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知っトク!?健康スキル

まだ、大丈夫。と思ってない?聞こえにまつわる5つの誤解。(5/5)

掲載号 vol.41

誤解5:補聴器は、聞こえないから使う。
⇒『早く使うほど、聞き取る力の維持に』

早めに使うのは、早く使い慣れるため。

まだ聞こえに問題がないなら、今から予防を。すでに聞こえが悪くなっているなら、補聴器を利用するという選択肢があります。ただ、補聴器にも多くの誤解があるよう。まず、「重度の難聴の人が使うもの」「かなり聞こえが悪くなってから使うもの」と思われていることが多いようですが、実は、早めの使用が望ましいのだそうです。

「加齢性難聴は治せるものではありませんから、補聴器などを使って聴力を補い、維持していくことになります。補聴器を使うタイミングは、中等度難聴(40dB)とされていますが、軽度難聴に当たる、35dB を超えれば使用したほうがいいでしょう(難聴の程度は下の表を参照)」

難聴の程度

早めに使い始めたほうがいい理由は、それだけ早く使い慣れることができるというメリットがあるからです。私たちの脳は通常、情報が多い環境では、必要な情報だけを選択し、それに集中する機能が働きます。例えば、賑やかな居酒屋などで食事をしているとき、家族や友人と会話をするために、周りの音を聞こえないようにしているのです。ただ、補聴器をつけたばかりのときは、脳でこの情報の選択機能が上手く働かず、ほかのテーブルの会話、音楽、食器の音など、全部が一緒に聞こえるようになります。

「長い時間をかけて聞こえが悪くなってきたわけですから、急に入ってきた多くの音に、脳が対応できないのです。“使い慣れる”というのは、必要な音だけを聞き、不要な音をカットできるようになる、ということ。補聴器を使い始めたときは、まず脳を鍛える。改めて脳をプログラムする必要があります。聞きたい音を聞けるようになるまで、早い人で1か月。だいたい3か月かかります。補聴器は、新しく若返った耳で、もう一度訓練するような気持ちで使い始めるものなのです」

補聴器を使うことは、ただ聞こえをよくするだけでなく、大切な脳の機能を維持することにもつながります。

補聴器の購入は、医師の診断が必要。

補聴器購入の際に気をつけることは、“自分で選んで買えるものではない”と知っておくこと。

「通販番組などで紹介されているのは集音機というもので、補聴器とは別のものです。補聴器はただ音を大きくするのではなく、周りの雑音をカットしたり、ある方向からの音を聞き取りやすくしたり、使う人の聞こえの程度に合わせて細かな調整ができます。例えば老眼鏡は、度が進めば新しく作り直す必要がありますが、補聴器は作り直すことなく、使う人の聞こえの状態に合わせていくことができる。いわば小さなコンピュータなのです。ですから、自分で選んで買えるものではないのです。購入する前に耳鼻咽喉科を受診し、日本耳鼻咽喉科学会が認定する補聴器相談医の診断を受ける必要があります」

日本耳鼻咽喉科学会は、専門知識と技能を持つ、認定補聴器技能者がいる販売店での購入を勧めています。また、2018年から、耳鼻咽喉科で補聴器相談医が発行する【補聴器適合に関する診療情報提供書】を活用することで、医療費控除を受けられるようにもなりました。

補聴器は“できれば使わないほうがいいもの”でも“使いにくいもの”でもありません。生活を豊かにするための、頼れる味方だと言えます。

聞こえにくい人に周りの人ができること。

  • 顔を見て話す。
    目から入る情報も、コミュニケーションには重要。表情だけでも、何を伝えたいのか理解できることもあります。相手に、自分の表情や口の動きが見えるように、正面を向いて会話をするようにしましょう。
  • 大きな声で話さない。
    聞こえが悪いから、と耳元で大きな声で話しかけると、音が響いて不快になったり、逆に聞き取りにくいこともあります。適度な大きさの声で話しかけましょう。
  • 会話は静かな環境で。
    聞こえが悪い人と会話をするときは、テレビやラジオは消しましょう。聞こえに問題のない人にとっては何でもない音でも、聞き取りの邪魔になることもあります。
  • ゆっくり、明瞭に話す。
    聞こえに問題のない人でも、早口で話す人や、ぼそぼそと話す人との会話は難しいもの。補聴器をつけはじめたばかりの人には特に、ゆっくり、はっきり、区切って話すことを心がけましょう。
  • 使う言葉を変えてみる。
    相手が理解していない場合は、同じ言葉で何度も説明するより使う言葉を変えてみましょう。例えば「明日は7時(しちじ)からです」を「明日は(ななじ)からです」など。文字を使うのもいいでしょう。
  • テレビの音量問題には、専用スピーカーを。
    聞こえが悪い人が家にいる場合は、テレビの音量問題に困惑する場面が多くあるはず。そんなときは、聞こえにくい人にだけテレビの音を届けられる専用のスピーカーの活用を。卓上に置ける小型の“手元スピーカー”と呼ばれるもので、さまざまなタイプのものがあります。

この先生に聞きました!

山岨達也 先生

山岨達也 先生

やまそば たつや

東京大学 大学院医学系研究科
副研究科長
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教授

東京大学医学部医学科卒業。竹田綜合病院などでの研修後、亀田総合病院耳鼻科部長を経て、1993年、東京大学耳鼻咽喉科講師。96~98年、ミシガン大学クレスギ聴覚研究所に留学。2007年より、東京大学耳鼻咽喉科教授、17年より、医学部副学部長 医学教育国際研究センター長、19年より東京大学総長特任補佐を務める

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