冬の魚は、たっぷりと脂が乗り、一年で最もおいしくなるとされています。脂がのるということは、EPAやDHAが多く摂れるということ。冬の魚はおいしい上に、健康にも役立つのです。また、EPA、DHAのほかにも、魚の持つ栄養が健康作りに役立つこともわかってきました。「食べないなんてもったいない!」そう思えるような、魚の医力をお伝えします。
魚の医力は、まずEPA&DHA。
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魚の医力は、まずEPA&DHA。
医薬品にも使われるEPA、DHAの力。
「魚は身体にいい」。本誌読者の皆さんなら、それはもうご存知のことでしょう。でも一方で、なかなか食べる機会がない、と感じていませんか?
「昔と違って今はいろんな食べ物がありますからね。でも、魚を食べる機会が少ないのはもったいないこと。なぜなら、魚の健康効果は科学的にしっかりと証明されているからです。私は魚が持つその力を、威力ならぬ“医力”と呼んでいるんですよ」
お話をうかがったのは、魚介に関する幅広い知識を持つ、国際学院埼玉短期大学の鈴木たね子先生。「おさかなマイスター」を育成する講師でもあります。
まず魚の医力として挙げられるのは、魚の脂に含まれるEPAとDHA。ヒトが身体で作ることができないオメガ3系の脂肪酸です。
「健康効果に関しては、EPA、DHAそれぞれ1000を超える学術論文があります。最も古いものは、1960年代の調査(下のグラフ参照)。
デンマーク人と、イヌイットの食事を比較。脂肪の摂取量は同等だが、牛肉や豚肉などを多く摂る白人に対し、魚やアザラシを多く摂るイヌイットは心疾患による死亡率が低いことがわかった。そのことから魚やアザラシの脂に含まれるEPAに、心疾患の予防効果があると考えられた。参考文献:Scand J Clin Lab Invest42:1982
デンマークに住む白人と、デンマーク領グリーンランドの先住民族・イヌイットのそれぞれの食事と心疾患による死亡率の関係を調べたものです。デンマーク人は心疾患での死亡率がとても高いのですが、イヌイットは反対にとても低い。理由は摂っている脂肪の違いです。量は同等なのですが、イヌイットが多く摂っているのは、魚やアザラシの脂肪。そこに含まれるEPAが心疾患予防につながるのではないかと考えられ、それを機にEPAが注目されるようになりました」
EPAはその後、血栓を防ぐ働きのほか、中性脂肪やコレステロール低下作用が発見されています。一方のDHAは、働きはEPAとほぼ同じですが、EPAにはない働きもあります。脳や角膜に存在することから脳の活性化に関係すると考えられ、認知症の予防や眼機能の発達に役立つとされています。EPA、DHAはサプリメントがよく知られていますが、高脂血症治療薬など医薬品にも使われています。
「魚を食べる回数と、病気の罹患率を調べた疫学調査は、日本にも海外にも多くあります。それらの調査では、毎日食べる人とまったく食べない人では死亡率に大きな差が見られます。魚をよく食べる人は長生きなのです」
魚も肉も毎日食べるという鈴木先生は、2019年に93歳に!まさに、魚が健康にいいという証明だと言えそうです。冬は魚に脂がのり、もっともおいしくなる季節。その脂こそ、EPA、DHAの宝庫。魚の医力に触れて、
これから魚食を習慣にしませんか?