近視の進行の多くは、伸び続けることが理由!
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近視の進行の多くは、“伸び続ける”ことが理由!
正視、遠視、そして近視。どうして見え方に違いが出るのでしょうか?“近視の本当”を理解するために、まずは近視の仕組みを知りましょう。
数値だけではない!近視はどんな状態?
視力がいいかどうか? アルファベットのCに似た記号・ランドルト環を使った検査は、きっと誰もが受けたことがあるはず。2.0あったとか、1.0以下だったとか、小学生のとき、友だちとその数値を報告しあったという人もいるでしょう。近視とは、その数値が低いことだと思われているかもしれませんが、そうではありません。では、どのような状態が近視なのでしょうか? その前にまず、目がものを見る仕組みを説明しましょう。
目は物体の色や形を、光の情報としてキャッチしています。そうして目がものをとらえる仕組みは、よくフィルムカメラの構造に例えられます。目に入った光は、レンズにあたる角膜と水晶体で屈折してピントを合わせ、フィルムにあたる網膜で像を結んでいるのです(下の図を参照)。
「ピントが合い、網膜で像を結ぶことができるのが正視、網膜より手前にピントがあってしまうのが近視です。網膜の手前で像を結んでしまいます。それによって遠くのものにピントが合わないのです(下の図を参照)」
網膜の手前で像が結ばれる原因は、ふたつ考えられるのだそうです。
「ひとつは、角膜や水晶体によるもの。それらの屈折力が強くなり過ぎることで、遠くからの光を網膜の手前で像として結んでしまいます。そしてもうひとつは目の長さによるものです。角膜の頂点から網膜までを眼軸といい、それが伸びると網膜までの距離も伸びるため、像が手前で結ばれてしまいます。そのふたつのうち、特に現在問題になっているのは、眼の長さ=眼軸長が伸び続けること。最近の研究で、子どもの近視のほとんどが、眼軸長が伸び続けることで発症しているとわかりました」
大人になっても伸び続けることが問題。
眼軸長が伸びること自体は、正常な成長のプロセス。ヒトは遠視の状態で生まれ、成長とともに眼球も大きくなって、網膜で像を結べる目に育っていきます。生まれたときの眼軸長は約15〜17ミリ。大人になると平均23〜24ミリまで伸びます。この過程で、ちょうどいいところで止まらず、伸び続けてしまうことで近視を発症することがほとんどです。
「眼軸長とは身長のようなもの。小学生から高校生で身長が伸びるように、眼軸長も伸びていきます。成長段階にある子どもが近視を発症しやすいのはそのためです」
子どもだけでなく、大人になってから近視になる人が増えているのも、無視できない事実です。
「身体の成長が止まれば、眼軸長の伸展も止まるはずなのです。ですから、かつては大人になってからの近視の進行はないとされていたのですが、最近、進行のみならず、発症してしまう人までいます。大人になってからも眼軸長が伸び続けて、強度近視になることが深刻な問題なのです」
大人になっても眼軸長が伸び続ける理由。それは、デジタル機器の使用だけではない、“現代人の生活スタイル”が関係していることがわかってきました。徐々に、近視を防ぐための手がかりが明らかになってきたようです。
かつて人間は、近視では生き残れなかった!
太古の昔、狩猟時代の人間は、みな遠視だったと考えられています。見つけた獲物を捕らえ、すばやく逃げるために危険な敵を察知することが生きるための条件。そのため、遠くが見えることが必要だったのです。狩猟時代には近視の人間は淘汰され、結果として遠視の人が生き残ったと考えられています。
その後、農耕時代になると遠くを見る必要がなくなり、ヒトの目も変化。そして近視はやがて増加していきます。近視は、生活環境の変化に合わせた、“行き過ぎた進化”とも言えそうです。