答(下のグラフを参照)。中には、どう対処すればいいのかわからないという声も。また、その不調が、気象に関係していることに気づいていない人もいるかもしれません。そこで、気象病についての連載『気象と不調のカンケイ』をスタートさせることになりました。季節ごとに多い症状について、その原因と対処法をお伝えしていきます。まずは、そもそもなぜ、気象の変化で不調が起こるのか? を、連載をご担当いただく、大阪医科大学 健康科学クリニックの後山尚久先生にお聞きしました。後山先生は、漢方医学をベースに、女性の悩みにこたえてくれる先生です。
女性に多い気象病。それは、なぜ?
- 季節の変わり目は体調を崩しやすい、とは聞きますが、それがなぜなのか深く考えたことがありません……。気象によって不調が現れるのはとても不思議です。身体の中で何が起こっているのでしょうか?
- 「ひと言で表すなら、自律神経の失調なんですよ。自律神経というのは、体調を正常に保つために、呼吸、血液循環、消化、体温調整……、ほかにもいろんな機能をコントロールしている神経。暑くなったら、体温を下げるために汗をかくのも自律神経の働きです。気象病は、自律神経が、気温や気圧をはじめとした気象全般の変化に敏感に反応して、鋭敏に動いてしまうことで起こるんですよ」
- 低気圧が影響するとはよく聞きますが、高気圧も? 気温も関係しているんですか?
- 「低気圧はもちろん、高気圧も影響します。気圧に敏感な人はとても多いのです。気温もそう。体温調節も自律神経の働きですからね。暑さ、寒さに身体を順応させるために、自律神経ががんばり過ぎるわけです。一年中気圧や気温が安定している国・地域と違って、日本は四季がありますから、気象病は起こりやすいのかもしれませんね」
- 年齢や性別でなりやすさは変わりますか?
- 「年齢、性別関係なく気象病は起こりますが、やはり女性が多いと思います。僕が診ている患者さんの中に、気象病に悩む女性は多くいます。こんなに多いのか! と思うほどですよ」
- なぜ女性が多いのでしょう?
- 「月経があるからなんです。月経周期はさまざまな女性ホルモンで調節されていて、大げさに言えば、1週間ごとにバランスが変わります。そのホルモンバランスの変化に対応しようとして、まず自律神経が動くのです。そこに気象の変化が加わると、もっと自律神経が動かないといけなくなるわけです。本当なら、ホルモンの変動に合わせて動くだけでよかったものが、気象の変化まで加わって自律神経の働きが〝行き過ぎる〟のです。それで、生理的なレベルが病的なレベルになってしまうということですね。更年期の女性は特にホルモンバランスが乱れやすくなりますから、気象病に悩む人はさらに多くなります」
「〝感じやすい〟人は不調が起こりやすい。 それはもう、個性なんです」
症状を出さないためにできることは。
- 気象病とその人の気質は関係ありますか? 例えば、真面目な人はなりやすいとか……。
- 「あると思いますよ。ただ、真面目ということではなく、いろんなことが気になって仕方がない人。精神的なストレスを受けるとすぐ身体に出てしまうような人はなりやすいかもしれませんね。気象の変化もストレスですから」
- 読者から、かなりツライ、というお声も届いています。気象病を治す方法はあるのでしょうか?
- 「それが、ないんですよ。自律神経が敏感なのは、個性ですから。感じやすい、というのはその人の個性なので、根本から治すことはできません。ただ! 症状を出にくくすることはできますよ」
- それは、ぜひお聞きしたい!
- 「漢方医学の考え方では、気象病は【水毒】によるものなんです。 水毒とは、身体の中に水分が過剰になっている状態のこと。ですから、普段から溜め込まないようにしておくことです。運動で汗をかくことも対策のひとつですね。運動も身体にとってはストレス。日頃から運動でストレスに慣れておくことも、気象の変化によるストレスに対応しやすくなると言えます。あとは、睡眠。食養生。漢方医学では、不調を出さないためにそのどちらも必要だと言われています。気象病は自分の個性。必要以上に悩まず、上手くつきあうことが大事ですよ」