実は、意外にズレている?脳と身体の仕組みとは
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実は、意外にズレている?脳と身体の仕組みとは
入力、処理・指令、出力を瞬時のうちに行う
思うように身体を動かせるようになるには?それを知るために、まずは感覚と脳、身体はどのように働いているのかから、先生にお聞きしました。
「私たちが日常的に行っている、コップをつかむという動作を例にご説明します。まず目で、コップまでの距離やコップの大きさといった情報を集め、脳に伝えています。そして、脳が処理をして、どのくらい手を伸ばせばいいか、どのくらいの力を出せばいいか、指をどう動かせばつかめるかなど、動作の指令を筋肉に出します。目だけでなく、感触や音など、手(皮膚)や耳からも情報を得ながら、手が指令通りに動くことでコップをつかむことができるのです」
感覚器を介して【入力】した情報を、脳が【処理】し、筋肉に【指令】を出して、【出力】という形で身体が動いているということ。
コップを
つかむまでの一連の動作
「コップをつかむ動作など、毎日行う動作で、失敗することはあまりないと思います。それは過去にやってきた経験をもとにした“脳内モデル”ができているからです。そのコップをどれくらいの力で持ち上げればいいか、すでにできあがっている脳内モデルによって予測をしていますから、2リットルのペットボトルを持ち上げるような力を出すことなく、素早く正確にコップを持ち上げられるのです。身体を動かすために、その脳内モデルも利用しながら入力、処理、出力までを行っています」
身体を思うように動かせないのは、日常的に繰り返し行っていない動作。それは脳内モデルが古くなっている可能性があるからだそう。
「久しぶりの運動などは顕著です。先ほどお話ししたリレーでの転倒は、感覚器を上手く使えていないこともひとつの理由ですが、もうひとつ、脳内モデルと実際の身体の状態がズレている、ということもあります。最後にリレーを走ったのが高校生のときだとすると、脳内モデルはそのときのまま止まっていると言えます。身体の大きさはその頃とまったく違うのに、高校生のときの古い脳内モデルによって筋肉に指令が出されるため、身体を上手く動かせず足がもつれる、といったことが起こるのです」
毎日の行動でも違う環境ではズレが起こる
意外なことに、毎日ジムで走っている人でもリレーが久しぶりだと転倒することがあります。これも、脳内モデルと実際の身体のズレなのだそうです。
「室内のランニングマシンで走る脳内モデルでは、風が吹き、カーブがあり、砂もある地面の上を走るのに対応しづらいためです。屋外のトラックで上手く走るには、変わっていく景色を見たり、風の音を聞いたり、地面の状態をとらえるなど、さまざまな感覚を刺激して脳内モデルをアップデートする必要があります。本来、脳は実際の身体とのズレを修正していく機能があります。
脳は身体との
ズレを修正する
その機能を活かすにはさまざまな身体の感覚を使って、新しい情報をどんどん脳に伝えること。そうして身体と脳をフィットさせれば“できなくなった”を減らすことができるのです」