尿を作るだけではない。生命維持を担う、腎臓の働き
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尿を作るだけではない。生命維持を担う、腎臓の働き
腎臓の中の【ネフロン】がろ過作業の主役
先の先生のお話にあったように、体内の環境を一定に保つという重要な仕事をしている腎臓。尿を作るまでに、大きく次の3つの工程があります。
- 血液をきれいにするために、ろ過をする
- 必要な成分と不要な成分を仕分ける
- 必要な成分を血液に戻し、不要なものを尿の中に捨てる
「腎臓には、心臓から送り出された血液の1/4が流れ込みます。そこに含まれた老廃物をろ過し、体外へ排出することで血液をきれいな状態に戻しているのです。その作業の主役が、腎臓の中にある【ネフロン】。ひとつのネフロンは糸球体と尿細管で構成されています。
ネフロンの数は、かなり個人差がありますが、平均値として片方の腎臓に約100万個、両方で約200万個あるとされています。毛糸玉のような形をしている糸球体は、ザルや、ろ紙のようなもの。赤血球やタンパク質など、大きな粒子のものは通さず血液中に残し、小さな粒子のものだけを通します。そしてそれは“尿のもと”になる原尿として、尿細管へと送られます。1日に作られる原尿は、約180リットル。実に、家庭用のお風呂1杯分に相当する量です。この中に含まれるのは、クレアチニンなどの老廃物のほか、糖やナトリウム、カルシウム、カリウム、など身体に必要なもの。先ほどお話ししたリンもここに含まれています。尿細管で、原尿の成分を仕分けして、必要なものは血液に戻し、不要なものは尿に出すという作業が行われています」
かなり個人差がある、
ネフロンの数
両方の腎臓に約200万個あるとされているネフロン。これはあくまで平均的な数字で、かなり個人差があります。両方で約50万個という人もいれば、約300万個あるという人も。この差には、遺伝的要素のほか、出生時の体重も関係があると言われています。生まれたときの体重が重いほどネフロンの数が多く、低体重児ほど少ない傾向にあります。
臓器間のネットワークでやりとりされるメッセージ
私の身体の中で、腎臓がこんな精密な仕事をしているのか……、と驚いた筆者。必要なもの、不要なものを仕分けるという部分に腎臓のすごさを感じるのです。
「腎臓だけでそれを決めているわけではなく、骨や肝臓、心臓、肺などの臓器と連絡を取り合って決めています。腎臓が、各臓器にどの成分が足りているのか、不足しているのか、メッセージを送り合って確認しているようなイメージです。そのネットワーク間でどのようなことが行われているのか解明されていない点も多いのですが、腎臓と骨の間でのことはわかっています。血液中にリンが増えると、骨は【FGF23】というホルモンを分泌。それが血流に乗って腎臓に届くと、クロトー遺伝子に作用して、リンをあまり血液中に戻さないようにするのです。つまりFGF23は、骨から腎臓へ送られる『もうリンがいっぱいあるから、おしっこの中に捨ててください』というメッセージだと言えます」
こういった実に精巧な仕組みが正常に働くことで、私たちは健康に生きることができているわけです。腎臓を守らなければ。あなたも、そう思い始めたのではないでしょうか?