vol.4
[今回の野菜] 大根(神奈川県 三浦市)
年も明けて冬本番。寒さのピークを迎える頃、おでんや煮物、温野菜、身体も心も温めてくれる料理のおいしさもピークかも知れません。というのも、冬の料理に欠かせない大根は真冬が一番おいしく、栄養豊富になるそうです。そこで、今回は市町村別収穫量で秋冬大根の全国第1位を誇る神奈川県の三浦市を訪れました。
三浦で育まれた大根作りには、作り手の新たな挑戦がありました。
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三浦で育まれた大根作りには、作り手の新たな挑戦がありました。
海と山の恵み、自然が生んだとっておきの風土
三浦の大根畑は三方が海に囲まれる絶景。小高い丘の畑にそよぐ風には、ほのかに潮の香りがします。実はその潮風の運ぶミネラルが、大根の糖度を高めているそうです。風だけでなく、この大地には土にもヒミツがあります。それは、富士山と箱根山の噴火によって降り注いだ火山灰を多く含んでいること。水はけがよく、大根が育ちやすいレアな土壌です。海と山から恵みを受ける、ここでしか叶わないような風と土。その三浦で「安心・安全、おいしい大根をつくりたい」と、若くして19歳から長年、大根づくりを生業としている田村さんにお話をお聞きしました。
「もっと良くしたい」が大根づくりを変えていく
安全な大根を安心して食べてもらいたい。その決意から、田村さんの大根づくりには常に挑戦があります。十数年前に果物畑で使われる「ステビア」にたどり着いたのも「おいしさ」へのこだわりから。ステビアとは免疫草とも呼ばれるキク科の植物。その自然の成分は、抗酸化物質や微生物を活性化する養分、農薬を分解する乳酸菌を含むといいます。「安全なのはもちろん、甘味が増して、鮮度が長持ちする」と、田村さん。さらに、大根の品種改良に試作者として精力的に関わられることで、種苗会社に品種の名付けをお願いされたこともあるそうです。未知の大根をつくる。「もっと良くしたい」という想いが人一倍強い田村さんにとって、その挑戦は、きっと、作り手の冥利につきること。
思わず口に出る言葉にも、愛情が詰まっています
「よくがんばったね」それは台風の後、大根にかけられた言葉です。「今日は葉っぱがイキイキしているね」畑を訪れた日は、そんな言葉が笑顔と一緒にこぼれていました。田村さんの畑仕事は夫婦二人三脚。土作りからはじまり、種まき、収穫までを二人で行います。夫婦で育てるからこそ、わが子を想うような愛情がより湧いてくるのかもしれません。大根はデリケートで出荷中にひび割れすることが度々。だからこそ、育てる時も、収穫も出荷も丁寧なのが、お二人の仕事の流儀。田村さんの大根はいつもひび割れることなく、きれいに土を落として、まるで、おめかしするように出荷の時を待っています。
大根の確かな品質を、ひと目でわかる目印に
「ステビア農法のシールを大根に貼って安心・安全の目印を広めたい」そう夢を語る田村さん。それは、本当の安心・安全を食べる方に知って欲しい、見つけて欲しいからといいます。「どの肥料や農薬をどう使うか。本当に大切なのは育て方」と田村さん。産地だけでなく、農法も示すことこそ安心・安全の約束。育て方に目を向けると、野菜選びにひとつの基準を持てるのではないでしょうか。畑では収穫の1日前にステビア濃縮液(ファームA)を1000倍に希釈し動力噴霧器にて葉面散布することもあります。「出荷の直前に使うことで抗酸化作用が強まり、より鮮度を保つことができる」と、田村さん。つきることのない安心・安全、そしておいしさへのこだわり。ステビア大根は東京神田市場へ出荷されています。是非、お試しください。味わってほしい、違いがあります。
ステビア農法のシール
- 緑の葉と白い切り口、
おいしさを見分ける色に注目 -
今回、お話をお聞きした田村さんによる、おいしい大根の見分け方をご紹介。
みずみずしい元気な葉は新鮮な証拠です。ですが、大根の葉は日ごとに萎れていくので、多くのお店では、時間の経った大根は葉を取り除いているそうです。葉が切り取られていたり、カットされている大根の場合は切り口がポイント。みずみずしく白くきれいな切り口が新鮮でおいしいとのことです。選ぶ時は、参考にしてみてください。
生産者
田村さん(神奈川三浦市)
19歳で就農し、結婚後は夫婦で畑を切り盛り。釣りが大好きで、農作業のオフシーズンは頻繁に海へ。また、夫婦での旅行も多いそう。大根を育てている期間は、休みを取るのが難しい。だからこそ、オフは趣味や好きなことを思い切り楽しみ、オンとオフのメリハリを大切にしている。