インフルエンザなどの感染症を予防するために重要なワクチン接種。その仕組みをご存知ですか?実はビタミンB1が不足していると、ワクチンの効果が期待できなくなるかもしれません。
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ワクチンは、免疫細胞が抗体を作るための学習。
ワクチン接種の大きな目的は、免疫細胞に“敵との戦い方”を学習してもらうため、だと言えます。ワクチンは、ウイルスや細菌などから毒性をなくすなどしたものですが、体内に入ると、免疫細胞はそれを「敵だ」と認識。最善の戦い方や、“敵の顔”を覚えるなど、さまざまな学習をしていきます。
「その学習によって作られるのが【抗体】です。抗体は、細胞が感染しないようにブロックする、免疫システムのかなめ(下の図を参照)。ワクチン接種で重要なのは、この、病原体をブロックすることができる抗体です」
ワクチンは、いわば、本番の戦いに向けた予行演習のようなもの。ワクチンを接種しておけば、実際にウイルスが身体に入ってきたときにも、あらかじめ学習した戦い方でB細胞が抗体を作り出し、細胞への感染を防ぐことができるわけです。
【抗体】が、ウイルスをブロック
ウイルスにおいては、ヒトの細胞が持つ受容体に結合し、細胞に侵入することが感染の始まり。抗体は、受容体に結合するのをブロックすることで、ウイルスの感染を防いでいます。
“学習の場”の弱体化で免疫力が低下。
「ワクチンを接種したのに、インフルエンザに罹った」という場合は、抗体が作られなかった可能性があります。
「免疫機能が低下する原因ひとつが、ビタミンB1の不足。例えば、免疫細胞の学習の場であり、抗体が作られる場であるパイエル板という組織が、ビタミンB1の不足によって小さくなることがわかっています。パイエル板は、人間の腸に数百個あると言われていて、B細胞、T細胞をはじめとする免疫細胞がここに多く存在しています。食べものなどに混ざって腸に流れてきた異物を、まずパイエル板に取り込み、B細胞やT細胞をはじめとする免疫細胞が敵との戦い方を学習するわけです。ビタミンB1が足りないと、免疫細胞の数が減り、学習の場であるパイエル板も小さくなります。その結果、病原体やワクチンに対する抗体が、作られにくくなってしまうのです(下の図を参照)」
災害時の避難所で、感染症が広まりやすくなるのは、ビタミンB1を含む栄養が不足することも原因のひとつではないか、と考えられています。
「避難所にいると“密な状態”になるなど、衛生状態がよくないことが原因だと言われていますが、栄養不足によって免疫力が下がっているとも考えられます。途上国のように栄養不足な環境だと、とてもいいワクチンであっても、十分な効果を発揮できないことが予想されます。まずは十分な栄養を摂って免疫を整えることが必要だと言えます」
ビタミンB1をきちんと摂ることができれば、パイエル板が小さくなることを防ぎ、免疫のかなめである抗体が作られにくい状態になるのを防ぐことができます。
「免疫で重要なのは、B細胞が作る抗体。そしてもうひとつ、感染した場合に、強力な攻撃力を発揮するT細胞の働きも大切です。ビタミンB1は、抗体のためにも、このT細胞の働きのためにも必要なのです」
パイエル板での免疫細胞の働き
- ウイルスや細菌をとり込み、チェック
- 樹状細胞がT細胞へ異物の情報を伝える
- T細胞がB細胞に「抗体を作れ」と指令を送る
- B細胞が抗体を作る。→抗体は全身へ