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なるほど!食の知識

運動時の栄養の摂り方|トレーニング効果を高める食事とタイミング

掲載号 vol.64

すぐにエネルギーに変換される糖質や、筋肉の材料になるたんぱく質。運動時には欠かせない栄養、あなたは摂れていますか?痩せたいから摂らない、筋肉のためにたんぱく質を多めに摂る……。あなたのその常識、実は正しくないことも!運動前、運動中、運動後。それぞれのタイミングで栄養の摂り方を見直すと、あなたの運動がより効果的になるはずです。アスリートの栄養指導も行う、山梨学院大学の加藤千穂先生に運動と栄養の正しい関係についてお聞きしました。

記事内容

読了時間:分

常識1

【運動前】
朝のウォーキングは、
朝食を食べないほうが痩せやすい。

一部正解

エネルギー不足で筋肉が細り、
不健康な痩せになる場合も。

前日の夕食から時間が経っているので、朝は体内の糖が少ない状態。そのままウォーキングをすると、脂肪がエネルギー源に使われ、痩せやすくなります。ただ、日々それを繰り返すと脂肪でまかなえず、今度は筋肉からエネルギーが作られるようになります。筋肉が細り、不健康な痩せにつながる可能性もあります。朝食後のウォーキングのほうが筋肉維持にもなり、食後の血糖値の上昇をゆるやかにするというメリットがあります。また、朝のたんぱく質は、筋肉量を増やす効果があります。たんぱく質が豊富な朝食を摂るのが理想です。


常識2

【運動前】
筋トレの後だけでなく、
前にもプロテインドリンクを飲んでいる。

正解

前後で効果が違うので、飲むほうがいい。
ただ、飲む量は調整を。

筋トレは筋肉に負荷をかけて微細な損傷を与え、その修復過程で筋肉量を増やしていくことが狙い。筋肉の修復・合成の助けとして、トレーニング後にプロテインドリンクを飲む人は多いと思いますが、実は前にも飲んだほうがより効果的。プロテインドリンクにはたんぱく質だけでなく、速やかにエネルギーになる糖質も含まれています。エネルギー不足になると筋肉が消耗してしまいますから、筋トレ前に飲んでおくことで、トレーニング中の筋肉分解を最小限に抑えることが期待できるのです。ただ、前後で2回分摂ってしまうと、エネルギーや糖質、たんぱく質の摂り過ぎになることも。1回200mlなら、前に100ml、後に100mlとわけて摂るとよいでしょう。

前後で違う、プロテインドリンクの役割。

製品によって異なりますが、1回分の粉末を150〜200mlの水や牛乳に溶いて作ります。1回分で、10〜20gのたんぱく質が摂れます

筋トレ前後に飲むプロテインドリンクのイメージイラスト

トレーニング前

糖質などがエネルギーとして使われ、トレーニング中の筋肉分解を抑える

トレーニング後

たんぱく質が、トレーニング後に始まる筋肉の修復と合成を助ける

筋トレやエクササイズを行う男女のイラスト

常識3

【運動中】
運動中に大量に汗をかくときは、
その分たくさん水を飲む。

不正解

水だけだと、電解質バランスが崩れることも。

大量の汗をかくと、水分だけでなくナトリウム(塩分)などのミネラルも一緒に失われます。そこに大量の水を飲むと体液が薄まり、体内の電解質(ミネラル)バランスが崩れてしまいます。それによって神経や筋肉の調整も乱れ、けいれんや体調不良が引き起こされることがあります。大量の汗をかく運動では、水のみではなく、ミネラルと適度な糖質を含んだスポーツドリンクのほうがよいでしょう。必要なのはナトリウムと糖質ですから、水に、ほんの少しの塩、砂糖を入れるだけでもOK。レモン果汁や果実酢などで味を調えると、さっぱりして飲みやすくなりますよ。

自家製スポーツドリンクで賢く水分補給。

日本スポーツ協会は、汗で失われるナトリウムを補い、かつエネルギー補給ができる水分を推奨しています。自分で作ることもできます。

理想的なバランス(500mLあたり)

  • 塩0.5g〜1g(ひとつまみかふたつまみ位)
  • 砂糖20g〜40g(大さじ2〜4杯半)

飲みやすくするポイント

  • レモン果汁や果実酢(りんご酢やワインビネガーなど)を加えると後味スッキリ
  • 温度は5〜15℃。冷え過ぎない程度にすると、胃腸に負担もかけず吸収がスムーズ
水・塩・砂糖・レモンで作る自家製スポーツドリンクの材料イラスト

常識4

【運動前】
仕事終わりのジョギングが日課。
空腹ではないので、食事は摂らない。

正解

短い距離をゆるく走るならよい。
走る前後でわけて食事を摂る方法も。

10キロ以上走る場合は、エネルギー補給をするべきですが、夕方に30分、3キロ程度のジョギングであれば、走る前のエネルギー補給はなくてもよいと思います。走り終えてからの食事が遅い時間になる場合は、走る前と後にわけて摂るという方法もあります。走る前に、ご飯などエネルギー源になる糖質を摂り、走ったあとは、消化のよいたんぱく質やビタミン、ミネラルなどの微量栄養素を含んだ食事を摂るとよいでしょう。


常識5

【運動前】
貧血気味なので、
運動前に鉄分の多い食事を摂る。

不正解

鉄は、吸収されにくい栄養素です。
運動前に限らず、日々意識して継続的に補って。

鉄は、摂取後すぐに血液に反映されるわけではなく、数週間〜数か月かけて赤血球の材料として使われます。また、失われやすく補いにくい栄養素のため、不足しやすい傾向にあります。運動前に限らず日々の食事で継続的に補いましょう。鉄には動物性のヘム鉄、植物性の非ヘム鉄があり、貧血がある人は、吸収率の高いヘム鉄を摂るように心がけて。赤身の肉、レバー、貝類に多く含まれています。カフェインや緑茶に含まれるタンニンは鉄の吸収を妨げます。食事中、食後すぐに摂るのは避けましょう。


常識6

【運動中】
登山やトレッキングには、空腹を
避けるためにおやつを持っていく。

正解

長時間歩きますから、
手軽にエネルギー補給できるものを。

登山やトレッキングでは、長時間歩くためエネルギー不足が起こりやすく、ふらつき、歩行ペース低下、集中力低下の原因になります。そのため、軽くて持ち運びやすく、すぐに食べられる行動食(おやつ)が必要。ご自分が食べやすいものでOKです。糖質を多く含む食品(ドライフルーツ、羊羹、ゼリードリンクなど)は、速やかにエネルギーになります。一方、ナッツなどの脂質はゆっくりと消化され、持続的なエネルギー源となります。即効性の高い糖質と、持続性のある脂質を組み合わせるといいでしょう。水分補給もお忘れなく。

糖質|即効性の高いエネルギー源

ドライフルーツ、羊羹、ゼリードリンク、グミ、飴など

脂質|持続型のエネルギー源

ナッツ、チーズ、チョコレートなど


常識7

【運動中】
テニス選手は、試合中にバナナを食べている。
私も、友だちとプレーする時、それを真似ている。

正解

糖質やミネラルが豊富。
けいれん予防にも役立ちます。

楽しんで軽くプレーする程度であれば不要ですが、長時間、しっかり動く場合はエネルギー源になる糖質の補給が大切です。バナナは糖質が多い上、カリウムなどのミネラルも豊富に含まれているので、けいれんの予防にもなります。ちなみに、海外での補食としてバナナを選ぶアスリートは多くいます。特に、水が安全ではない地域では、洗う必要があるもの、カットしなければ食べられないものは避けたほうがいいとされています。皮をむくだけ、手を洗わないでも食べられるバナナは、安全で便利な補食として重宝されています。


常識8

【運動後】
仕事終わりにジムへ行くと帰宅が21時になる。
何も食べずに寝る。

不正解

欠食はよくありません。
軽く栄養補給しましょう。

遅い時間の食事は、睡眠中も消化のために胃腸、肝臓が働き続けるため、深い睡眠が妨げられ疲労回復が不十分になることもあります。ただ、欠食はよくありません。筋肉の修復や合成が進みにくく、回復が遅れる原因になるからです。できればジムへ行く前に食事を摂るか、朝と昼の食事で必要な栄養を確保しましょう。それも難しければ、帰宅後にホットミルクだけでも飲む。消化に負担の少ない栄養補給を行うと筋肉修復に必要な最低限の材料になり、睡眠の質も保ちやすくなります。工夫をして欠食を避けましょう。


常識9

【運動後】
運動で消費したので、好きなものを食べる。

正解

運動が、心の健康のためなら
好きなものを食べてよい。

運動は心の健康を保つため、今日はがんばったからご褒美に、ということであればよいと思います。が、減量が目的であれば、消費と摂取のバランスを考えたほうがいいでしょう。例えばショートケーキ1個は、約300〜350キロカロリー。食べなかったことにしようと思うと、体重や速度にもよりますが約1.5〜2時間のウォーキングが必要です。消費するのには想像以上に時間がかかります。減量もご褒美も叶えたいということであれば、夜ではなく、活動量が多く、糖質がエネルギーとして使われやすい日中に食べるほうが、脂肪として蓄積されにくくなります。

ショートケーキ1個分(約350kcal)を消費する運動

ウォーキングやジョギングなど運動別の消費カロリー目安表

常識10

【運動後】
運動はストレッチやヨガのみ。
終わってからの栄養補給は特にしていない。

正解

エネルギー消費が少ないので
補う必要はないと言えます。

ヨガやストレッチは、身体を鍛えるというより、身体のリセットや柔軟性の向上、姿勢改善、リラクゼーションが目的。筋肉に大きな負荷をかけたり、短時間でエネルギーを多く消費したりするわけではありませんから、終わってから栄養を補う必要はないと言えます。ただ、汗をかいたり長時間になる場合は、水分補給を忘れずに。ヨガや、呼吸を意識したリラックス系のストレッチの後は、自律神経の副交感神経が優位になり、心身が休息モードに入ります。消化活動が活発になるため、終了後、2時間ほどは食事を控えるほうがいいでしょう。


常識11

【運動後】
筋肉だけでなく骨も強くしたい。
運動後、カルシウムも摂っている。

不正解

日頃からカルシウムの摂取を心がけて。

カルシウムは摂ってすぐに骨が作られるわけではありません。数週間〜数か月かけて骨の形成や維持に使われます。骨の健康を考えるのなら、鉄と同様、カルシウムが多い乳製品や小魚などを摂取するよう心がけて。さらに、吸収を高めるビタミンDも併せて摂るとよいでしょう。日光浴で体内合成されますが、十分とは言えませんから、魚やきのこ類からも積極的に摂りましょう。


常識12

【運動後】
筋トレの後は、
お酒を飲まないようにしている。

正解

アルコールは、筋肉の合成を妨げます。
運動後は、控えるのが理想。

筋トレ後は、筋肉の修復と合成が進む貴重な時間帯。特にトレーニング後1〜2時間は筋タンパク質合成が高まるので、たんぱく質や糖質の摂取を優先させるのがベスト。お酒を控えるのは正解です。アルコールは筋タンパク質合成を約30%低下させ、摂取量が多いほどその影響が大きくなります。少量でも筋合成や回復を妨げる可能性があるため、トレーニング直後から回復時間中はお酒は控えることが望ましいと言えます。

アルコール摂取による筋肉のタンパク質合成低下を示すグラフ

運動後にアルコールを摂取すると、たんぱく質だけを摂った場合に比べ、筋肉の合成が24〜37%低下。たんぱく質を摂っても、アルコールが筋肉の回復を直接的に阻害する。

引用元:Evelyn B. Parr, et al. Alcohol ingestion impairs maximal post-exercise rates of myofibrillar protein synthesis following a single bout of concurrent training. PLOS ONE, 2014

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この先生に聞きました!

加藤 千穂 先生

加藤 千穂 先生

かとう・ちほ

山梨学院大学 
健康栄養学部 管理栄養学科
特任講師

愛知文教女子短期大学卒業後、委託給食会社に勤務し、老人保健施設や病院、全寮制騎手養成学校にて、栄養業務全般を担当。2014年、日本女子体育大学大学院 スポーツ科学研究科修了。16年、リオデジャネイロ五輪でレスリング日本代表チームに帯同、栄養サポートを担当。神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科 助教、神奈川衛生学園専門学校 非常勤講師などを経て、25年より現職。公認スポーツ栄養士、健康運動指導士

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