次号から、ドラッグストアの活用術をお伝えする新連載がスタート!それを前に、連載をご担当いただく帝京平成大学 薬学部 小原道子先生のインタビューをお届けします。薬剤師のお仕事や、小原先生が感じるドラッグストアの魅力をうかがいました。
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ドラッグストアは、 健康を支える宝箱!
先生は、現在帝京平成大学で薬学教育に取り組んでいらっしゃいますが、以前は、薬剤師として病院やドラッグストアで勤務されていたそうですね。
「はい、そうです。ほかには、宮城県の過疎地域で訪問薬剤師をやっていたこともあります。在宅で療養されている患者さんのところへうかがうもので、お薬を届けるだけでなく、患者さんが飲みやすい薬の形状を検討したり、飲み忘れがないかを確認したり、薬に関することをさまざまにサポートしてきました」
薬剤師にはそういうお仕事もあるのですね。処方せんをもとに薬をそろえてくれたり、市販薬を買うときに相談に乗ってくれるのが薬剤師さんのお仕事だと思っていました。
「多くの方がそう思っておられるでしょうね。でも、実は薬剤師の仕事はとても幅広いんです。学校薬剤師という仕事もあるんですよ。薬品の使用・保管に留まらず、黒板や教室の照度、給食施設や設備、プールの水質の検査なども行っています。また、平時だけでなく災害時にも活動する、災害医療支援薬剤師という仕事もあります。被災地への医薬品の調達や、被災地の衛生環境の助言などを行っています」
お薬を扱う、というだけではないのですね。知っているつもりになっていました……。そういえば、私は調剤薬局とドラッグストアの違いもよくわかっていません。何が違うのですか?
「調剤薬局は、主に処方せんに基づいた医療用医薬品を扱っています。一方、ドラッグストアは、一般用医薬品の販売や、健康・美容に関する商品や食品、日用品なども扱っています。大きな違いはそれだと言えますね。ただ、最近では、調剤薬局を併設したドラッグストアも増えてきています」
調剤薬局併設のドラッグストアは便利ですよね。処方せんを出して、薬を受け取るまでの時間で、日用品などの買い物ができますし。
「ドラッグストアの歴史も、興味深いんですよ。1960年代後半、大衆薬の規制などさまざまな問題があって、薬局経営が難しい時期を迎えていました。そこで一部の薬局経営者が団結し、1973年にアメリカのドラッグストアに視察に出かけるんです。幅広い品ぞろえで、にぎわう様子を見て奮起し、日本でドラッグストアをスタートさせました。地域の人たちの健康に役立つものなら何でも扱う、と意気込んで、最初は電化製品も置いていた店舗もあったそうですよ」
薬剤師は、薬の相談と共に、
暮らしのコーディネートも大切だと思っています
私は、牛乳と卵は、必ず家の近くのドラッグストアで買っています。確かに牛乳と卵も健康に役立つと言えますよね。
「そうなんです。実は、ドラッグストアには薬に限らず、健康に役立つものっていっぱいあるんですよ。例えば、甘じょっぱいパウダーがかかった揚げせんべい、わかります?あれはね、実は高齢者の咀嚼や嚥下の練習にも使えるんですよ。硬さはないので、歯が丈夫でなくても噛みやすく、噛めば細かく丸くなるので、飲み込みやすいんです。また、口の周りについたパウダーを舐めようとしますから、舌を動かす練習にもなるんですよ」
ええ!すごい!お菓子が健康作りに役立つなんて。
「介護食も、介護を受けている人だけでなく、例えば風邪をひいて喉が痛い人とか、抜歯をして噛めない人にも便利なんですよ。柔らかくなめらかな状態に調理してありますから、食べやすいんです」
介護食は、まだ私には必要ないと思ってましたが、そういった使い方もできるんですね。
「薬剤師は、その人が必要なものをコーディネートする、〝暮らしの処方せん〟を書くのもひとつの役目だと思っているんです。薬を飲むのって楽しくないじゃないですか。だから、暮らしの中でちょっと不便だと感じることをサポートする。商品をすすめたり、アイデアをお伝えして、その人がちょっと楽になれたり前向きになれたら、と思うんです」
医師とは違った形で、私たちの健康を守ってくれているんですね。
「医師にはそれぞれ、専門の科がありますが、薬剤師はすべての科、すべての年代に対応しています。その方の症状はもちろん、暮らしの様子までお聞きして、適切なお薬をお届けします。ドラッグストアは、誰もが気軽に行けて健康について相談できるところ。薬剤師は、地域で一番身近な医療従事者だと、私は思っています」
次号から始まる新連載では、暮らしの中の“ちょっと困った”に役立つ、薬剤師・小原先生のアイデアをお届けしていきます。どうぞご期待ください。
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