健康のために魚を食べたい! そうは思っていても、魚を料理するのはなかなか大変。おいしく作れないし、子どもも喜んでくれないし。それならお肉のほうが簡単だ、って思ってしまうのです。私たち、魚が嫌いじゃないんです。簡単に作れるようになったら、きっと食べる機会は増えるはず。何かいい方法はありませんか、ウエカツさん。テレビ番組などで、魚の魅力を伝える“魚の伝道師”ウエカツさんこと、上田勝彦さんに聞きました。
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魚は、旨味の塊。旨くならないわけがない!
原因は、旨い料理に出合っていないだけ!?
子どものころから魚が好き。学生時代に漁師を経験した後、水産庁職員になったウエカツさん。現在は、『ウエカツ水産』の代表として、料理教室の講師から、活け締めの指導まで、さまざまな形で魚食の普及に努めていらっしゃいます。まさに“魚の伝道師”! そんなウエカツさんに、簡単かつ、おいしく魚を料理する方法を教えてほしくて。私を含め、fufufu編集スタッフにはおかずが魚だと家族が喜んでくれない、という悩みがあって……。
「ホントは魚って、おいしくならないわけがないんだよね、だって旨味の塊だもの。絶対旨いはずなんだよ。でも、確かに魚で困ってる人は多い。家族のために料理をする人だけじゃなくて、仕事として料理をする人も困ってる。学校や病院などで給食を作る栄養士さんたちに聞くと、子どもが魚を食べてくれないって言うんだよ」
そうですよね~、魚が苦手な子どもは多いと思います。親としては、子どもにこそ食べてもらいたいのですが、なかなか……。
「揚げたり、カレー風味にすると喜んで食べるんだって。そりゃそうだよね、揚げると大抵のものは旨くなるし、カレーの風味は素材そのものの味を隠しちゃうからね。でもそれは、食べられるということであって、魚を好きになるわけじゃない」
子どもの魚嫌いは、どうすれば克服できるんですか?
「あのね、子どもは魚が嫌いじゃないんだよ。ただ、旨い魚料理と出合ったことがないだけ。魚のせいじゃなくて、魚を嫌いになるような料理を食べさせてるのが原因だと思うよ」
うっ……、そう言われると、おいしい魚料理を作れてる自信はないです(汗)。作った私自身も、イマイチだなぁと思いながら、健康のために、と食べてることが多いです……。
「誰もがおいしく食べられる、最強の魚料理があるんだよ。しかも、失敗なく実に簡単にできる」
思い込みが、ハードルを上げているだけなんです
醤油やポン酢、ウスターソースでも!
最強の魚料理!?さっそく教えてください~。
「それは、〝湯煮〟です。お湯で魚を茹でるだけ」(手順は下の図を参照)
魚の湯煮の手順
1| 魚は下処理が大切。においを落とすため、魚を流水に3秒あてて洗う。まだ臭みがある場合は、塩をまぶし、さらに流水で3秒洗う。水分を十分に拭き取り、魚に薄くまんべんなく塩を振っておく。
2| 鍋かフライパンに湯を沸かし、酒(大さじ3)を入れる。
3| 魚を入れ、沸騰させないよう注意しながら、切り身なら1分強、骨付きなら3~5分茹でる(火加減は、鍋底から小さな泡が出るくらい)。
4| 味付けは、醤油のほか、ネギ+ポン酢、バターやオリーブ油&醤油、ウスターソースなど、好みのものでOK。残り湯で好みの野菜を茹でて、つけ合わせれば完璧。
えっ!?それだけでおいしくなるんですか……。
「旨味が湯に流れ出ると思ってる? 湯煮はね、沸騰させないから旨味が逃げることはない。例えばかつお節でだしをとるときは、ぐらぐら沸騰させるでしょ? 湯が100度に近くなると、魚の細胞内にある水分も沸騰して、旨味が湯のほうへ移るんだよ。湯煮は、旨味はそのまま、魚の臭みも取れて、ふっくら仕上がる。味付けは醤油でもいいし、ポン酢でもいい。ウスターソースでもいいよ」
ウスターソース? 魚に合うなんて信じられない!
「魚には塩か醤油が合うと思ってるからだよ。それは思い込み。だってフレンチの魚料理は、もっと複雑なソースを使ってるよ?」
そ、そうですね……。
「僕の料理教室に参加しているお母さんたちからは、『湯煮で、子どもが魚を食べるようになった』という声をよく聞く。揚げるのもカレー風味もいいけどさ、喜んで食べ続けるのって魚の旨さがわかる料理なんだよ。子どもは『健康のために』なんて考えずに、味覚や身体の欲求に素直に食べるから。おいしいものは、ちゃんとわかってるんだよ」
今晩、湯煮やってみます!
「フライパンでもできるから。魚焼きグリルを洗わなくてもいいって、魅力でしょ?」
それは嬉しい!! 後片づけが楽になるのは大きな魅力です!!
神奈川県藤沢市で行われている『湘南料理塾』で、講師を務めるウエカツさん。魚の仕組みから、おいしく食べるための方法を伝えています。
1| ぶりの若魚であるワラサをペッパーステーキに。塩を振り、水分が出てきたところで胡椒を振るのがコツ。そうすると、身から胡椒が落ちません。
2| ペッパーステーキが完成! 新しい味わいに出合いました。
魚料理は仕組みで考える。ブロック遊びと同じ。
「魚で困ってる人には、魚料理はこうじゃなきゃという思い込みがあると感じるね。本当はもっといろんな楽しみ方があるのに、思い込みがあるから選択肢が狭くなってる。例えばさ、野菜炒めにはみんな肉を使うでしょ? 魚を使ったっていいじゃん」
魚は、使ったことないですね。
「でも、ツナ缶だったら使うでしょ。あれはまぐろだよ?」
そうだった!!使ってます(汗)。
「そういう思い込みがあるから、魚料理が広がらないし、ハードルが高いと感じちゃうんだよね。まずはそれをなくすことだ。肉は、牛や豚や鶏だけじゃない。魚だって、食べてるのは肉の部分。どんな料理にでも合う素材なんだよ。そもそも料理はさ、ブロック遊びと同じだよ。ブロックは色や形、大きさを組み合わせて作りたいものを完成させるでしょ。魚料理も、魚と調味料と調理法を組み合わせてるわけ。それぞれの性質と最適な組み合わせがわかってくれば、レシピに頼らなくても、自分の力で作れるようになるよ」
取材後、さっそくめかじきを湯煮にしてみた筆者。ポン酢でいただいたところ、あまりのおいしさにビックリ!何より息子が夢中で食べてくれたのが嬉しくて。ウエカツさんには感謝しかありません!この喜びを読者の皆さんにも感じてもらいたい、ということで、次回より、魚料理が易しくなる、ウエカツさんの連載がスタートします。 お楽しみに。















