視力に問題はないのに、見えづらい。今、そんな症状のある人が増えているそうです。中には、何が原因なのかがわからず、途方に暮れている人もいるのだとか。実は、視力と見えることはイコールではありません。目だけではなく、脳の働きがあるから見えるのです。改善に努めても、見えづらさを感じる場合は脳の疲れが原因のこともあるかもしれません。
脳の疲れが原因かも!?見えづらさの正体
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脳の疲れが原因かも!?見えづらさの正体
近年、増加中!?原因不明の目の不調
目が疲れる、しょぼしょぼする、ぼやける、痛い、まぶしい……。きっと誰にでもある、そんな目の不調。筆者ももちろん日々感じています。特に夕方になるとひどく目が疲れてしまいます。年齢のこともあるし、一日中パソコンに向かっているし、仕方ないことでしょ、くらいに考えていました。しかし、本誌の編集会議でメンバーから「そういった目の不調は、脳の疲れが原因のこともあるらしい」と聞き、「そんなこと、あるの?」とかなり驚きました。
今回お話をうかがったのは『井上眼科病院』名誉院長の若倉雅登先生。先生は、目と脳の関係異常による病気を扱う【神経眼科】、【心療眼科】という、新たな分野を開拓されてきた医師です。
「目の不調は、使い過ぎによる一時的なものということもありますし、加齢による衰えや、白内障など目の病気が原因の場合もあります。そういった原因がわかるものであれば眼科での対応策があります。しかし問題なのは、眼科で調べても『目に異常はない』と言われてしまった場合。視力にも眼球にも問題はないため、原因不明とされてしまうのです。そのような原因不明の目の不調を訴える人が、近年増えてきています」
見えるとは、目と脳の共同作業
冒頭に挙げた目の不調に共通するのは、見えづらさだと先生は言います。
「ほかにも、目が重い、開けていられない、ピントが合わないなど、患者さんはさまざまな感覚で表現されます。それはみな、見えづらさからくる不便さやつらさなのです。見えづらさは、患者さんだけでなく医師も目に原因があると考えてしまいますが、脳が原因ということもあるのです。“見える”とは、目に入ってくる情報を、脳が処理をして初めて成立します。例えば生まれたての赤ちゃんはほとんど何も見えていませんが、数か月経つと母親の顔を見て笑うようになります。これは目の発達とともに脳も発達しているからです。赤ちゃんはまだお母さんだとはわかっていないかもしれませんが、『敵ではない誰かが自分に関心を持っている』と脳が認識し、笑うという反応ができるのです。見るとは、“目と脳の共同作業”。脳に不調があると、見えづらさとして現れることがあるのです」
現代社会は、目からの情報が多過ぎて脳に負担がかかりやすいのだそうです。
「テレビもなく、車もさほど走っていなかった時代と今とは、明らかに違います。今は便利さと引き換えに、あふれんばかりの情報に囲まれた生活を強いられているわけです。もちろんそれは脳の負担にもなっています。脳の疲れのすべてが、頭部の自覚症状として現れることはありません。その代わりに、身体を通してそれを伝えてきます。目の不調は、脳が発するアラートのひとつなのです」