リンは身体に必要なものでも……。増え過ぎると、危険物質に変貌も!
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リンは身体に必要なものでも……。増え過ぎると、危険物質に変貌も!
リンとカルシウム。骨に最適な組み合わせ
リンが老化を進める原因。それを知ると、リンは“悪いもの”だと思うかもしれません。増え過ぎると老化を進めることは確かですが、実は、人間をはじめ生物にとって必要不可欠なものなのです。
「リンの一番の役割は、骨の維持。食べものなどから摂ったリンの大部分は、骨を作る成分として使われています。骨は、カルシウムとリンが結合した【リン酸カルシウム】でできています」
前ページの先生のお話の中に、骨と腎臓の間でメッセージのやりとりをしているとありました。それは、骨が適切な量のリンを必要としているためです。
「骨は強度を保つために、常に作り替えが行われています。古い骨を溶かして壊し、そして材料になるカルシウムとリンを血液の中からとり込んで、新しい骨を作ります。その作業がいたるところで行われているわけです」
繰り返し行われているこの作業に、リンとカルシウムは理想的な組み合わせなのだそうです。
「私は、リンとカルシウムの組み合わせを、“工事用のセメント”のようなものだと考えています。血液中のリンの濃度が高まると、カルシウムと結びつき、非常に硬いリン酸カルシウムとなって固まります。効率よく、硬くて丈夫な骨を作ることができるのです」
簡単に固まるからこそ危険と隣り合わせに
リンは、必要不可欠なもの。ただ、貯蔵庫である骨の外に現れてしまうことが問題なのです。
「効率よく、強い骨を作るために、リンとカルシウムはとてもよい組み合わせではありますが、実は危険もはらんでいます。骨以外の場所で固まってしまうと、トラブルが起きてしまうからです。もし“工事用セメント”が、例えば血液や、血管、心臓など臓器の中で固まってしまったら……、そんな風に想像してもらえば、いかに大変なことになるか、わかりやすいかもしれません」
リン酸カルシウムは、骨の外に現れると危険物質に変貌するということなのです。
「その危険物質は、血液の流れにのって全身を漂います。体内のあちこちで細胞を障害したり、炎症を引き起こすなどして、老化を加速させるのです」
リンが増え過ぎてはいけない理由は、ここにあるのです。
「リンを多く摂っても、腎臓の働きでリンを尿の中に捨てられるのでは、と思われるかもしれませんね。しかし、腎臓にあるネフロンは、実は消耗品。加齢によって数が減少します。その状態でリンを摂り過ぎると、1個のネフロンにかかる負担が大きくなり、不要なリンを捨てきれなくなってきます。そうして血中のリン濃度が高くなり、骨以外の場所で、危険物質に変化してしまうのです」
ネフロンの負担が増えると、機能するネフロン数がさらに減少することに。ますます危険物質が発生しやすい状態になってしまいます。