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なるほど!食の知識

たんぱく質不足の日本人が増加中!?1日の必要量と正しい摂り方

掲載号 vol.58

あなたの常識それ、本当?プラス

“筋肉の材料”としてよく知られているたんぱく質ですが、それだけではなく、脳、心臓、肺、胃、目、皮膚、髪、爪など、身体のあらゆる器官を作る材料にもなっています。さらに、身体の機能を調整するホルモンや、代謝、免疫の要である抗体にも使われる、大切な栄養素です。身体の中でさまざまな役割を果たしているたんぱく質。実は現代人は不足が問題になっています。美と健康を維持するために、どれくらい、どのように摂ればいいのでしょうか。

記事内容

読了時間:分

疑問1
三食摂っているので、
たんぱく質の不足はない。
▲
食べる量が少ない、肉を避けるなど
食べ方によっては不足する場合も。

食事内容によっては、たんぱく質を十分摂れていない可能性があります。太ることを気にして食べる量を減らしたり、肉を控えたりする人が増えたことで、近年、日本人のたんぱく質摂取量は減少を続けています。今や戦後間もない1950年代と同じレベルに。カロリーは摂れているのに、たんぱく質は不足という状態で、新型栄養失調とも言われ問題になっています。身体を作る大切な栄養素ですから、過度なダイエットや偏食を避け、不足しない食事を摂るようにしましょう。1日の摂取目安は、体重1㎏あたり1.0g。60㎏の人なら60gが目安になります。

日本人の1日のタンパク質摂取量は戦後まもなくと同レベル
たんぱく質
1日の必要摂取量の目安は体重1kgあたり1.0g

体重60kgの人なら1日60g

(ただし、腎臓の働きが低下している場合は摂取に注意が必要です)
1946〜90年は国立健康・栄養研究所「国民栄養の現状」、1995〜2002年は厚生省/厚生労働省「国民栄養調査」、2003年以降は厚生労働省「国民健康・栄養調査」を基に作成

疑問2
朝食は簡単に済ませるので、
夕食でたんぱく質を摂るようにしている。
×
たんぱく質は、“食べだめ”ができません。
三食にわけて摂りましょう。

たんぱく質は、身体に吸収される量に限りがあるため、食べだめができません。一度に多く摂っても、使われなかった分は排出されてしまいますから、朝・昼・夜の三食でまんべんなく摂るのが理想です。例えば60gが1日の摂取目安量であれば、20gずつ摂るイメージです。朝は簡単になりがちですが、実は朝食こそたんぱく質をしっかり摂るべき。寝ている間はたんぱく質が供給されませんから、朝に摂らないと、身体を作る材料として必要な分をとり出すために筋肉が分解されてしまうことがあるのです。朝食はトーストとコーヒーだけという人は、卵料理や、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品をプラスしましょう。

タンパク質含有量・タンパク質の多い食品

疑問3
牛肉を100g食べれば、
100gのたんぱく質が摂れる。
×
食品の重量すべてが
たんぱく質ではありません。

「お肉をたくさん食べたから、たんぱく質は十分摂れた」。このような誤解もまた、たんぱく質が不足する原因のひとつになっています。食品の重量分そのままたんぱく質が摂れるわけではありません。例えば、牛肉のリブロース100g(脂身付き・焼き/日本食品標準成分表〈八訂〉より)なら、摂れるたんぱく質は14.5g。1日にそれだけを食べておけば十分というわけではありませんので、注意しましょう。


疑問4
骨のためにも、
たんぱく質を摂っている。
◯
カルシウム同様、
たんぱく質(コラーゲン)も大事です。

骨にはカルシウムが必要であることはよく知られていますが、実はたんぱく質も必要。骨の半分はカルシウム、残りの半分が美容成分としても知られるたんぱく質の一種、コラーゲンなのです。骨は硬さとしなやかさがあって強度を保っています。カルシウムが硬さを、コラーゲンがしなやかさを作り出しています。骨の健康維持にも、欠かせないたんぱく質。不足させないようにしましょう。


疑問5
肌のために
コラーゲンドリンクを飲んでいる。
◯
よいことです。ただ、たんぱく質の
摂取量が不十分だと、肌に届かないことも。

肌のハリや弾力を保っているのがコラーゲン。ドリンクで摂るのはよいことです。ただ、食事などから摂取するたんぱく質が不十分だと、せっかく摂ったコラーゲンドリンクが肌にまで届かないことがあります。たんぱく質は、身体を調整するホルモンや代謝、免疫の要である抗体にも使われています。そういった機能に優先的に使われるため、たんぱく質を十分に摂れていない場合は、ホルモンや代謝、抗体などに使われてしまうことがあるのです。コラーゲンドリンクだけでなく、食事からもたんぱく質を摂るようにしましょう。

疑問6
植物性と動物性なら、
動物性たんぱく質のほうがいい。
×
それぞれ違う特徴があり、
どちらも大切です。

肉や魚介、卵や乳製品など動物性の食品に含まれる動物性たんぱく質と、大豆製品などに含まれる植物性たんぱく質。筋肉合成という面では、動物性のほうがその材料になる必須アミノ酸の含有量が多く、よいとされていますが、アミノ酸の組成が違うだけで動物性も植物性も大きな差はありません。それぞれに違う特徴があり、植物性は、動物性に比べて脂肪燃焼効果が高いと言われています。どちらかに偏ると、その食品が含むほかの栄養素を摂りにくくなるので、どちらもバランスよく摂るようにしましょう。


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この先生に聞きました!

上西 一弘 先生

上西 一弘 先生

うえにし かずひろ

女子栄養大学
栄養学部 教授

徳島大学 大学院 栄養学研究科 修士課程修了。食品関連企業で入院患者向けの流動食の開発に携わったのち、1991年より女子栄養大学に勤務。2006年より現職。著書に『栄養素の通になる』(女子栄養大学出版部)などがある

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