土踏まずは、失われやすいもの。他人事ではない、扁平足。
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土踏まずは、失われやすいもの。他人事ではない、扁平足。
扁平足は、加齢もひとつの原因に。
美と健康を考える上で、とても重要な土踏まず。すでに扁平足を自覚している人は、これ以上不調を進行させない対策を立てやすくなりますが、「土踏まずがあるから安心」と思っている人は要注意。足裏はとても繊細な部分。今は土踏まずがあっても、いずれなくなって扁平足になってしまう可能性があるのです。
なぜ、土踏まずがなくなってしまうのでしょうか?
「その理由を説明する前に、少し足の構造についてお話しましょう。足裏には、親指のつけ根と小指のつけ根を結ぶ“横アーチ”、足の外側を結ぶ“外側縦アーチ”、そして親指のつけ根からかかとを結ぶ“内側縦アーチ”という3つのアーチがあります(図1参照)。これら3つが機能して初めて、足裏の小さな面積で、大きな身体を支えられるのです。
私たちが土踏まずと呼んでいるのは、この3つのアーチの中で一番大きい内側縦アーチのこと。これを持ち上げている“後脛骨筋腱”が衰えることで、内側縦アーチが下がり、扁平足になってしまうのです。後脛骨筋腱は内くるぶし側から、足裏のほぼすべての骨につながっている腱。周囲に血管が少ないため、栄養が届きにくい繊細な部位です。そもそも衰えやすいものである上、偏った食事になどによるコレステロール値の上昇が重なると、血流が滞りさらに栄養不足が進んで、後脛骨筋腱の老化も進んでいきます」
扁平足は、正しく言えば“後脛骨筋腱機能不全”という症状。後脛骨筋腱の老化もひとつの原因なので、今はしっかりと土踏まずがあるという人でも、扁平足になる可能性は十分にあるということなのです。
大丈夫と思っている人の多くが“隠れ扁平足”!
扁平足は、“いずれなる可能性がある”だけでなく、“すでになっているのに気づいていない”こともあるのだそうです。
「それを“隠れ扁平足”と呼んでいます。偏平足ではないと思っている人のうち、多くが隠れ扁平足だと考えられているんです」
信じられないような話ですが、歩行にかかわる足底腱膜が知らない間に伸び、土踏まずがなくなっているのだそうです。
「足底腱膜もまた、とてもデリケートなもので、体重がかかるだけで伸びてしまいます。一日中立ち仕事をしている人などは特に、隠れ扁平足に気をつける必要があります」
夕方にはあなたも扁平足になる!?
長時間立ち続けていると、足底腱膜が伸びたままになって体重を分散できなくなり、アーチを支える骨の位置が低くなります。これが通称"隠れ扁平足"と言われる扁平足の一種。立ち仕事の人は特に気をつけて!
扁平足が原因で生活習慣病にも。
気づかないうちになっているものも含め、扁平足は理想的な歩行の障害になってしまいます。
「私たちの歩くという動きを作り出しているのは、足が地面に着地するときに衝撃を緩和・吸収する“トラスメカニズム”という働き(図2参照)と、地面を効率的にしっかり蹴り出す“ウインドラスメカニズム”という働き(図3参照)。このふたつが正しく機能することで、理想的な歩行を作り出しているのですが、扁平足になるとこれがうまく機能しなくなるんです」
扁平足が理想の歩行を妨げ、それが膝や腰の痛みになり、肥満などの生活習慣病にもつながっていきます。
「内くるぶしが痛い場合は、症状が深刻であると考えられますから、不調が広がらないうちに専門医の受診をおすすめします」
理想の歩行を作る、ふたつのメカニズム
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"着地する"機能(トラスメカニズム)
かかとが地面に着地する際に働く機構。足に体重がかかると、土踏まずを構成している三角形の底辺である足底腱膜がゴムのように伸び、上辺を支えるふたつの骨が沈んで柔らかい足裏になり、着地する衝撃を吸収しつつ、体重を分散。
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"蹴り出す"機能(ウインドラスメカニズム)
かかとが地面から離れる際に働く機構。かかとが離れ、親指が持ち上がる瞬間、足底腱膜が引っ張られて足のアーチがギュッとコンパクトに。足裏のアーチが高くなって、足裏がちょっと固くなり、地面を効率的にしっかり蹴ることができる。
元に戻りにくいものだから、予防に努めて。
扁平足は、一度なってしまうと、元に戻すのは難しいのだそうです。
「痛みを取る手術や、アーチの構造を矯正して土踏まずの形を復元する治療は、症状に応じて行われています。しかし、足裏のアーチが本来持つ機能を完全に元に戻すことは難しいとされています」
すでに扁平足の人は不調が進行しないようにすること、土踏まずがある人は失わないように努め、扁平足を予防することが大事。
扁平足の予防には、足裏全体の筋肉を鍛えることが有効だと橋本先生。次ページでは、足裏の筋力を上げるためのエクササイズをご紹介します。
ハイヒールは高さ5cm以下で
ヒールのある靴を履いていると足のラインがキレイに、スタイルもよく見えますよね。しかしヒール靴を履いた状態は、足裏全体に体重を分散させることができないため、足裏にかなり負荷がかかっていることになります。文献的には、「6cm以上のハイヒールを履いていると、必ず障害を起こす」とも。ヒールの高さは5cm以下、できれば3cm以下がオススメ!!