がん・糖尿病になる・ならないは、遺伝だけで決まらない?!（2/5）

病気を進めているのは、「なりたくない」あなた自身!?

年々増えている、がんや糖尿病。遺伝だけが理由ならこのような増加はないのだそう。遺伝子のスイッチは、どのようにそれらの病気を引き起こすのでしょうか。

年々増加する原因は、自ら入れる悪いスイッチ

日本人の死因の第一位である、がん。ふたりにひとりがかかると言われています。下にあるのは、国立がん研究センターが発表した、がんの罹患率のグラフ。どのがんも増加を続けていることがわかります。

「遺伝性のがんももちろんありますが、がんが遺伝だけの病気であるなら、このように年々増加していくことはありません。なりやすい体質を受け継いだ上に、なりやすい生活を送っている人が増えていることが増加の原因になっていると考えられます」

遺伝子のスイッチには、環境や生活習慣が大きく関係していると森下先生。がんになりたくないと思いながら、自分自身で遺伝子のスイッチを病気になりやすい状態にしてしまっている可能性があるのです。

大腸がんを進める理由のひとつに、腸内環境の悪化が挙げられます。特に女性は便秘になりがちなことから、より腸内環境が悪化しやすくなります。それに深く関係しているのが、食生活。穀物や野菜中心だった食事が、高脂肪な欧米型の食事に変化し、食物繊維の摂取量が不足してしまっているのです。そんな食習慣が長く続くことで、遺伝子のスイッチが大腸がんになりやすい状態に変化してしまうのです。

「正常な細胞をがん化させる遺伝子をがん遺伝子、発がんを抑制する遺伝子を、がん抑制遺伝子と呼んでいます。がんはこれらの遺伝子の働きが変化することによって、引き起こります。自動車に例えると、がん遺伝子がアクセル、がん抑制遺伝子がブレーキに当たり、がん細胞を増やすためのアクセルが全開に、がんを止めるためのブレーキが効かなくなって発がんするのです」

病気は体質の遺伝を理解しておけば、避けられるもの。2型糖尿病は、家系的な体質というよりも、アジア人の体質として持っているものなので、より注意が必要です。アジア人は血糖値を下げる働きがあるホルモン・インスリンの分泌量が少ない体質。脂肪分が多い欧米型の食事を摂ると、インスリンの分泌が間に合わずに高血糖状態が続きます。体質に合わない欧米型の食事を続けることで、遺伝子のスイッチが変化し発症してしまうのです。世界中で爆発的に2型糖尿病患者数が増加する中、3分の1が日本を含むアジアに集中し、急速に広まってていることからも、それがよくわかります。

スイッチが入ると元に戻りにくくなる!

「血糖値が高い状態は、それにつながる食事をやめればすぐに元に戻るはずです。しかし、長期的に悪い食生活を続けることで、病気になりやすくする遺伝子のスイッチが入り、食事を改善しても、元に戻りにくくなるのです」

“がん家系”や“糖尿病家系”という言葉には、すべて遺伝によるものという印象がありますが、実はそうではなかったのです。

「最近がん以上になりたくない病気として挙げられるようになった認知症は、糖尿病が原因のひとつであると考えられています。悪い生活習慣を続けると、さまざまな病気を発症させてしまうことになります」