
魚料理を難しくしているのは、思い込みが原因!?“魚の伝道師”ウエカツさんが教えてくれる魚の特徴や調理の仕組みは、「まさか! そうだったの?」と驚かされることばかり。思い込みをひとつずつ解消していけば、魚料理がきっと、易しくなるはず!
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脂がのる=旨い魚、ではない!?脂の少ない魚の食べ方。
同じ鯖でも大違い。胡麻鯖は脂が少ない魚。
魚を買うとき、「よく脂がのってますよ!」とお店の人からすすめられたことがきっとあるだろう。おいしいよ、いい魚だよという意味で使われる売り文句のひとつだよね。切り身などのパッケージにも、よくそう書かれてある。だから、“脂がのっている=旨い魚”だと思われているかもしれないけど、必ずしもそうではないんだ。すべての魚が旬に脂をのせるわけではないし、脂がのっていることが、旨い魚の条件でもない。
夏に旬を迎える魚のひとつに、鯖がある。鯖といっても、胡麻鯖のほうね。日本で食べられている鯖には、真鯖と胡麻鯖の2種類があって、どちらかが増えるとどちらかが減るという関係にあります。秋から冬によく獲れるのは真鯖。焼いた身に箸を入れると、じゅわーっと油が出てくるよね。あれこそまさに、脂がのった魚の代表みたいなもんだ。だけど、夏から秋によく獲れる胡麻鯖は、真鯖と違って脂はとても少ない。同じ鯖の仲間なのに大違い。胡麻鯖はそのまま焼いても、旨い! という感動は得られないだろうね。『太陽笑顔fufufu』の編集メンバーにも、塩焼きにして「胡麻鯖はパサパサしてておいしくない」と言った人がいたよ。でもさ、胡麻鯖そのものがおいしくないわけでは決してないんだ。それは、おいしく食べるための料理法が間違っているんだよ。
自家製塩鯖の作り方
塩のチカラで、旨味凝縮。しっとりした身に!
脂の少ない胡麻鯖をおいしく食べたいなら、塩鯖にするのがいいだろう。塩鯖とは、その字のごとく、塩をしみ込ませた鯖のこと。旨味が凝縮される上、しっとりする。おまけに保存性も高まる。 それはすべて塩のチカラによるものだ。まず身にある水分が外へ出される。切ったきゅうりや大根に塩をすると水が出てくるでしょ、あれと同じ。水分が少なくなると微生物の増殖が防げるから、腐敗への進行が遅くなる。長く保存ができるということね。さらに、水が引き出されると、細胞内の濃度が高くなるから、旨味が強くなるわけです。……水分がなくなるのに、なぜしっとりするの? と思うよね。それは、水が出たあと、身に入った塩の効果で、筋肉を構成するタンパク質が溶けて結合するから。タンパク質が、プリプリでしっとりした状態に変化するんだよ。かまぼこのあの食感も同じ原理。原料であるスケソウダラなどの魚肉に塩を加え、すりつぶすことでタンパク質が変化してプリプリになるわけ。
塩鯖の作り方は、いろいろあるんだけど、塩を振る方法を紹介しよう(下の図を参照)。買ってきてすぐ作りたいとき、保存してあとで使いたいときと、それぞれの方法も紹介しておく。胡麻鯖は(真鯖もだけど)、だいたい二枚におろしたものが売られているから、塩鯖にしたあとの料理は、骨のないほう、あるほうで使い分けるといい。骨のないほうは、野菜炒めの具材にしたり、ひき肉の代わりとして細かく刻んで、パスタのボロネーゼソースにしても旨い。酢に漬ければしめ鯖にもなるよ。もちろん、シンプルに焼いて食べるのもいい。パサパサにならないし、脂は少なくてもその旨味が感じられるはずだ。
骨のあるほうは、塩が均一に入りにくいのが難点なんだが、いいだしがとれるから汁ものに使うのがいい。鯖カレーにしてもいいね。胡麻鯖が安い時期に多めに買って塩鯖を作っておくと、いろんな料理にさっと使えて便利だ。脂がのっていない魚も、ちゃんとそれに向く調理法がある。旨く食べられる方法があるんだよ。
自家製塩鯖の作り方
鯖は二枚におろされたものが売られていることが多い。骨のあるほう、ないほうで、向く料理が違う。上手に使い分けよう。
骨がないほう
野菜炒めや、パスタソースなど魚の身だけを使いたい料理に。もちろん、そのまま焼いて食べるのもいい
骨があるほう
骨があるため均一に塩が入りにくいので、そのまま食べるのには向かない。ただ、いいだしがとれるので、汁もの、カレーなどに使おう
骨があるほうは使いにくい、という人は、最初に骨を取ってしまおう。腹骨に沿って包丁を入れ、そぐように切る。エラの骨が残っている場合もあるので、それも切り落としておく。骨を取ったら、「骨のないほう」の手順で作ろう
時間がないとき(すぐ料理する場合)
すぐに料理に使いたいときは、塩に当てて、30分おけばOK。ひと晩おくのと、さほど変わりなくおいしくいただける。
1【骨がないほうのみ】|流水に当てて洗い、拭く
流水に当てて、3秒でさっと全体を洗い、キッチンペーパーなどで拭く
2|料理しやすいように切る
野菜炒めなどの具にするときは小さめに、汁ものに使うときは大きめに、など料理に合わせて切る。骨のあるほうは骨を下にして包丁を入れる
3【骨があるほうのみ】|しっかり洗う
切った鯖をボウルの中で水洗いする。水を取り替えながら、水が澄んでくるまでしっかり洗う
4|塩を振り、混ぜる
骨のあるほうは水を切って、骨のないほうはそのままボウルに入れる。鯖に塩を振り、全体的に塩がいきわたるように混ぜる。すり込まないように、和えるような感じで軽く混ぜる
5|30分ほどで完成
骨のあるほうは、血などが落ちてくるためザルに上げる。骨のないほうは、ボウルに入れたままで。30分ほどで身に塩が入り、完成
時間があるとき(保存する場合)
塩を当ててひと晩で、旨味の詰まった塩鯖が完成。多めに作って保存すれば、さまざまな料理にすぐ使えて便利。
1【骨がないほう】|流水に当てて洗い、拭く
流水に当てて、3秒でさっと全体を洗う
1【骨があるほう】|骨の部分までしっかり洗う
流水に当てて、全体を洗ったら、歯ブラシを使って骨の部分にある血を洗い流す
2|キッチンペーパーなどで拭く
水分は完全に取らなくていい。ここでは、においのもとになる血や汚れを落とすために拭く
3|キッチンペーパーで包む
水分を少し残した状態で、新しいキッチンペーパーに包む
4|塩を当てる
キッチンペーパーの上から、全体にしっかり塩を当てる。その後、余分な塩をはたき落としておく
5|容器に入れる
容器に並べ入れる。冷蔵庫でひと晩おいたら完成。冷凍する場合は、ひとつずつラップに包んで冷凍庫へ。冷蔵なら5~7日、冷凍なら1か月保存できる
ARRANGE MENU|自家製塩鯖を作って、野菜炒めに!
夏に旬を迎える胡麻鯖は、真鯖に比べて脂が少ない。そのまま焼くとパサパサしてしまうので、塩鯖を手作りしよう。身がしっとりする上、旨味が凝縮。そのまま焼いてもいいし、野菜炒めの具にもなる。好みの野菜を切って、塩鯖と一緒に炒めるだけ。塩鯖が酸化しないように低温でゆっくり炒めるのがポイント。調味料は不要。塩鯖の旨味だけで味が決まる。
真鱈は冬の魚のイメージ。でも本当は、夏が旬。
胡麻鯖のほか、真鱈も夏においしくなる魚。と、言うと意外でしょ。鍋料理に欠かせない魚だし、魚へんに雪と書くから冬が旬だと思われているけど、実は夏が旬なんです。なぜ、冬に出回るかというと、日本には鱈の白子とか卵を食べる文化があるから。通常、魚は産卵に向けて栄養を蓄える時期が旨いとされている。鱈は冬が産卵の時期だから、白子や卵は旨いんだけど、身は痩せてるんだよね。夏の真鱈は、産卵に向け栄養を蓄えていく時期に当たるから、身が厚くなって旨味が充実するんだ。でも脂はのってないよ。真鱈はもともと身に脂がのらない魚。脂は肝臓に蓄えられるんだ。
漁師たちは「真鱈はやっぱり夏だな」って言うよ。旨い魚の条件が脂のりでないことをよくわかってるんだよね。鍋料理だけではなく、夏の真鱈もぜひ味わってほしい。フライは僕のおすすめの食べ方。ゴロンと大きめに切って揚げると食感もいいし、旨味も堪能できるよ。 “魚の旨さは、脂ののり”。そんな思い込みを外して、季節の旨い魚に出合ってほしいね。
真鱈のフライは、衣液に卵を入れないことがサクサクに仕上げるコツ。小麦粉を水で溶いて、ホットケーキの生地くらいの濃度にすればOK。
















