いずれ血管が壊れてしまう!?
下肢静脈瘤は早めの対処を!
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いずれ血管が壊れてしまう!?
下肢静脈瘤は早めの対処を!
自分では気づきにくい!軽症なら自覚症状なし
特集1で、もっと自分の足に関心を持ちましょうとお伝えしました。さっそくですが、膝の裏側を見てみてください。さらに、太ももやふくらはぎの下、足首も。皮膚の表面に、蜘蛛の巣のように血管が広がっていたり、浮き上がって網目のようになっていませんか?実はそれ【下肢静脈瘤】という病気。その名前の通り、下肢(足のこと)の静脈に血液が滞り、血管がふくらんだ状態になるものです。多くの人に起きるもので、筆者にもやはりあります。ただ、下肢静脈瘤には軽症から重症まで幅があり、先述の蜘蛛の巣状や網目状のものは軽症。血管が瘤のようになるまでふくらんでしまうと重症で、手術が必要になります。
「軽症から重症まで含め、30~49歳の55%、50~69歳の61%、70歳以上の75%に静脈瘤があったという報告があります。さらに出産経験のある女性はふたりにひとりが発症するという調査結果も。軽症の場合は自分では気づきにくいため人に指摘をされてようやくわかった、という人が多くいます。また、蜘蛛の巣状や網目状の血管がなくても、下肢静脈瘤になっていることがあります。むくみやだるさ、疲れやすさなどがある場合はその可能性があります」
こんな症状ありませんか?
下肢静脈瘤の可能性が!
下肢静脈瘤は、静脈を流れる血液が逆流することで起こります。
「それは、静脈の中にある弁が壊れてしまうからです。左右の足にそれぞれ50個ほどあるその弁は、いわゆる逆流防止弁。正常な状態であれば血液を心臓まで戻しますが、壊れてしまうと逆流が起こり、静脈に血液が滞ってしまうのです。動脈の壁は厚く頑丈になっているのに対して、静脈は薄くて柔らかく、ぺこぺこしているため、血液が滞ると静脈が広がって太くなり、ひどくなると曲がりくねることもあります」
血液が心臓に戻らず
逆流してしまう下肢静脈瘤
弁はひとつ壊れると、ほかにも負担がかかりどんどん壊れていきます。
今ある弁を守ることが大切!
弁が壊れると血液が逆流し、血管がふくらんでしまう。曲がったり瘤のようにまでなる
静脈にある弁が逆流を防ぎ心臓へ血液を戻す
女性はリスクが高く、加齢も発症に関係
男女とも起こりますが、女性のほうが発症しやすいそうです。
「月経と連動して一定周期で分泌される女性ホルモン、エストロゲン、プロゲステロンの両方に静脈の壁を柔らかくする作用があるため、女性は男性に比べて下肢静脈瘤になりやすいのです。また、妊娠で子宮が大きくなると骨盤の中で静脈が圧迫され、足から心臓へ戻ろうとする血液が通りにくくなります。それによって血管にも弁にも負担がかかり、壊れやすくなってしまいます。ひとつの弁が壊れたからと言ってすぐに発症するわけではありませんが、無自覚のまま進行し、20年、30年後に症状が出てくることもあります。出産経験者の約半数が発症するのは、こういう理由です」
さらに加齢や遺伝も関係。足は常に血液がうっ滞していることもあって、高齢になるとほとんどの人が発症するそうです。
「一度壊れてしまった弁は、残念ながらもとに戻すことはできません。ひとつ弁が壊れると、逆流のせいでその下の弁に負担がかかりさらに壊れやすくなるという連鎖も起きてしまいます。ですから、早めに気づくことが大切。重症になると、瘤が大きくなるだけでなく血管が破れて出血したり、皮膚の潰瘍といって、皮膚がただれることもあります。今ある弁を大切に守ることで悪化は防げます。今からぜひ対策をとってください」