溜め込まないためにいい感情を増やす!
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溜め込まないためにいい感情を増やす!
怒りや悲しみなどのネガティブな感情やさまざまなストレス。病気は、それらを発散できないことが理由のひとつです。溜め込まず、解き放つために、笑うというポジティブな感情を増やせば、ココロと身体の元気も増やせます。
健康づくりに役立つふたつの効果。
さまざまな病気の改善に大きな力を発揮する笑い。身体を変えるその力の秘密は、何なのでしょう?
「大きくふたつあると考えています。ひとつは運動効果。笑うことで腹筋が動かされ、自然に腹式呼吸になることから有酸素運動になると考えられます。15分笑うと、20~40キロカロリー消費することになりますから、15分掃除をするのと同じくらいの運動量(体重50キロの人で33キロカロリー消費)になります」
笑うだけで運動になるとは、実に嬉しいこと。そしてふたつ目の理由は、健康づくりにさらに大きな意味を持つのだそうです。
「ふたつ目はストレス解消効果です。笑ったあとには、コルチゾールなどのストレスホルモンの量が減少することが、さまざまな研究から明らかになっているのです。コルチゾールが増えると、肥満や高血圧、認知症のリスクが高まります。加えて、インスリンの働きを妨げますから糖尿病にもなりやすい。私たちが得た【笑わない人から糖尿病を発症する】という研究結果は、それが大きく関係していると言えます」
笑いが本当に幸福を運んでくる。そう感じられるアメリカの調査があります。大学生の卒業アルバムを使い、笑っている人とそうでない人の30年後を調べると、笑っている人のほうが社会的な成功を収めていることが多かったのだそうです。また、プロ野球選手のトレーディングカードを使って、笑っている選手とそうでない選手の平均寿命を比較すると、前者が79.9歳、後者が72.9歳という結果に。笑っているとお金持ちで長生きできると言えそうです。
ストレスを介した病気の予防や改善に役立つ笑い。実に気軽で楽しい健康法ですが、残念なことに笑いは年齢を重ねるごとに減る傾向にあるのだそうです。
「おもしろいと感じるものが減ること、そして人と会う・会話をする回数が減ることも理由だと考えられます。日本では、女性よりも男性の方が笑う頻度が低いという調査結果もあります。女性はおしゃべり好きな人が多いようですが、男性はそれが苦手なようです。男性の方が笑いの頻度が少ないのはコミュニケーションの場が少ないからだとも言えます」
得るのは簡単!笑いの健康効果。
ただ、年齢を重ねても笑いの健康効果を得ることは難しくありません。なんと、作り笑いでも同じ効果があるのだそうです。
「インド人医師が作った“笑いヨガ”という健康法があります。これは笑いの体操とヨガの呼吸法を組み合わせたもので、ユーモアやコミカルな要素は一切ありませんが、私たちの研究チームで行った、笑いヨガと落語鑑賞のストレス解消効果の比較実験では、どちらも同様のよい結果が見られました(下のグラフ参照)」
17人を対象に、笑いヨガ実践と、落語鑑賞(各1時間)の前後で唾液中のコルチゾールを測定。結果、どちらも同様に数値が下がり、作った笑いでもストレス減少の効果があるとの期待ができます。
ストレスやネガティブな感情は健康を害するもの。笑いを増やすことが健康で幸福な未来を作ると先生は話します。
「ネガティブな感情は、溜め込むのがよくないのです。ストレスを訴える患者に、『溜め込まず外に出すように』と伝えると『出せないから溜まるんです』と返ってきました。発散は難しいことだと気づき、それならば、と〝いい感情を増やす〟ことを勧めるようにしたのです。笑いは周りの人へもうつります。自分だけでなく、家族や仲間のことも健康に幸せにすることができるのです」