身体に良い“油”の摂り方 | DHA・EPA・オメガ３（4/5）

オメガ3を断ってはいけない理由は何なのでしょうか。それを知ることが、油とのつきあい方のもっとも重要なこと。

不足すると、どんどん脳機能が低下していく！

オメガ3を断ってはいけないこと、油脂は量を考えて摂ること、中でもオメガ6を控えること。油とのつき合い方の大切な3つのことをお伝えしました。では、どうしてオメガ3を断ってはいけないのでしょうか？　実は、それこそが、油とのつき合い方を知る上で、もっとも重要なことなのです。

「魚を食べると頭がよくなる、という話を聞いたことはありませんか？魚には、脳の栄養素とも言われる油、DHAが含まれていることからそう言われているのですが、実は正しくありません。摂ることでプラスに働くのではなく、不足で上手く機能しなくなる。それが、さまざまな研究からわかりました」

DHAを含め、オメガ3系の油が認知症予防に期待できることを“何となく”知っている人も多いでしょう。認知症予防に有効と言われる理由は、オメガ3の重要な働きに関係しています。

「私たちの身体にある、約60兆個の細胞はすべて、油を材料に作られた細胞膜で覆われています。細胞膜は単なる間仕切りでなく、細胞内に物質をとり込んだり、細胞外へ出したりする役割を担っていて、細胞膜が柔らかければ、物質の出し入れがしやすく、細胞間での情報伝達がスムーズになる。オメガ3の一番大切な働きは、細胞膜を柔らかくすることなのです」

オメガ3の、細胞膜を柔らかくする働きが認知症予防になるということ。

「例えば、人間もひとりだといろいろなことを覚えられませんね。でも仲間と情報交換ができれば、正しい情報を伝えていくことができます。それと同じように、脳細胞もネットワークを作って情報を伝達・保存しています。しかし、細胞膜が硬くなると、情報の伝達がしづらくなる。それが認知症の原因のひとつだと考えられています」

細胞膜の質を決めるのは、それを作る油の質。オメガ3が不足すると、柔軟性は低下します。脳機能は加齢とともに低下していくもの。オメガ3が欠乏していると、脳機能の低下がもっと早く訪れるということなのです。

魚の摂取量低下で、さまざまな問題が。

オメガ3の不足は、やはり魚の摂取量の減少が大きな原因。かつては魚を多く食べていた日本人も、肉を食べる量が増えてきています（下のグラフ①参照）。

「魚を食べるほど、うつリスクが少ない、という疫学調査の結果があります（下のグラフ②参照）。発表のあった1998年、魚の摂取量が世界トップクラスだった日本は、うつの発症率がきわめて少なかったんです」

魚を食べないと悪くなる。それがわかる例はほかにもあります。

「年々増加している、産後うつにも関係しています。胎児の成長にもDHAが必要なため、母体にあるDHAが消費されます。母体と胎児に必要な分を摂れるだけの魚を食べていればいいのですが、ファストフードを好んで食べるなど、最近の若い妊婦の食生活は乱れていることが多い。それによって、母体のDHAが切り崩され、脳の機能が低下して産後うつにつながってしまうのです」

先生の実験では、DHAが欠乏したマウスの30～40％が、出産後に子どもを噛み殺したり、育児放棄することもわかったそうです。

「DHAが欠乏すると母性が発動しないのではないかと考えられます。細胞膜が硬くなることで、“愛情ホルモン”と呼ばれるオキシトシンの、細胞内への取り込みや、分泌が滞っているのかもしれません」

オメガ3が不足すると脳機能が低下する。それを知っておくことが、油とのつき合い方を考える上でもっとも大切。特に、DHA、EPAを直接摂れる魚が、脳機能の低下を防ぐために欠かせないことも忘れてはいけません。