排便に欠かせないおしりの穴は、実は目の周りと同じくらいデリケート。間違ったケアを続けると、痔などの疾患を引き起こすことにもなりかねません。今回は肛門疾患がご専門で、多くの女性を診察してきた佐々木みのり先生に、正しいおしりのケア方法をうかがいました。
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毎日便を出しているから「私は便秘ではない」と考える人も多いですが、出し切ったつもりでも肛門内に便が残っている場合もあるのです。その状態を私たちは“出残り便秘”と呼んでいます。肛門は腸で作られた便を排出するための通り道で、そこに便が存在しないのが正常の状態。では、なぜそこに便が溜まるのかというと、さまざまな要因で【排便反射】という、便を出す感覚が鈍くなってしまっているのかもしれません。そうならないためにも排便反射の感覚を保つようにすることが重要だと言えます。
“出残り便秘”チェックリスト
トイレに行かずにそのまま過ごす
出残り便秘の原因にもなる
トイレに行きたいのをガマンしていたら、便意がなくなったという経験はありませんか? 実はそれを繰り返すと出残り便秘の原因になってしまうのです。便意があるのは排便反射が起こっているということ。それをガマンしてしまうと、徐々に排便反射が鈍くなり感覚が麻痺してしまうことで、肛門内を便の貯蔵場所にしてしまっているのです。ですから、少しでも便意を感じたときは、すぐにトイレに行くように心がけましょう。
一般的には和式の便器に座っている状態が、直腸と肛門の角度がストレートになるため、一番便が出やすい姿勢だと言えます。最近は洋式の便器が主流ですが、便が出にくい人は、前かがみになる、台に足を乗せるなどで、和式便器に座っているような姿勢を作ってみてください。ほか、前かがみで下腹部をつまみながら上下に揺らしたり、百会(ひゃくえ)という頭のツボを押すのもおすすめです。ただし腸の角度は人によって異なるため、排便しやすい姿勢も人それぞれ。手を上げたり、壁に手を当てたりすると出やすいという人もいるので、いろいろ試して自分に合う姿勢を見つけるのがよいでしょう。
前かがみになったり、足台や箱を使って高さを調節し、便の出やすい姿勢を作る
前かがみで下腹部をつまんで、お腹を上下にやさしく揺らすと便が出やすくなる。左右の耳を結ぶ線と頭の真ん中の線が交わる百会のツボを押すのも効果的
前述のとおり、便は排便反射で出るものであって力んだりして出すものではありません。さらに長時間便座に座っていると、おしりもうっ血してしまうため、トイレの時間は入ってから出るまでを5分以内に。それで出し切れないのであれば、時間をおいてからもう一度入るようにしましょう。また、便意を起こさせるには、縄跳びなどの振動運動も効果的。家の中ならば縄なしのエアー縄跳びもおすすめです。
ペーパーでゴシゴシと拭いている
傷つけないようにやさしく
肛門内に便が残らずにきちんと排泄ができていれば、おしりが汚れるということはほとんどありません。トイレットペーパーで何度拭いてもきれいにならないのは、肛門内に便が残っている可能性が高いで す。またゴシゴシ拭くのは、デリケートな肛門の皮膚を傷つけてしまうことに。おしりを拭くときはトイレットペーパーをテニスボール大にふんわりと丸めて、ポンポンとやさしく当てるのみにしましょう。
おしりを拭くときは、テニスボール大に丸めたペーパーでやさしく
ていねいに洗っている
出残り便秘を増長させる原因にも
温水洗浄でおしりを洗い過ぎると、皮膚が乾燥して炎症を起こしてしまうことも。さらにその状態が続くと、皮膚が硬くなり、伸縮性のない肛門になることで、排便しにくくなり、出残り便秘を増長させてしまう原因にもなってしまいます。出残り便秘かなと思ったら、2週間ほど温水洗浄を使用するのをやめてみましょう。どうしても気持ちが悪いというときは、ぬるま湯を張った大きめの洗面器などにおしりをつける座浴で汚れを落とすのがおすすめです。
おしりの汚れが気になるときは、大きめの洗面器などで座浴を
石けんを使ってきれいに洗い流す
洗うのをやめてみる
肛門がかゆくなる原因は、出し残した出残り便による刺激であることが多いです。さらに石けんで洗い流すとバリア機能が失われてしまい、ますます皮膚を乾燥させてしまうことにも。かゆいと思ったら、まずは炎症を起こしている皮膚のバリア機能を再生させるために、2週間おしりを洗うのをやめてみましょう。
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