魚料理を難しくしているのは、思い込みが原因!?“魚の伝道師”ウエカツさんが教えてくれる魚の特徴や調理の仕組みは、「まさか! そうだったの?」と驚かされることばかり。思い込みをひとつずつ解消していけば、魚料理がきっと、易しくなるはず!
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塩味が薄い、パサパサになる。焼き魚に足りない“ひと手間”。
さんまはやっぱり塩焼きがいい!
秋の魚の代表とも言えるさんま。大量に収獲されることから安価で、あじやいわしと同様に、多くの人に親しまれる大衆魚とされている(ここ数年、漁獲量が減少しているという問題はあるけどね)。さんまをおいしく食べるには、やはり塩焼きが筆頭だろう。「毎回塩焼きだと飽きちゃう」と、アレンジ料理に挑戦したくなる気持ちもわかるけど、さんまは味が強い魚なので、シンプルに仕上げることをおすすめしたい。落語『目黒のさんま』でも、それを感じるね。目黒に出かけた殿様が、“下魚”とされていたさんまの焼き立てを食べて、そのおいしさのとりこになってしまう。その後もさんまを食べたがる殿様に、家臣が気を利かせて、油をすっかり抜いたさんま料理を差し出すんだが、まったく気に入らない。海のない目黒のさんまが最高だと言う殿様の、世間知らずなさまにおかしさがある噺なんだけど、シンプルに焼いただけのさんまがいかに旨いかも伝わってくる。
さんまの塩焼きの作り方は実に簡単。塩をして焼くだけ。魚料理の悩みのひとつである“におい”も、焼くことで生まれる香ばしさによってマスクされる。さんまの塩焼きは失敗の少ない料理のひとつだけど、家庭で作られるもののほとんどは、中まできちんと塩が入っていないようだ。最初は旨い! と思っても、食べ進めていくうちに醤油をかけたくならない? それは、塩がちゃんと入っていない証拠なんだよ。
おなじみの焼き魚二種
さんまの塩焼きと、ぶりの照り焼き。ひと手間で失敗なし!
家庭の味ともいえる、さんまの塩焼きと、ぶりの照り焼き。塩をして焼くだけ、焼いて調味料を絡めるだけ、と簡単なこともあって、食卓に上る機会の多い料理だ。どちらも大きく失敗することはない料理だけど、それぞれ、塩味が足りない、パサパサになる、と感じていないだろうか? それを解消するために、加えたい“ひと手間”があるのだ。
二段塩で、中までしっかり塩を入れる。
この問題を解決するには、“二段塩”だ。2回にわけてさんまに塩を当てるわけ。まず、さんまを洗って水分を拭き取ったら、濡らした手に塩を広げて、全体にまぶしていく。これが1回目の塩。こうやって薄く塩を当てることで、身の中に入りやすくなる。10分ほど置いておけばOK。これは、身のタンパク質を変化させて、弾力を出すという効果もある。
2回目の塩は、指ではじくように軽く全体に塩を当てる。二度塩をすることで、口に入れたときの力強い味わいとさんまの肉本来の味が際立ってくる(二段塩の方法と焼き方は下を参照)。
魚を焼くときに、切れ目を入れることがあるよね。なぜそうするか知っている? 目的は3つある。①焼くときに余分な油を落とす ②皮が破れるのを防ぐ ③火の通りを早くする という3つ。丸々と肥えて、脂をたっぷりのせたさんまをさっぱり食べたいなら、切れ目を入れて少し油を抜いてもいいだろう。ただ、この油こそが、DHA、EPAを多く含んでいるわけだから、落としてしまうともったいない。それに二段塩をすると皮は破れにくくなる。切れ目は入れなくてもいいだろう。
添えた大根おろしに醤油をかける習慣も変えてみよう。二段塩をしたさんまは、中まで塩が入っているから醤油は不要だ。代わりにレモンやすだちをぎゅっと搾る。さんまに直接搾らないことで、パリッとしたさんまの食感が損なわれないし、油が中和されてさわやかな味わいも楽しめる。
二段塩は、さんまに限らず、ほかの魚、切り身などにも使える。焼くという調理法は、生と同様、魚の個性や真価を味わえるもの。さんまのアレンジ料理に挑戦する前に、まずは二段塩で焼いたさんまを味わってほしい。
秋においしい|さんまの塩焼き
途中で醤油が欲しくなるのは、中まで塩が入っていない証拠。二段塩でしっかり塩を入れて、醤油に頼らない塩焼きに!
1| 洗う+拭く
さんまの全体を洗い、特に血が溜まっているエラの部分をしっかり洗う。これだけで、においがかなり抑えられる。その後、拭いて水分を取る
2| 一度目の塩をする
濡らした手に塩を広げ、さんま全体になじませる。10分程度おく
3| 頭と尾に塩をつける
頭と尾に塩をたっぷりつける。見た目の美しさに加えて、焦げにくくする効果もある
4| 二度目の塩をする
指先に塩をつける。さんまを少し離して、指先で塩をはじくようにしながら、全体に塩を当てる
5| グリルで焼く
グリルや魚によっても時間は異なるが、中火にして焼き加減を確認しながら仕上げよう。グリルの余熱は不要。予熱すると魚が網にくっつきやすくなる
片面焼きグリルの焼き方
皿にのせるとき上になるほうから焼く。焼き色がほんの少しつく程度に焼く
ひっくり返して、こんがり焼き色がつくまで焼く
もう一度ひっくり返して焼き上げる。焼き方の配分は、表1割、裏7割、表を2割と覚えておこう
両面焼きグリルのポイント
こんがり焼き上がる少し前に、さんまをゆりかごのように左右に揺らしてやると、網にくっつくのを防げる
ぶりの照り焼きは〝茹でる〟を加える。
ぶりの照り焼きも、よく食卓に上る焼き魚だ。これもあまり大きな失敗はない料理だけど、身が硬くなる、パサパサするといったことはあるだろう。しっかり中まで火を通さないと、と思うあまりに焼き過ぎてしまうのかもしれないね。偏りなく加熱してふっくら仕上げるために、茹でるという工程を加えよう。北海道の一部などに伝わる伝統的な調理法“湯煮”を活用するわけだ。
ぶりの切り身をさっと洗って、水分を拭いたら、フライパンに沸かした湯に酒を入れ、ぶりを茹でる。時間は1分。このとき沸騰させないように注意しよう。沸騰させてしまうと、ぶりの旨味が湯のほうに逃げてしまうからだ。
沸騰させずに茹でることで、魚のタンパク質がゆるやかに凝固してふっくらする。それに、全体にむらなく火が通っているから、あとはフライパンの湯を切って、酒、みりん、醤油を加えて仕上げるだけだ。ひと手間加えるというと、面倒だと感じるかもしれないけど、これによっておいしくなる上に、調理時間を短縮できるんだ。
ひと手間加えた焼き魚。今まで作ってたのとは違う! という喜びを感じてもらえると思うよ。
食卓の常連|ぶりの照り焼き
ちゃんと火を入れようとするあまり、焼き過ぎてしまうことも。最初に茹でれば、パサパサになるのを防ぎ、しっとり仕上がる。
1| 洗う+拭く
流水に3秒当てて、全体をさっと洗う。その後、拭いて水分を取る
2| 1分茹でる
フライパンに湯を沸かし、酒をおちょこ1杯程度入れる(この酒が魚のにおいを分解してくれる)。ぶりを入れ、弱火にして沸騰させないように1分茹でる
3| お湯を捨てる
茹で上がったら、ぶりをフライパンに残したままお湯を切る
4| 調味料を入れる
同じフライパンに油少々を入れ、中火でぶりを焼く。酒、醤油、みりん(醤油・みりん各1に対して酒2の割合で)を入れる
調味料を好みの味に!
あらかじめ、調味料を好みの味に合わせておいてもよい。醤油の塩味がまろやかになるまでみりんを足していき、そこに同量の酒を加えればOK
5| 焼き上げる
焦がさないように注意しながら、煮詰めるようにして焼き上げる
ぶりの照り焼きのアレンジ、ぶりのバター醤油焼き。茹でて、油で焼くところまではぶりの照り焼きと同じ。仕上げにバターと醤油を加えて完成
















