健康に役立つものを作る“腸内細菌”を働かせるには
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健康に役立つものを作る“腸内細菌”を働かせるには
長寿を叶えるのは実は腸内細菌!?
長寿を叶えるのは実は腸内細菌!?腸活を実践している人が摂っているのは、ヨーグルトなどの発酵食品が多いようです。ビフィズス菌や乳酸菌など、いわゆる“善玉菌”と言われるよい働きをする菌を腸に届け、腸内フローラのバランスを整えるという考え方です。ただ、ヨーグルトなどから摂った菌は、腸内に定着しないため、毎日摂り続ける必要があります。
よい働きをする菌を摂取することに加えて、腸活としてやるべきは、自分の身体に存在している腸内細菌を働かせること、です。
「腸内細菌は、私たちが食べたものを餌にして、健康に役立つものを作ってくれています。腸内細菌の餌のひとつが食物繊維。食物繊維は、小腸で吸収されることなく大腸に届きます。それを大腸にいる腸内細菌が餌にしているわけです。腸内細菌が食物繊維をパクパクと食べて、さまざまな物質を作っていると言えばイメージしやすいかもしれません」
食物繊維を餌に、腸内細菌が作るのは、ビタミンや短鎖脂肪酸など身体にいい効果をもたらすもの。人間が身体で作れないものまで作っています。
「餌となるのは食物繊維のほか胆汁酸もあります。胆汁酸とは肝臓で作られる物質で、それを餌にして私たちの健康に役立つものを作っているのです。最近、100歳を超える長寿者には、腸内細菌が胆汁酸を餌にして作る、ある新しい物質が多くあることがわかりました。その新しい物質は腸の中にいる悪い菌を殺す作用があると考えられ、それが長寿の理由なのではないかと考えられています」
腸内フローラは
多様性が大事!
腸内細菌には大きくわけて善玉菌、悪玉菌、日和見(ひよりみ)菌が存在。以前はその数のバランスが重要とされていましたが、単純に菌の良し悪しを判断できないことがわかり、多様性が重要だと考えられるようになりました。さまざまな菌がバランスよく存在していることが、理想の腸内フローラ。健康な人の腸内フローラは多様性が高いことがわかっています。
その地で生きるために腸内細菌の力が不可欠
どんな腸内細菌がいるのかは、住む国や地域などによっても違うもの。その土地で食べられるものなど、生きる環境によって変わるからだと考えられています。
「例えば、コアラ。彼らがユーカリの葉だけを食べて生きていけるのは、腸内細菌の力です。ユーカリの葉は栄養が低い上、シアン化合物などの有毒物質が含まれています。コアラには、その毒の分解酵素を作る腸内細菌がいるのです。コアラの先祖は、過酷な生存競争にさらされ、安全な場所としてユーカリの木の上を選び、その葉を餌としました。そこからの進化の過程で、この腸内細菌を獲得したのでしょう」
日本人にも特有の腸内細菌がいるのだそうです。
「生海苔を分解する酵素を作る腸内細菌です。これは日本人にしか見られないもの。古くから海藻類を食べる習慣があったから定着したのでしょう。このように、生きる環境に適応するために必要な菌を、腸内に定着させていくと考えられています。腸内細菌とは共生関係にあります。私たちは、生きるために欠かせない物質を作ってくれる腸内細菌の力を借りて、健康を維持しているのだと言えます」