重さも脂肪も影響。太ることがアキレス腱断裂の大きな原因。
読了時間:11分
重さも脂肪も影響。太ることがアキレス腱断裂の大きな原因。
コラーゲン不足がアキレス腱の弱さに
加齢とともに強さを失ってしまうアキレス腱。なぜ、30代以降で柔らかく、弱くなってしまうのか、先生に理由をお聞きしました。
「アキレス腱は、コラーゲンやエラスチンという弾力のあるタンパク質でできています。これらは肌のハリや弾力を担っていることでよく知られていますね。年齢を重ねると、アキレス腱を作るコラーゲンやエラスチンの合成と分解のバランスが崩れ、アキレス腱は柔らかく弱くなってしまいます」
弱くなった状態に負担がかかることで断裂が起こります。その負担には、私たちが意外と気づいていないものもあります。
「弛んだ状態に力が加わると危険です。例えば、1本の糸を両手で持ち、ピンと伸ばした状態から引っ張ってもなかなか切れません。しかし、一度弛ませてから一気に引っ張ると、途端に切れやすくなります。これが、アキレス腱でも起こるのです(下の図を参照)。先ほど、断裂が起こりやすいスポーツとして、剣道とバスケットボールを挙げました。共通するのは、後ろに下がってから前に踏み込む動作が多いこと。後ろに下がる直前にアキレス腱は弛み、着地でうまく地面をとらえられないこともあって、不安定な状態になります。そこから前へ踏み込むと、加わる負荷によって断裂しやすくなります。足の構造上、アキレス腱にかかる負荷は、つま先に比べて約3倍。それもあって、弛んだ状態から踏み込むと断裂のリスクが高くなってしまいます」
テニスのプレー中にアキレス腱を断裂した本誌スタッフも、まさにそれと同じ状態だったのかもしれません。
断裂しやすいのは
弛む→踏み込んだとき
弱くなるのは、不活動による影響も。
エレベーターを降りる瞬間や、階段の上り下りのときになぜ断裂するか、はっきりわからないそうですが、肥満もひとつの理由だと言えそうです。
「アキレス腱断裂の大きな原因は、実は太ることです。増えた体重だけでなく、その3倍の負担がアキレス腱にかかります。さらに、肥満によってコラーゲンが作られにくくもなります。これは、脂肪組織に炎症が起こり、コラーゲンの合成を促す物質よりも、コラーゲンを壊す物質を増やしてしまうからです。太ることは、コラーゲン不足を加速させ、そこに重さという負担が増えるという悪循環が生まれるわけです」
加齢によって、アキレス腱が切れるリスクは高くなりますが、今からでも打つ手はあります。断裂につながる原因を減らしていけばいいのです。
「アキレス腱が弱くなるのは、加齢だけでなく、不活動(動かないこと)による影響も大きくあります。例えば、年齢を重ねて太りやすくなるのには、基礎代謝の低下がありますが、運動をすればそれを緩めることができます。何もしなければ、身体は衰えます。ですから、アキレス腱も動いて使うこと。そうすれば、弱くなるのを防ぐことができるのです」