キリキリと痛んだり、もたれたり……。きっと誰もが経験したことのある、胃の不調。時々起こる程度であれば心配することはありませんが、1か月以上続くようなら、“新たな国民病”とも言われるある胃の病気の可能性があります。その病気が厄介なのは、検査をしても異常は見つからないという点。それゆえに解決策が見つかりにくい病気と言えます。悩みを長引かせないためにも、まずは、知ることから始めましょう。
異常がないのに、胃が不調!?その意外な向き合い方とは
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異常がないのに、胃が不調!?その意外な向き合い方とは
潰瘍やがんなど異常がないのが特徴
「もたれる」とか「重たい」とか、「キリキリ痛む」とか……。食べることによる負担が常にかかる上、精神的ストレスも受けやすいことから、胃の不調は多くの人が経験しているもの。筆者も、若い頃は大きな仕事を前にしたときなど、緊張からよく胃が痛くなっていました。胃の不調は寝込むほどではありませんが、食べられなくなったり、それによって気力が低下したりと、なかなかにつらいものです。
痛みやもたれなどの胃の不調は、時々であれば問題はないようです。が、1か月以上続く場合は【機能性ディスペプシア】という、胃の病気の可能性があるそうです。2013年に正式な診断名として認められた病気で、“新たな国民病”とも言われています。
「ディスペプシア(Dyspepsia)とは、〈消化不良〉という意味があります。“機能性”は、働きを示す言葉なので、機能性ディスペプシアとは、胃の働きが悪くなって症状が出ている病気ということになります。現れる症状は、みぞおちの痛みや灼熱感、すぐに満腹になる膨満感などです。食べ過ぎれば、誰でもお腹がいっぱいになりますし、ストレスを感じれば痛みも出ますが、それらの症状が週に1、2回、1か月以上(*)続く場合は、機能性ディスペプシアの可能性があります」
お話をお聞きしたのは、鳥居内科クリニックの鳥居 明院長。機能性ディスペプシアに詳しく、患者とていねいに向き合うことに定評のある先生です。
この病気は、つらい症状があるにもかかわらず、胃に異常が見つからないことが特徴。
「内視鏡で検査をしても、胃はきれいなのです。症状を引き起こすような潰瘍や、がんは見つかりません。今は、胃潰瘍や、胃がんを引き起こすピロリ菌の感染が少なくなっていることもあり、痛みやもたれなどの不調で病院を受診する人の約半数が、機能性ディスペプシアだというデータもあります」
*診療ガイドラインでは、症状の3か月以上の持続で診断とされていますが、症状に応じて1か月で診断されることもあります
気のせい、甘えだと言われてしまうことも
機能性ディスペプシアは年々増加している、と言われてはいますが……。
「診断される人が増えているのは事実ですが、急にこの病気が増えたということではないのかもしれません。かつて、胃の痛みやもたれなどを『気のせいだ』『甘えがあるからだ』と片付けてしまうことがあったからです。自分に原因があるとあきらめて、医療につながれなかった人は多くいたとも考えられます」
正式な診断名として認められてから約10年ですから、今もそのつらい症状が機能性ディスペプシアだと気づいていない人がいるかもしれません。
「この病気が死につながることはありません。ただ、生活の質は低下してしまいます。長く続く胃のつらさは、気のせいや甘えではありません。無理をしないことが大切です」