〝あたり前〟だから気づきにくい。脳を疲れさせる原因とは
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〝あたり前〟だから気づきにくい。脳を疲れさせる原因とは
デジタル機器にはいくつかの問題が
脳が原因であると考えられる目の不調。近年増加している要因として、切り離せないのがデジタル機器の普及だそうです。使い過ぎが目によくないことはよく知られていますが、なぜ脳を疲れさせるのか、お聞きしました。
「パソコンやタブレット、スマートフォンの使用が、健康にどんな影響があるかは、まだ不明な部分が多くあります。人類誕生からの長い歴史を考えると、それらデジタル機器はまだ生まれて間もないものだからです。ただ、現段階の問題として指摘しておきたいのは、まずは人工的な強い光にさらされ続ける点です。テクノロジーの発達で、映像は高画質、高精細になり、目に入る光の量が増えています。強い光は、視機能を司る脳の領域にも強い刺激を与えます。そしてもうひとつ、目と画面の距離の近さです。かつて、テレビは目を悪くする筆頭とされていましたが、それでも1~2メートルの距離があります。対してパソコンは40センチ、スマートフォンになるとわずか15~20センチしかありません。近くを見るとき、ピント調節のために水晶体が厚くなり、加えて目の筋肉を内側(鼻側)に寄せた状態になります。15~20センチの距離でスマートフォンを見続けるということは、水晶体が厚くなり、両目が寄った状態が固定化されるということなのです。ピント調節も目を寄せるのも目と脳の共同作業。近くのものを見続けるのは、目と脳の調節機能を過剰に使うことになります」
デジタル機器による刺激の強い光と、近すぎる距離。さらに、さまざまにあふれる情報も脳の負担になっているのだそうです。
「スマートフォンが手元にあると、ついインターネットやSNSにアクセスしてしまうもの。知らず知らずのうちに常に情報に触れていることになります。またスマートフォン以外にも、テレビや、街中にある液晶ディスプレイ、プロジェクターなどからも次々に情報が目に飛び込んできます。必要としていなくとも、情報の洪水にさらされていると言えます。脳が情報を処理できるキャパシティは限られていると言われていますから、目から絶え間なく情報が流れ込んでくれば、脳が疲弊してしまってもおかしくありません」
目に問題がないのに見えにくい。
その主な症状
眼球使用困難症候群の代表例
目をうまく開けられない、勝手にまばたきが起こるなど、まぶたを開けること自体がつらくなるもの。
※まぶたが一時的に動くものとは違います
視界全体に大きさの異なる白色、透明の粒が無数に見え続けるもの。
光に対して強いまぶしさを感じる状態。
情報の量だけでなく〝質〟も疲れの原因に
入ってくる情報には、時にどうしようもなく暗い気持ちになってしまうものもあります。
「つらいニュース、差別的なもの、誰かを攻撃するようなものなど、心に暗い影を落とす性質のもの。そういったネガティブな情報にさらされる機会が増えたことも脳を疲れさせる一因になっていると、心療眼科医として考えざるを得ません。不安や、いら立ち、無力感など負の感情が大きくなると心の状態が悪くなり、脳の働きにも影響します。心と脳、そして目。そのどれかに不調が現れると、ほかのいずれかに影響してしまうこともあるのです」
筆者は、パソコンやスマートフォンだけでなく、街にある液晶ディスプレイなどが映し出すニュースや広告までもが脳を疲れさせる原因だとは思ってもいませんでした。街中に映像が存在するのは、あたり前の光景だからです。私たちは、目と脳、心が疲れやすい環境にいることを、考えておかなければならないのでしょう。