“紫外線は肌の敵”と、一年中、日焼け止めをしっかり塗って、日光に当たるのをできるだけ避けている人が多い現代。そんな美肌のためにしている紫外線対策が、実は、身体に不可欠な栄養素『ビタミンD』の不足を引き起こす恐れがあります。そこで、身体のために知っておきたいビタミンDの働きや摂り方を、長年ビタミンDを研究されている津川尚子先生に教えていただきました。
今、多くの日本人にビタミンDが不足している!?
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今、多くの日本人にビタミンDが不足している!?
インフルエンザや風邪の予防に役立つと、近ごろ注目されている『ビタミンD』。食事から摂ることもできますが、別名“太陽のビタミン”とも呼ばれ、紫外線を浴びることによって体内でも生成できるビタミンです。ビタミンDは生きていくうえで欠かせない栄養素ですが、今、多くの日本人が不足していると考えられています。その理由のひとつが、生活スタイルの変化。現代人は室内で過ごすことが多く、また紫外線がもたらす肌への影響が広く周知され、日光を浴びる時間が少なくなりました。今やスキンケアで紫外線対策をするのは常識。日光を浴びていても、日焼け止めで紫外線をカットしているとビタミンDを合成することは難しく、不足の一因となっています。このような日光を浴びる時間の変化もふまえて、厚生労働省が策定する「日本の食事摂取基準(2020年版)」では、食事から摂るビタミンD摂取量の引き上げが検討されています。
ビタミンD不足かも!?当てはまる方は要注意!
- 自宅や会社など、屋内で過ごす時間が長い
- 一年中ほぼ毎日、日焼け止めを使用している
- 運動はスポーツジムなどの屋内が多い
- 魚をほとんど食べない(週0〜1回程度)
日光だけじゃない!食事でもビタミンDは不足気味…
〈日本人女性の1日の食事による年齢別ビタミンD摂取量(1日当たり、中央値)〉
日本人女性の1日の食事による
年齢別ビタミンD摂取量(1日当たり、中央値)
参考文献:厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成29年)」
厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成29年)」によると、多くの女性は食事によるビタミンD摂取量が、目安量(5.5μg)を大きく下回っていると考えられます。さらに、妊娠中・授乳中の女性も多くの方がビタミンD不足というデータがあり、その影響は子どもにも及ぶ可能性が。
5年間で3倍以上に!子どもにも広がるビタミンD不足
子どものビタミンD不足は発育に悪影響を及ぼすだけでなく、骨が軟化し変形する「くる病」の原因にもなります。2009年から2014年の5年間で、ビタミンD欠乏症と診断された0~15歳の子どもの割合は、10万人あたり3.88人から12.4人と、なんと3倍以上に増加(参考文献:Mitsuko Itoh et al,: Global Pediatric Health 4,1-5 〈2017〉)。その要因は、外で遊ぶことが少なくなったり、食べるものが変わったりなど、現代人の生活スタイルにあると考えられます。お母さんのお腹の中にいるときから、子どものビタミンD不足が始まっていることも。お腹の中の赤ちゃんは母親から栄養を受け取っているため、妊娠中のビタミンD不足は赤ちゃんのビタミンD不足につながるのです。出産後も同様に、お母さんのビタミンDが不足していると、母乳に含まれるビタミンDも不足しがちになります。不足しないために大切なことは、室内でのゲームあそびではなく、外遊びなどで適度に日光を浴びることと、しっかり食事から摂ること。4ページの例を参考に、ビタミンDが豊富な食材を日々の食事に取り入れてみてください。
ビタミンD不足が引き起こす不調
母親のビタミンD不足による
子どもへの影響