大切なのは、まず“自分にとっての幸せ”を知ること。
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大切なのは、まず“自分にとっての幸せ”を知ること。
お金持ちになっても人生は楽しくない。
幸せのカタチは実に多彩ですが、どうやら“自分にとっての幸せ”を誤解している人も多いようです。十分なお金、車や家。そして高いステータス。それらも幸せのひとつです。ただ、それは長続きしない幸せなのだそうです。
「お金、もの、地位などは、“地位財”といって他人と比べることができる財です。地位財による幸福は鮮やかですが、長続きはしません。行動経済学者ダニエル・カーネマンの研究で、感情的幸福は、年収7万5千ドルまでは収入に比例して増大するのに対し、7万5千ドルを超えると比例しなくなるという結果が出ています。これはアメリカ人45万人への調査で、【人生に満足していますか?】への答えは年収と比例しているのに対して、【楽しいですか?】への答えは7万5千ドルを超えると無関係になったというもの。お金持ちになっても、楽しくはなっていかない。一定以上の収入やものによる豊かさで、幸せになれるとは言いにくいのです」
自分にとって何が幸せ?意外と知らないことも。
幸せになるために努力をしているつもりが、目指す方向自体を間違ってしまっている人が多いのだそうです。
「人間は、金銭欲、名誉欲、物欲に目がくらんで、間違った方向に進みやすい生き物です。自分はどうすれば幸せなのかを、思いのほか知らないのです」
自分がどんなことに喜びを感じているのか? 知らなかった自分に気づくことができる方法があります。それはカレンダー〇×法。手帳などを用意して、一日の終わりにその日の評価を〇(幸せ)△(普通)×(不幸せ)とつけて、簡単にその理由を書くというもの。これを毎日続けていきます。
「これはとてもいい気づきになるはずです。私の場合、研究者ですから、新しい発明や、新しい発見ができたときが幸せだとずっと思っていましたが、カレンダーを見ると、新しい人と会ったとき、おもしろい話を聞けたときが幸せだと感じていたのです。自分では【ひとりでいるのが好き】と思っていたのに、人と会うことが好きだったと気づくことができました。実践するにあたって注意すべきは、×ばかりにしないこと。日本人は謙虚過ぎるところがあるので、×をつけがちです。そうすると、自分の幸せを見つけにくいので、なんとかいいことを見つけて〇だけをつけてもいい。【カレンダー〇法】としてもいいですね」
人を幸せにすると自分も幸せに!
お金や、もの、地位などの“地位財”は、長続きしない幸せ。では、長続きする幸せはどんなものなのでしょうか?
「人との比較とは関係なく満足できる“非地位財”です。よい環境、健康のほかに、自由や自主性、愛など心的要因があります。やりがいや感謝は非地位財で、長続きするもの。意外かもしれませんが、人を幸せにすることで、自分も幸せになれます。ためらう人が多いようですが、ボランティアやPTA活動に参加するのもいい方法。社会貢献活動に関わると幸福度が高くなるという結果もあるのです(下のグラフを参照)」
社会貢献活動に参加すると、
幸福度が高くなる。
社会的課題解決のための活動参加意欲と幸福感
参考文献:内閣府 幸福度に関する研究会 「幸福度に関する研究会報告」(2010〜2011年)
社会貢献活動への参加の有無などを質問し、同時に幸福度についても質問した結果をまとめたもの。幸福度は、参加したくないと思っている人が最も低く、実際に参加している人が最も高いことがわかります。