ご飯やパスタなど、糖質を含むものを控える糖質制限。ダイエットに効果的であるとして、数年前からブームとなっています。そんなことから、どこか“糖質は摂らないほうがいい”ととらえられているようですが、決してそうではありません。糖質は三大栄養素のひとつで、生命維持になくてはならないもの。ただ、つき合い方によっては身体に悪影響を与えるのも事実。どのようにつき合えばいいのか。それを考えるためにはまず糖質を知ることから始めましょう。
つき合い方、それでいいの?甘いだけじゃない、 糖質。
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富田益臣 先生
とみた ますおみ
下北沢病院 糖尿病センター センター長
東京慈恵会医科大学卒業。その後、東京都済生会中央病院 糖尿病・内分泌内科に勤務。特に糖尿病・生活習慣病に起因する足の治療に従事し、現在に至る
石田千香子 先生
いしだ ちかこ
下北沢病院 栄養科 科長
東京農業大学卒業。1988年より、東京都済生会中央病院栄養管理科に勤務。2000年、日本糖尿病指導士の認定を受ける。2016年より現職
つき合い方、それでいいの?甘いだけじゃない、 糖質。
糖質制限を考える前に知っておくべきこと。
「糖質制限はいいの? 悪いの?」。そんなご質問が編集部に多く寄せられています。糖質制限とは、その名の通り糖質を含む食べものを控えること。普段の食事からご飯やパン、麺など主食を控えるだけで痩せられると、近年注目されていますが、その危険性を訴えるドクターもいます。糖質制限はいいのか悪いのか。その答えは現状、“いい面もあるが、心配な面もある”としか言えないようです。ただ、それで、がっかりしないでほしいのです。なぜなら、体質や生活環境は人それぞれ違うため、糖質制限がすべての人に合うとは言えないからです。糖質とのつき合い方は一人ひとり違う。それをまず、考えることが大切なのです。この特集では、下北沢病院・糖尿病内科の富田益臣先生と、管理栄養士の石田千香子先生にお話を伺いました。
「糖質は肥満の原因だと思われているかもしれませんが、決して不要なものではありません。私たちが生きるために不可欠な三大栄養素のひとつです。糖質、脂質、タンパク質はそれぞれ働きが異なり、脂質は主に細胞膜を作り、タンパク質は身体の主な構成成分になります。糖質はというと、主に脳や赤血球、筋肉、神経系のエネルギー源になります。脳と身体を働かせるための必須の栄養素。いわば自動車を走らせるための、ガソリンのようなものです」(富田先生)
糖質の摂取量は減少。しかし、糖尿病は増加。
「アマニ油」「えごま油」美と健康によい油の摂り方と控え方でお伝えした通り、脂質は過剰摂取が問題。でも糖質は、逆に摂取が減少しているのだそうです。
「厚生労働省発表の国民健康・栄養調査によると、2003年の摂取平均は273.7g。2013年には260.8gと、年々少なくなっています。問題なのは、摂取した糖質を使い切れていないことです。便利な社会になって運動量が激減していますから、エネルギーが使えず余ってしまっているのです」(富田先生)
糖質を使い切れないことでリスクが高まるのは、肥満。余った糖は脂肪になってしまいます。
「肥満が原因で、糖尿病のリスクが高まることも問題。糖質の摂取量は減少しても、糖尿病は年々増加しています。糖質だけが原因とは言えませんが、大きく関係しているのは事実です」(富田先生)
糖質の摂り過ぎに注意する人が増えているものの、中には糖質が多く含まれている食品を知らずに摂っている人も多いそう。
「甘いものや主食だけでなく、野菜や果物にも糖質が含まれていることを知らない人は多い。健康のためにと、たっぷり摂ると糖質を過剰に摂取してしまうことになります」(石田先生)
糖質制限のよしあしよりも先に、糖質とは何なのか、どうつき合うのか。それを考えることが、真の健康につながるのです。