なぜ、糖尿病は増えている?カロリーだけでなく、血糖値も重要。
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なぜ、糖尿病は増えている?カロリーだけでなく、血糖値も重要。
糖を使えず余らせてしまうことは肥満に加えて、糖尿病にもつながります。糖をただ控えるより、血糖値を考えた摂り方を!
糖を控えるだけでは糖尿病を防げない!
糖質が肥満の原因となる“悪者”ではなく、糖をエネルギーとしてうまく使えない生活こそが肥満の原因。糖を余らせてしまうことがよくないのです。
「糖が余ると肥満になるだけでなく、糖尿病にもつながります。糖質の摂取は減少傾向にあるのに、糖尿病は年々増加。今や4人にひとりが糖尿病、もしくはその予備軍であるとされています。このことから考えて、ただ糖質を控えるだけでいいとは言えないのです」
糖が余る原因は運動不足に加えて、インスリンというホルモンとも関係しています。前ページでお伝えした、糖を肝臓や筋肉に貯蔵する仕組みは、このインスリンの働きによるものです。
「血糖値という言葉は、健康診断の検査項目にありますからよく知られていると思います。そもそも血糖値とは、血液中にあるブドウ糖の濃度のことで、糖質を含む食事をすると上昇します。これはごく自然なこと。通常、食事によって血糖値が上がると、すい臓から分泌されたインスリンの働きで全身の臓器に糖がとり込まれ、エネルギーとして利用されたり、蓄えられたりします。こうして、食後に増加した血液中の糖はインスリンによって速やかに処理され、血糖値は一定に保たれるわけです。ただ、このインスリンの分泌が少なくなったり、働きが悪くなると、正常に血糖を処理できなくなってしまいます。そうして糖がいつまでも血液中に余った状態が糖尿病です」
三大栄養素をカロリーで見ると、脂質(1g、9キロカロリー)より、糖質(1g、4キロカロリー)のほうが低カロリー。ただ、それだけを考えた食事では、糖尿病のリスクを下げることはできません。三大栄養素のうち、食後すぐに血糖値を上昇させるのは糖質だけ。血糖値の上がり方にも注意が必要です。
「糖尿病は、肥満の人がなる病気だと思われていますが、日本人を含むアジア人においては、そうとは言えません。痩せている人にも糖尿病が多いのです。これは、もともとアジア人のインスリン分泌能力が低いため。血糖値が急激に上がるような食べ方をすると、インスリンの分泌が間に合わず血液中に糖があふれやすくなるのです。しかも、その食べ方を続けると、すい臓が疲弊して、ますます分泌能力を低下させてしまうことにもなります」
避けるべきは、血糖値の急上昇。
血糖値の急上昇はインスリンの分泌、働きを悪くする原因。できるだけ、血糖値を上げない食べ方を心がけることが大切です。
「速やかにエネルギーになるブドウ糖を含む単糖類は、血糖値を上げやすく、消化・吸収に時間がかかる多糖類は血糖値の上がり方がゆるやかになります。多糖類であるデンプンを含む、米や芋類はカロリーが高く、血糖値を急上昇させるのでは?と思われるかもしれませんが、カロリーと血糖値はあまり関係がありません。スイーツを食べた分、ご飯を減らすという人もいますが、血糖値のことから考えるといいこととは言えません。糖質をただ控えるのではなく、どの糖質をどう摂るかも考えるべきです。消化・吸収のいい砂糖などの単糖類はできるだけ控え、血糖値の上昇がゆるやかな多糖類から摂ることが望ましいです」
糖尿病の有無を知る上で重要な血糖値。毎年健康診断で測っているという人も多いと思いますが、その数値が正常であっても、注意が必要です。最近、食後だけ血糖値が急上昇する人が増えています。これがいわゆる予備軍と言われる人たちです。
「何をどう食べるか、それを考える上で、血糖値を正しく知っておくことはとても大切。健康診断などで調べられる空腹時血糖値、HbA1c(過去1~2か月間の血糖値の平均)と合わせて、〝第3の数値〟とも言われる、食後血糖値も重要であるとわかってきました。この食後血糖値が高い人(下のグラフ参照)が、糖尿病予備軍と言われる人で、年々増加しています。健康診断には含まれていない項目ですので、気づかれにくいのが問題。ただ、今は食後血糖値は、多くの医療機関で調べられますし、家庭で調べられるサービスなどもあります(下北沢病院でも検査することができます)。糖質とのつき合い方を考えるためにも、真の健康を目指すためにも、第3の数値を測定するといいでしょう」
糖尿病が大きな問題!