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知っトク!?健康スキル

リンの摂り過ぎが老化を速める!?寿命にも関係する腎臓の話(5/5)

掲載号 vol.56

さまざまな食品に含まれるリン。摂り過ぎを抑えるためにできること

控え過ぎるとタンパク質不足の心配も

腎臓を守るには、シンプルに“リンを摂り過ぎない”こと。ではありますが……、リンは、私たちが普段食べているさまざまな食品に含まれています。

「肉、魚介、卵、乳製品、豆類、野菜、穀類など毎日の食事に欠かせない食品にリンは含まれています。さらに、タンパク質を多く含むものにリンも多く含まれる傾向があります。これらを食べないわけにはいきません。控え過ぎると、タンパク質不足にもつながってしまいます。だからこそ、何をどう食べるか、工夫が必要です」

さまざまな食品に含まれているため、リンを減らすには、意識することが必要です。

タンパク質を多く含む肉類の中でも、特に赤身の肉、チーズやヨーグルトなどの乳製品、牛乳、しらすなど骨ごと食べる小魚、たらこなどの魚卵、麺ではラーメン。これらは特にリンを多く含みます。もともと大量に摂るものではないと思いますが、もし毎日多く摂っているようであれば、気をつけるようにしましょう」

タンパク質が摂れなくなるのではないか、と心配なときは大豆製品を摂るとよいそうです。

「大豆もリンを多く含みますが、実は大豆が含むリンは【フィチン酸】といって、人間の腸からは吸収されないものです。納豆や豆乳、豆腐などはリンを気にせず、タンパク質を摂取できます。一般的に、植物性食品に含まれるリンは、動物性食品が含むそれに比べ、吸収されにくいとされています

年齢を重ねたら無機リンに注意を

私たちが極力控えるべきは、無機リンと呼ばれるもの。

「ここまでにお話しした食品が含むのは有機リンというもの。大豆を除いて、身体に吸収されるのは20~60%。対して、無機リンは90%以上が吸収されます。無機リンは食品添加物として使用されていて、ソーセージなどの加工肉、干物やかまぼこなどの練り物、スナック菓子、ファストフードをはじめさまざまな加工食品に含まれています。一切摂ってはダメというわけではありませんが、年齢とともに腎臓の機能が低下していきますから、食べる回数や量をできるだけ減らすなど、意識して控えるといいでしょう。食べる場合は、パッケージにある食品表示を見て、リンが含まれているか確認する、さらに調理法を工夫するだけでも、摂取量を減らすことができます

有機リンと無機リン
食品表示を
見てみましょう

リン添加物には、リン酸塩、pH調整剤、かんすいなどがあります。ベーコンなどの加工肉は、リン酸塩、pH調整剤などが使われていますが、その表示がないものがあります。それは、使われている量が比較的少ないことが理由。加工肉は、リン酸塩、pH調整剤と書かれていないものを選ぶとリンの摂取が減らせると言えます。

下茹でなど、
調理に工夫を

ソーセージなどの加工肉は、焼く、炒める前に熱湯で10秒ほど下茹でするとリンを減らすことができます。ちくわなどの練り物も、使う前にさっと湯通しを。インスタント麺は、麺を茹でたお湯は捨て、別で作っておいたスープに麺を合わせるのがおすすめ。カップ麺は、粉末スープ別添えのものを選び、麺を茹でたら湯切りをして、改めて熱湯と粉末スープを入れるとよいでしょう。

食事のほかにも、とり入れてほしいことがあります。それは、骨粗しょう症の予防。骨粗しょう症は、骨量が減り骨の中がスカスカになってしまう病気。運動不足が原因のひとつとされています。

「骨がスカスカになるのは、骨の中からリン酸カルシウムが溶け出て、血中にリンが流入しているということ。ですから、骨量を減らさないよう、骨を強くするための運動をとり入れましょう。毎日20分以上のウォーキングなどの有酸素運動や、筋トレなどの無酸素運動が理想的ですが、座っている時間を減らすだけでも効果があると言われています。座位が1時間続いたら、立ち上がって2~3分歩くようにしてみましょう」

先生のお話で、腎臓ケアは難しいことではないかも、と感じた筆者。スナック菓子は買い置きをしない、ファストフードは、例えば月イチの楽しみにするなどしてみよう、と考えています。慢性腎臓病が深刻になると、食べたいものも、今の生活も制限されてしまいます。あなたも今日から、腎臓ケアにとり組んでみてください。

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この先生に聞きました!

黒尾 誠 先生

黒尾 誠 先生

くろお まこと

自治医科大学
分子病態治療研究センター
抗加齢医学研究部 教授

東京大学 医学部医学科卒業。国立精神・神経センターでマウスの遺伝子操作を練習中に偶然、早老症マウスを発見し、老化抑制遺伝子【クロトー】を同定。1998年、テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンター病理学の助教授として渡米。2006年に准教授、12年に教授に。13年に帰国し、現職。著書に『腎臓が寿命を決める』(幻冬舎新書)などがある

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