【かんじんかなめ】とは、非常に大切なことや、ものを示す言葉。漢字では、肝心要とも、肝腎要とも書きます。肝臓も心臓も、そして腎臓も、人の身体にとって非常に重要。それが、この言葉の由来です。腎臓は、尿を作る臓器としてご存知かもしれませんが、そのほかにも実にさまざまな働きがあり、近年では、老化に関係していることもわかってきました。健康に生きるために、腎臓を守ることは、まさに肝腎かなめなのです。今日からケアをしたくなる、腎臓の話をお届けします。
老化にも関係!肝腎かなめの腎臓の話
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老化にも関係!肝腎かなめの腎臓の話
老化研究の中でも、腎臓との関係は新発見
今号の編集会議で、メンバーから「腎臓を特集したい」との話が持ち上がったとき、筆者は「腎臓って何するところだったっけ……」と思ってしまいました。「簡単に言えば、おしっこを作るところです」と聞き、「あぁ、そういえばそういう臓器があったな」という感じ。不勉強で大変お恥ずかしいのですが、腎臓に関する筆者の知識はそのレベルでした。実は、14年前に本誌を創刊してから、腎臓をとり上げたことは一度もありません。なぜ今、腎臓を?と疑問に思いましたが、聞けば「老化と腎臓が関係しているとわかったから」とのこと。老化に関する研究がさまざまに進む中、この発見は、深刻な病気の予防・改善につながる大きな一歩になっているというのです。
今回お話をうかがったのは、自治医科大学の黒尾 誠先生。腎臓と老化の関係を解明するきっかけを発見し、現在も老化の仕組みを研究し続けている先生です。
「今から約30年前、実験用のマウスの中に、ほかと違うマウスがいることに気づきました。身体が小さく、毛並みが悪い。さらに動脈硬化や骨粗しょう症などを発症し、次々と死んでしまうのです。一般的なマウスの寿命が約3年なのに対し、そのマウスはたった2か月半しかない。そのマウスは老化の進行が著しく早いのです。調べていくと、ある遺伝子が欠損していることがわかりました。私はこの遺伝子を【クロトー遺伝子】と名づけてさらに研究を進め、クロトー遺伝子には老化を抑制する役目があることを突き止めたのです」
クロトーとは、ギリシャ神話に登場する女神の名前。生命の糸を紡ぐ女神ということから、先生は自らが発見した遺伝子にその名前をつけたのだそうです。
「老化が加速したマウスはみな、体内に【リン】という物質を溜め込んでいました。そのことから、クロトー遺伝子は、腎臓を介して、体内の余分なリンを尿の中に排泄するために必要な遺伝子だとわかったのです。つまり、マウスが老化した原因は、尿の中にリンを捨てることができず、体内にどっさり溜め込んでいたためだとわかったわけです」
腎臓の老化は、誰にでも起こり得る!
先生のお話に、筆者は「それはすごい発見!」と感動。ただ、どこか他人事のように感じていました。それが自分に関係しているとは、まったく思わなかったのです。
「リンが血中に増え過ぎてしまうことは、もちろんヒトでも起こります。腎臓は尿を作る役目だけでなく、身体に必要なものと不要なものを仕分け、不要なものをどれくらいの量、尿の中に捨てるかを判断する役目もあります。これは非常に重要な働き。生命維持のために、常に体内の環境を一定に保とうとしているわけです。私たちは、毎日同じものを同じ量食べるわけではありませんよね。内容は変わりますし、摂る栄養も水分も、塩分の量も違ってきます。それを腎臓が仕分けし、必要なものを残し、不要なものを捨てて、体内の環境を一定に保っているのです。ただ、腎臓のその機能は加齢とともにやはり衰えます。そこに、不要なものが溜まっていくというダメージが加わると、さらに機能が低下し、深刻な病気につながってしまうのです」
腎臓がどんな臓器かさえ知識がなかった筆者は、もちろんケアをしようと考えたこともありませんでした。が、ようやく「他人事ではないんだ!」と痛感。腎臓を守ることは、健康維持に“肝腎かなめ”だったのです。