体育の授業などで、“アキレス腱伸ばし”をやった経験はありませんか?アキレス腱が切れるのを防ぐこの準備運動、今でも、スポーツの前にとり入れているかもしれませんね。ただ、それだけだと、アキレス腱断裂の予防策としては不十分かもしれません。実はアキレス腱は日常の何気ない動作で、切れてしまうこともあるのです。出かける、スポーツをする。その楽しみを支えている大切なもの。思わぬけがに見舞われることのないよう、守る方法をお伝えします!
アキレス腱は加齢とともに弱くなる!?
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アキレス腱は加齢とともに弱くなる!?
日常の何気ない動作で切れてしまうことも!
いよいよ9月。今年も厳しい残暑が続きそうですが、さまざまなことを快適に楽しめる季節は、もうすぐ。夏の間控えていた屋外でのスポーツも、そろそろ楽しめるようになりますね。会社や学校などでの運動会が控えている、ということもあるかもしれません。まもなくやってくる“スポーツの秋”を前に、あなたに知っておいてほしいことがあります。それは、アキレス腱のこと。普段、あまり気にかけないかもしれませんが、実は、日常の何でもない動きで切れてしまうこともあるからです。
気にかけない理由は、「アキレス腱が切れるのは、激しいスポーツをしたとき」だと思っているからではないですか?本誌編集部でもそんな話になりましたが、スタッフのひとりが40代前半で断裂を経験していたことが発覚。しかも、友人とテニスをプレー中、一歩後ろに下がっただけで切れてしまったというのです。
「アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐもの。走る、跳ぶなどの動作ではバネのような役割を果たしています。丈夫にできているものですが、断裂が起きることがあります。特に起こりやすいスポーツは、剣道やバスケットボールが挙げられます。ただアキレス腱は、激しいスポーツだから切れる、というわけではありません。例えば、エレベーターを降りるとき、階段の上り下りでも切れてしまうことがあります」
お話をうかがったのは、大阪体育大学 体育学部・スポーツ科学研究科の石川昌紀先生。ヒトの身体運動能力を研究し、アスリートのサポートも行っている先生です。
加齢とともに、強さを失い切れやすい状態に。
下にあるグラフを見てください。これは、14年間にわたって行われた韓国のコホート研究のデータ。アキレス腱を断裂した人の割合を、性別と年齢層別に示しています。男性に比べると女性が少ないですが、ともに、30~40代で断裂が多くなっています。
アキレス腱断裂は
30〜40代に多い!
「アキレス腱は、何もしなければ、加齢とともに柔らかく、伸びやすくなっていきます。これは、負荷に対して弱くなる、つまり切れやすくなる、ということです」
アキレス腱の名前の由来はギリシャ神話に登場する英雄アキレスから。アキレスは生まれてすぐ、不死身になるべく冥界の川に身体を浸されますが、かかとに水がしみわたらなかったため、そこだけが唯一の弱点に。アキレスは、のちにかかとを矢で射られ命を失うことになります。そんなことから、アキレス腱は“強者の致命的な弱点”という意味で使われることがあります。歩く、走るなどあらゆる動作に不可欠なアキレス腱。傷めてしまうとしばらくスポーツを楽しめないばかりか、日常生活にも支障が出てしまいます。健康作りにはあまり注目されない存在ですが、快適な毎日を支えるとても大切な存在なのです。