運動したい、と思っても重い腰が上がらない……とか、運動しても、息が上がって続かない……とか。わかっていても、なかなかできない、と感じていませんか?それは、やる気や年齢だけの問題ではないようです。あなたに足りていないのは“鉄”なのかもしれません。
やる気・年齢のせいじゃない?足りないのは、鉄なんです!
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やる気・年齢のせいじゃない?足りないのは、鉄なんです!
鉄不足によって起こる不調は、実にさまざま。
これから筋トレやストレッチ、運動を始めよう! と思っても「なんだかだるくて動き出せない」とか「身体を動かすと、すぐ疲れてしまう」と、感じていませんか? やる気が起きないのは、怠け心のせいだと自分を責めたり、疲れやすいのは年齢のせいだ、と諦めたりしているかもしれませんが、そうとは言い切れません。“わかってはいるけど、行動に移せない”のは、もしかしたら鉄不足が原因かもしれません。
「鉄不足によって起こるのは貧血。鉄欠乏性貧血になっていると考えられます。50歳未満の日本の女性の5人にひとりは貧血があり、そのうち4分の1は重度の貧血にかかっています」
今回お話をうかがったのは『ナビタスクリニック新宿』の院長、濱木珠恵先生。ご自身も貧血の経験があり、それを活かして女性の健康をサポートしています。
「貧血は、目まいや立ちくらみが起こるものだと思われているかもしれませんが、それだけではありません。貧血によって起こる不調は実にさまざま。だるさや、疲れやすさも貧血が原因だと言えます。階段を上るだけで息切れする、寝ても疲れがとれない、寝つきが悪い、眠りが浅いなどもそう。肌荒れ、口内炎、爪が割れやすいなども貧血が関係しているのです。貧血であっても『バタンと倒れることもないし』と放置している人がいますが、それは誤解。目の前が真っ暗になり、立っていられず倒れる、というのは起立性低血圧。貧血ではなく血圧に関係しています。貧血を正しく理解することが、不調改善への第一歩です」
酸素を運ぶヘモグロビン。その材料になるのが鉄。
貧血は、赤血球数の減少、あるいは赤血球に含まれる血色素・ヘモグロビンの量の低下によって起こります。ヘモグロビンは、肺で受け取った酸素を全身の組織に運ぶ、重要な働きがあります。
「ヘモグロビンの材料になるのが、ミネラルのひとつである鉄。鉄が不足するとヘモグロビンがうまく作られなくなりますから、身体の組織へ酸素が行きわたらず酸欠状態になります。これが鉄欠乏性貧血です。酸欠は非常にまずい状態ですから、少しでも多くの酸素を体内に送ろうと、心臓や肺が無理をして激しく動きます。それで、息切れや疲れが現れるのです。赤血球を血液中を走るトラックに例えるなら、ヘモグロビンは荷台。トラックの台数が少ない・荷台が小さいと、十分な酸素を運ぶことができません」
食事の偏りが多い女性。月経による出血も原因に。
鉄不足は、圧倒的に女性に多いのだそうです。
「鉄は、尿や便、汗などとともに体外に出ていきますが、これはきちんと食事をしていれば、補える量。女性に鉄不足が多いのは、食が細かったり、体重が増えるのを気にして、あまり食べないようにしている人が多いからです。ヘルシーでないからと肉を控える人も多い。肉は鉄を多く含んでいますから、控えることで、効率よく摂取できる食品の選択肢がひとつ減ることになります。食事の問題に加えて、月経の出血によって大量に失われることも大きな原因。月経時に失われる鉄は、1日平均1・5〜2㎎。ひと月に男性の約2倍失われると言われています。月経のある成人女性は、1日10・5~11・0㎎ が推奨摂取量とされていますが(下グラフ参照)、一般的な食事から摂れているのは7㎎くらいだと言われています。鉄の収支のバランスがとても悪いのです」
パフォーマンスが落ちたら、
スポーツ貧血の可能性も?
運動部活動に励む成長期の子どもが、急に練習がつらくなったり、記録が伸びなくなることがあります。それは“スポーツ貧血”の可能性があります。激しい運動をすることで、汗などから鉄が出ていく上、足の裏にかかる衝撃で赤血球が壊れやすくなります(足の裏に負担がかかりやすいスポーツに、バスケットボール、バレーボール、陸上の長距離走、剣道などが挙げられます)。それで貧血が起こるのです。加えて成長期は、筋肉を増やすなど身体を作るために鉄が使われ、さらに鉄が不足しやすくなります。下の「鉄の食事摂取推奨量」では、成長期に当たる10 ~14歳が、最も多くの鉄が必要とされています。鉄が豊富な食事で、がんばる子どものサポートを!