水溶性・不溶性どちらも必要。それはなぜ?
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水溶性・不溶性どちらも必要。それはなぜ?
それぞれの役割がありどちらも大事。
繊維質の野菜だけでなく、あらゆるものに含まれるという食物繊維(図1参照)。
食物繊維は水に溶けるか溶けないかで、水溶性と不溶性にわけられています。例えば、昆布をきざんだときのねばねばするあの質感。あれはアルギン酸という食物繊維によるものです。そのほかにもジャムのぷるぷるした部分であるペクチンや、こんにゃく芋の粘り成分であるグルコマンナンなどが水溶性食物繊維に分類されます。
一方、不溶性は、米などの穀物や、ごぼうやセロリといった繊維質の野菜に含まれるセルロースなど、どれも歯ごたえがある固いものです。
この水溶性、不溶性、どちらかだけ摂ればいいというものではなく、両方が大切なのだそう。それはそれぞれ違った役割を持っているからです(図2を参照)。
「水溶性は腸内細菌の餌になり、腸内の環境を整えてくれる効果があることがわかってきています。 そのほか、 腸内の糖質や脂質をからめ取ってくれるので、食後の血糖値上昇を抑え、糖尿病や、動脈硬化の予防に効果的です」ただ食べるだけで病気予防になるなんて!嬉しい驚きです。
「またお腹にとどまる時間が長く、腹持ちがいいので、食べ過ぎ防止の効果があります」ダイエット食品に多く使われるのは、そのためなんですね。
一方の不溶性はひとことで言うと腸内のお掃除役。「腸内で水分を含んで大きく膨らむことで腸を刺激し、便を出しやすくします。これにより便に含まれる発がん性のある有害物質も排出してくれる効果があります。さらに水を含んで膨らむことで便のかさ増しになり、これが便通を促すんです」
将来の自分のために……食物繊維で病気予防。
それぞれの役割を見ていくと、腸内環境を整えたいから腸内細菌の餌になる水溶性を、便秘を改善したいから不溶性を、と思いがちですが、ちょっと待って。両方を摂るべき理由がちゃんとあるのです。
例えば大腸がんの予防を例にとってみましょう。「便に含まれる発がん性物質が腸の粘膜に触れる時間が長いと、大腸がんのリスクは高まります。しかし不溶性食物繊維で排便を促し、速やかに体外に排出することで、がんのリスクの軽減ができます。さらに腸内細菌の餌になる水溶性食物繊維で腸内環境を整えると、発がん性物質を作る菌を減少させることができるので、これもがんのリスクの軽減につながると言えます」
それぞれの食物繊維の役割があって、病気を予防することができるのです。今の元気がずっと続くように、水溶性・不溶性、ダブルの力を活用することが大切なんですね。
きちんと食べれば自然に摂れる。
それでは水溶性と不溶性は、何からどうやって摂ればいいのでしょう?一般的に1:2が理想だと言われていますが、これはあまり難しく考えなくてもよさそうです。というのも、ほとんどの食べ物には、多い少ないの差はあっても水溶性・不溶性のどちらも含まれているからです。いろいろなものを偏らずに食べれば、やはり食物繊維は自然に摂れると言えます。