Vol.8
思わず笑顔になる!
日本の旅をご紹介します。
素朴な自然の中で触れる、アートスポット。
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素朴な自然の中で触れる、アートスポット。
静かな人気を集める大人のためのリゾート。
雄大な山々を擁する八ヶ岳連峰や南アルプスに囲まれた山梨県北杜市。今回訪れた小淵沢はその中央、八ヶ岳南麓に位置する高原の町です。
かつての小淵沢は、全国的に有名なリゾート地、清里にもほど近い地理にありながら、その存在に関心を注ぐ人はまだ少なかったと言います。しかしそのことが逆に功を奏し、素朴な自然が残る静かな環境がじわじわと注目され始めます。そして別荘やおしゃれなレストランなどが数多く建つようになってからも清冽な印象を失うことなく、やがて大人が楽しめる高原リゾートとして広く知られるように。今では"小淵沢を目指して"各地から大勢の人がやって来ます。
そんな小淵沢の魅力を堪能するには、賑わう夏が過ぎた今からが狙い目。高原ならではの爽やかな気候は残暑から逃れるにもうってつけです。また、紅葉の名所でもある小淵沢。10月の半ば頃には燃えるように赤く染まる山の風景に出合えるでしょう。
高原×メルヘンに誘(いざな)われドリーミーな世界へ。
この地の豊かな自然に魅了されたのは、別荘のオーナーらだけではありません。20~30年程前からアーティストたちが移り住み始め、やがて北杜市は"芸術の杜(もり)"とも呼ばれるように。アートスポットも数多く、そんな中、小淵沢には絵本や童話にまつわる施設が集中しています。「0才~100才のこどものこころへ」がキャッチフレーズの『えほん村』、「こどもだったころのみなさまに」と呼びかける『小淵沢絵本美術館』、また、「なんでもない世界のすばらしさ」を伝える童話作家・東君平氏の記念館『くんぺい童話館』などが歩いてでも巡れる距離に。そして、そのどれもが子どもより、むしろ大人にこそ必要な優しさにあふれています。
各所で出合う作品に癒され、励まされ、纏っていた鎧がはがされて、素直な心を取り戻せるのでしょう。時には熱いものが込み上げ、思わず涙腺がゆるむことも。
「絵本を描くために小淵沢に来たのがきっかけ」と語るのは大阪出身の造形作家で『えほん村』を運営する松村太三郎さん。「ここは子どもたちはもちろん、ストレスを抱えがちな大人のための場でもあります。幼い頃、絵本に親しむ機会を持てなかった人にも、そのすばらしさを知ってもらえたら素敵ですね」
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村民となってネバーランドへ。
えほん村30年前、造形作家・松村太三郎さんと妻で絵本作家の雅子さんが個人蔵書を開放したことから始まった絵本専門図書館。時を重ねるごとにギャラリーやシアター、カフェと、その規模&内容を増し続け、"村"と呼ぶにふさわしい現在の姿に。子どもから大人まで、誰もが心を解放できるネバーランドです。
北杜市小淵沢町上笹尾3332-426 ☎0551-36-3139 営業時間/10:00~17:00(最終受付16:00)水曜休 入村料¥500
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愛と夢が詰まった森の中の洋館。
小淵沢絵本美術館絵本の黎明期を彩った英国の作家ケイト・グリーナウェイの原画展示を中心に、館長の望月 平さんの目利きでセレクトされた絵本も多数紹介。コーヒーやジュースのもてなしを受けながら、「人が人として生まれてよかったと思わせてくれる」と、絵本を愛してやまない望月さんと絵本談義はいかが。
北杜市小淵沢町上笹尾3331-441 ☎0551-36-5717 営業時間/10:00~17:00 水曜休(9月中は無休)入館料¥600(ドリンクサービス付き)
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心の琴線に触れる絵と詩の宝箱。
くんぺい童話館46歳の若さで急逝した絵本作家・東 君平さんの原画などを展示。シンプルな線で描かれた絵と、無垢で優しい言葉が生み出す作品の数々は、時を超えて今も人々の心をとらえて離しません。笑顔で出迎えてくれる館長で夫人の英子さんによると「ほぼ一日過ごしていかれる方も珍しくない」とか。
北杜市小淵沢町篠原3332-930 ☎0551-36-4514 営業時間/10:00~17:00 火水曜休 入館料¥600(子ども¥300)