誤解2:難聴は、高齢者がなる。
⇒『若いときから、加齢性難聴が始まる可能性も』
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誤解2:難聴は、高齢者がなる。
⇒『若いときから、加齢性難聴が始まる可能性も』
WHOが警鐘を鳴らす若い世代の難聴。
実は近年、若い世代が“耳に危険な音”にさらされていることが問題となっています。WHOが、世界の12~35歳のうち、半数にあたる11億人に、難聴のリスクがあると指摘しているのです。
「スマートフォンや携帯音楽プレーヤーでの大音量での音楽聴取、ライブイベントやクラブ、バーなど、大きな音にさらされる場への参加に注意すべきだと、WHOが世界に向けて警鐘を鳴らしているわけです」
若い世代の難聴は、世界的な問題。2017年にドイツで14~15歳の生徒2143人を対象に行った調査では、85%がスマートフォンなどで音楽を聴く習慣があり、全体の2.3%に難聴の所見が見られたとのこと。
「日本では以前から“イヤホン難聴”の問題がありました。電車やバスの中は、意外に周囲の音が大きい。スマートフォンなどで音楽を聴く場合、それに邪魔されないよう、音量を上げてしまうようです。そうして“大音量で聴く”ことを繰り返すうちに難聴が出てしまうのです」
今春からの外出自粛によって、オンライン授業や動画視聴などの機会が増え、ヘッドホン、イヤホンを使用する時間が増加。それも耳への負担になる可能性があります。イヤホン、ヘッドホンの音量や使用時間には注意が必要。
気づかないうちに高まる難聴のリスク。
なぜ、大きな音によって難聴になるのでしょうか? それはまず“有毛細胞の減少”が大きな原因となっています。
「耳から入った音は、空気の振動として蝸牛に届き、有毛細胞がそれを電気信号に変換。脳に伝わることで音として認識しています(下の図を参照)。有毛細胞は、音を感じるセンサーの役割を担うもの。とても繊細ですから、大きな振動(音)はダメージとなります。ダメージを受けるほどその数が減少し、次第に聞こえが悪くなります。問題なのは、自覚がないまま進行していくということ。少しずつ聞こえが悪くなるため、変化に気づきにくいのです」
こうして起こる難聴を、騒音性難聴と言います。徐々に悪化し、5〜15年で発症すると考えられているので、例えば15歳から日常的に大きな音にさらされていると、20〜30歳で発症する可能性があります。
「有毛細胞は、蝸牛の入口から奥まで並んで存在し、その位置によって分析する音の周波数が違います。入口周辺は高い周波数を、奥に向かうにつれて低い周波数の分析を担当しています。まず入口近くの有毛細胞からダメージを受けるため、高い周波数、つまり高音域の音から聞こえにくくなります。この、“高音域だけが聞こえにくい”状態は、難聴に気づきにくい理由のひとつです」
さらに恐ろしいのは、壊れた有毛細胞は、もとには戻らないということ。蓄積したダメージが、通常は70代以降に発症しやすい加齢性難聴を早めてしまうのです。
「有毛細胞は、再生することはありません。若い時期から音によるダメージが蓄積している場合、加齢・病気によるダメージが加わってさらに有毛細胞は減少し、30〜40代で加齢性難聴を発生する可能性もあります」
原因が"音ではない”難聴も
突然聞こえが悪くなる【突発性難聴】は、内耳の血流障害や炎症が関係していると言われていますが、原因ははっきりしていません。女性に多い【急性低音障害型感音難聴】は、低い音だけが聞こえにくくなる難聴。耳が詰まる感じや、低い音の耳鳴りなどの症状があります。ストレスや睡眠不足が原因だと言われています。手遅れになる可能性があるので、早めに耳鼻咽喉科の受診を。