だるくて、やる気が起きない。ちゃんと睡眠をとったはずなのに、疲れがとれない。あなたも、そんな経験はありませんか?原因はさまざまにありますが、“細胞の酸欠”もそのひとつ。あなたの身体を作っている細胞が、酸欠に陥っている可能性があるのです!
読了時間:9分
だるい、疲れが抜けない。それ、細胞の酸欠が原因かも!?
細胞呼吸こそが呼吸の真の目的!
「今、 “かくれ酸欠”が増えているそうです」。編集会議で今回のこの特集について担当者からそう語られたとき、筆者は「私は多分、大丈夫だな」と思ってしまいました。問題なく呼吸をできているし、と。しかし、担当者から出た「呼吸の仕方によっては、気づかないうちに細胞が酸欠になっていることがあるんです」という言葉に、「細胞が?」と驚かされたのです。細胞の酸欠によって表れるのは、だるさや疲れのとれにくさ、肩こり、腰痛、集中力の低下など。さらには肌のしわやたるみまで引き起こすのだそうです。きっと誰もが経験しているであろう不調の数々。筆者にも、もちろんあります。呼吸で改善できるのなら、方法を知りたい。そして、あなたにもそれをお伝えしたい。と、呼吸についての書籍を多く書かれている、ハーバード大学の根来秀行先生にお話をうかがいました。
「皆さんがよく知る呼吸は、酸素をとり入れ、二酸化炭素を吐き出すものだと思います。それは【肺呼吸】と呼ばれています。加えて、もうひとつ【細胞呼吸】と呼ばれるものもあります。これは、全身の細胞レベルで行われる呼吸。実は、これこそが呼吸の真の目的です。細胞呼吸が低下し酸欠に陥ると、細胞はエネルギー不足となり、ダメージを受けるのです。筋肉細胞が酸欠になれば、肩こりや腰痛を、肌細胞で起これば、肌のしわやたるみを引き起こします」
スマホやパソコン。浅い呼吸になる原因
呼吸の仕方に問題はない。筆者はそう思っていましたが、実は問題があることに気づいていない人は、意外にも多いそうです。
「呼吸が浅くなっている人は多くいます。マスクは原因のひとつ。息苦しくなるため呼吸の回数が増え、浅い呼吸になってしまうのです。さらにパソコンやスマートフォンの使用時にも呼吸が浅くなります。前かがみになるため、空気の通り道である気道が狭くなり、横隔膜が動きにくくなることが理由です。マスクの息苦しさは体感として知っている人も多いと思いますが、パソコンやスマートフォン使用時の呼吸の状態は気づきにくい。仕事や動画視聴などに夢中になると、呼吸が浅くなっていることがわかりにくくなるのです」
パソコンやスマートフォンは、もはや手放せないもの。さらに現代社会はストレスも多いため、呼吸が浅くなりやすく、細胞の酸欠が起こりやすい環境だと言えます。
「呼吸は、24時間365日絶え間なく行っているもの。それだけに、心身にさまざまな影響があります。ただ、無意識に行うだけでなく意識的にも行えるものですから、呼吸を健康作りに役立てることは難しくありません」
だるさや疲れのとれにくさといった不調。加齢によるものと見過ごしがちですが、呼吸を見直すだけで、改善するかもしれません。
Check!|
浅い呼吸になっていないか。簡単にできるチェック方法
苦しくなく、30秒間息を止められるかを調べる【ブレスホールドタイムテスト】。浅い呼吸になっていないかチェックしてみましょう。
① 普段通り呼吸をして鼻から息を吐いたあと、鼻をつまむ
② そのまま息をしたくなるまでの時間を計る
Check Point!
30秒経過するまでに、唾を飲み込みたくなったり、喉、首、肩、お腹の筋肉が勝手に収縮したら呼吸が浅くなっている証拠。
そういった症状がなく、30秒息を止められたら合格。40秒以上止められたら理想的な状態です。
細胞の酸欠を防ぐには、実は、二酸化炭素が重要!
エネルギー作りに不可欠なものは酸素
呼吸の真の目的は、細胞呼吸。それはなぜなのでしょうか? 細胞呼吸の仕組みと、それが重要な理由を教えていただきました。
「先ほど、細胞が酸欠になると、エネルギー不足になる、とお伝えしましたね。細胞呼吸が重要なのは、細胞に届ける酸素が、エネルギー作りに必要だからなのです。体内にとり込まれた酸素は、食事などから摂った栄養素とともに血液の流れに乗り、全身の細胞に届きます。そして、その酸素と栄養素は細胞の中で燃やされてエネルギーが作られます。ご存知のようにエネルギーは生きていく上で必要不可欠。スポーツや運動で身体を動かすときにも、内臓を働かせているときにも使われます。さらに、細胞の修復にも必要。ですから、酸素が届かなくなるとエネルギーが作られにくくなり、だるさや疲れのとれにくさ、集中力の低下などの不調が表れるのです。細胞には呼吸によって常に酸素が送り込まれ、エネルギーが作り出され続けています。数分呼吸が止まっただけで死につながるのは、エネルギーが供給されなくなり、脳や心臓など生きていく上で不可欠な臓器が、働かなくなってしまうからです。呼吸の真の目的は細胞呼吸だという理由は、そこにあるのです」
細胞呼吸に重要なのは実は、二酸化炭素
細胞の酸欠を防ぐために、呼吸で酸素を多く吸い込めばいいのか、と考えてしまった筆者ですが、実は細胞呼吸には、二酸化炭素が重要なのだそうです。
「呼吸で二酸化炭素は排出されますから、二酸化炭素は不要なものと思われるかもしれません。でも細胞呼吸を促すのは、実は二酸化炭素。血液中の酸素は、赤血球のヘモグロビンと結合して細胞へ届けられます。細胞まで到着した際に、ヘモグロビンから酸素を切り離すのが二酸化炭素の役割。それがあってようやく細胞に酸素を引き渡すことができるのです。血中の二酸化炭素濃度が低過ぎると、ヘモグロビンから酸素を切り離しにくくなり、結合したまま再び血液中を漂うことになってしまいます」
Check!|二酸化炭素が担うのは、酸素を切り離す役割
エネルギー作りに必要な酸素は、ヘモグロビンと結合して血液の中を流れ細胞まで届きます。そこで二酸化炭素の出番。ヘモグロビンから酸素を切り離し、細胞が酸素を受けとれる状態にしているのです。二酸化炭素が少なければ、この切り離す作業ができないため、酸素はヘモグロビンと結合したまま、再び血液中をさまようことになります。
浅い呼吸がよくないのは、血中の二酸化炭素濃度が低下し過ぎることになるからだそうです。
「浅い呼吸というのは、吸う、吐くといった回数が多い呼吸だと言い換えられます。一定時間内の呼吸の数が多ければ多いほど、口から呼気として二酸化炭素が出ていってしまいます。それによって細胞が酸欠状態に陥りやすくなるのです。前ページで紹介したブレスホールドタイムテストで30秒息を止められない人は、呼吸が浅いため、日頃から二酸化炭素濃度が低い状態になっている可能性があります。呼吸を止めることで、いつもより高くなった二酸化炭素の濃度に耐え切れず、息を止めていられなくなるわけです。マスクの着用や、パソコン、スマートフォン使用時の前かがみの姿勢のほかに、口呼吸も浅い呼吸になりやすいため、注意が必要です」
目指すのは深い呼吸!かくれ酸欠改善メソッド
ゆっくり吐く&吸う。自律神経を整える「4・4・8呼吸法」
細胞の酸欠を招く、浅い呼吸。それをやめることが不調の改善につながりますが、呼吸は無意識に続けているものだからこそ、やめにくいと言えます。やめる、というよりも意識的な呼吸法をとり入れるとよいでしょう。
「私が提唱している、【4・4・8呼吸法】をとり入れてみてください。息を吐き切った状態から、4秒かけて息を吸い、4秒止めたら8秒かけて息を吐くというものです。浅い呼吸に気づいたときはもちろん、1日の中で何セットかやるとよいでしょう」
ゆっくりと息を吸って吐く。【4・4・8呼吸法】をはじめ深い呼吸がよい理由は、過度に二酸化炭素が出ていくのを防ぎ、自律神経を整えることができるからです。
「呼吸は、自律神経に制御されています。自律神経とは、呼吸をはじめ体温や血圧、心拍、消化、代謝などを、自分の意思と関係なく自動的に働かせる神経。それぞれの器官を活動に導く交感神経と、リラックスに導く副交感神経にわかれています。それぞれのバランスがよいと身体はいい状態を保てますが、ストレスが多い現代社会では交感神経が優位になりがち。緊張や不安、イライラなどが表れ、それによっても浅い呼吸になってしまいます。しかし、呼吸は意識的にもできるもの。呼吸法によって自律神経をコントロールすることもできます。深く呼吸をすることで、交感神経が優位な状態から、副交感神経が優位な状態へ変えることができ、栄養と酸素を全身の細胞に届けることができるようになります」
副交感神経を優位に導くスイッチは、横隔膜にあるそうです。
「横隔膜は肺の下にあるクラゲのような形をした筋肉。そこに、副交感神経のセンサーがあります。深い呼吸で横隔膜をゆっくり緩めるとそのセンサーが敏感に反応し、スムーズに副交感神経が優位な状態に変わり始めます。 横隔膜を動かしやすくするストレッチもとり入れるとよいでしょう」
リラックス状態に導く『4・4・8呼吸法』
浅い呼吸に気づいたときのほか、1日の中で何度か行いましょう。座った状態でも、立った状態でも、仰向けに寝て行ってもOK。
① 鼻から軽く息を吐いたら、お腹を膨らませながら4秒かけて鼻から息を吸う。お腹が数センチ膨らむようにしっかりと吸い込む
② 4秒呼吸を止める
③ 8秒かけて、鼻から細く長く息を吐く。お腹を絞るようなイメージで行う。①~③を4回ほど繰り返す
時間があればこちらも追加を!|
横隔膜を動かしやすくする胸郭(きょうかく)ストレッチ
悪い姿勢を続けていると、肺を囲む部屋のような【胸郭】が閉じ、浅い呼吸に。胸郭をしっかり開くことで横隔膜が動きやすくなり、深い呼吸につながります。4・4・8呼吸法の前にとり入れるとより効果的。
① 椅子に座り、背筋を伸ばして胸の前で手を組む。ゆっくり息を吐きながら前に腕を伸ばし、同時に骨盤を後傾させる。左右の肩甲骨が開くのを感じながら行う
② ゆっくり息を吸いながら骨盤を前傾させ、伸ばした腕を胸の下に引き寄せる。左右の肩甲骨が背骨に寄り胸が開くのを感じながら行う。①~②を5回繰り返す
リラックスだけじゃない。運動することも休息に!
自律神経と密接な関係がある呼吸。呼吸法をとり入れることに加え、自律神経の乱れにつながる生活習慣はないか、見直すことも大事だと先生。
「睡眠不足は、自律神経を乱れさせる大きな要因。日本人は忙しく、睡眠時間を十分にとれていません。睡眠を含め休息はとても大切です。ただ、私が考える休息とは、リラックスすることだけではありません。あまり動かない人は、逆に運動などで身体に負荷をかけることもまた休息なのです。仕事や運動のあとに身体や頭を休めリラックス状態に導くように、デスクワークなどで座っている時間が長く続いたら、適度な運動をとり入れて覚醒に導くことも休息。休息とは交感神経、副交感神経のどちらかに偏り過ぎずバランスをとること。それもまた、細胞の酸欠を防ぐことになるのです」
4・4・8呼吸法は、場所や時間を選ばずともできる方法。そして、休息することも、さまざまな健康法を実践している本誌読者のあなたなら、きっと難しくはないはず。より快適な明日を想像しながら、今日からの過ごし方を変えていきましょう。
















