江戸時代以降の町並みに、新旧が溶け込む「ならまち」。
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江戸時代以降の町並みに、新旧が溶け込む「ならまち」。
奈良公園を歩いた後は、江戸時代末期からの町家が残る、ならまちへ。古くは元興寺の境内地であり、明治以降は、商業の中心地として発展してきたエリアです。墨や筆、蚊帳、酒、醤油などを扱う、昔ながらの商店が多くあります。
書は、奈良が本場であるという話を聞き、筆作りを体験できる『奈良筆 田中』を訪ねてみました。聞けば書は、漢字や仏教の伝来とともに発展したそうで、日本の筆の歴史は奈良筆に始まるそう。筆職人・田中さんから、書の歴史をうかがいながら筆作りに夢中になったひととき。作ることの喜びのほかに、古くからの文化の中に身を置けることも魅力です。
伝統の技を継承し、味わい深い旨酒を醸し続ける酒蔵。手間ひまをかけることのすばらしさが感じられる奈良団扇の専門店……。ならまちと、その周辺にある店を訪ね歩きながら、先人の知恵と思いを大切にする人々に出会うことができました。
そんなならまちには、町家を利用した新しいお店も多くあります。その先駆け的カフェである『カナカナ』は、若いご夫婦が営むお店。異なる時代のインテリアが、センスよく溶け合っています。〝古きもの″に惹かれる若い世代が、それを未来に伝えていくのだなと感じられました。
時を重ねることで生まれる魅力、受け継がれる伝統のすばらしさを知った奈良の旅。この地にあふれているのは、きっと、大切にしたいものをつないでいきたいという人の思い。時を超え、多くの人の思いに触れて、心が満たされていくのを感じました。
町家改装の先駆け的カフェは、ならまち歩きの拠点にぴったり。
カナカナ
ブラジル音楽を愛する植嶋秀文さんと、雑貨本の著書を持つ奥さま・井岡美保さんが営むカフェ。奈良県で生まれ育ったふたりが、13年前にならまちでいち早く、町家を利用したカフェをオープン。本当のお家のような居心地でカフェタイムを楽しむことができます。
●奈良市公納堂13 ☎0742-22-3214 営業時間/11:00~20:00 月曜休(月曜が祝日の場合、翌火曜休) アクセス/JR・近鉄奈良駅よりバス乗車、「福智院町」下車徒歩2分、近鉄奈良駅から徒歩15分
椅子席に加えて、のんびり過ごせる小上がり座敷のある空間。音楽イベントも開催されます
風情のある伝統的な奈良格子の町家
終日いただける植嶋さんお手製の和定食カナカナごはん¥1,300。野菜中心の小鉢がたっぷりついた定食は、よく歩いた身体に染みわたる滋味のある味わい。オリジナルカレーにもファンが多いそう
のりを含ませた筆の形を整える「穂首仕上げ体験」は¥1,600(材料費込み・所要時間30分)。筆軸くり込み工程から体験できるコース(60分・¥2,200)も選べます
田中さんのてきぱきとした指導でなんとか形に……喜びもひとしお
筆発祥の地・奈良で、筆作りを体験。
奈良筆 田中
奈良時代から伝わる伝統技法により生み出される奈良筆。「毛組」から仕上げまで全12の工程のうち、体験できるのは最終工程の2種。職人の熟練の技を間近で見られる貴重な時間と、完成した筆つきの手頃な料金に感激。
●奈良市毘沙門町29 遊悠工房内 ☎090-8483-4018 営業時間/11:00~17:00 火曜・水曜休 アクセス/JR・近鉄奈良駅よりバス乗車、「福智院町」下車徒歩4分、近鉄奈良駅から徒歩15分
(上)鹿や五重塔など奈良を代表するモチーフを透かし彫りに。団扇 新鹿¥2,376
(下)奈良時代より伝わる奈良絵が可愛い扇子。¥2,160
手作りの温もり伝わる伝統工芸品をお土産に。
池田含香堂
古くは春日大社の神官の手内職として作られた奈良扇子を今に伝える老舗。透かし彫りなどの技法を施した美しい団扇や扇子がそろいます。予約すれば透かし彫り体験教室も(¥1,620、繁忙期は除く)。
●奈良市角振町16 ☎0742-22-3690 営業時間/9:00 ~19:00 無休(4〜8月) アクセス/近鉄奈良駅より徒歩5分
三条通り沿いに顔を出す、この看板が目印。細かい技が光る作品も見られます
春鹿純米大吟醸(720㎖)¥2,700などの銘酒も種類豊富。昔ながらの空間のなかきき酒が楽しめます
可愛いグラスで銘酒をたしなむ。
今西清兵衛商店
清酒発祥の地・奈良。こちらは銘酒「春鹿」の蔵元で、オリジナルグラス(¥500)を購入すると、季節限定酒など5種のきき酒が楽しめます。奈良漬や手ぬぐいなどお土産にぴったりな商品も。
●奈良市福智院町24-1 ☎0742-23-2255 営業時間/8:15~17:15 お盆・年末年始休 アクセス/JR・近鉄奈良駅よりバス乗車、「福智院町」下車徒歩1分、近鉄奈良駅から徒歩15分
一年後、あなたに届く「思い出はがき」
奈良の観光センターなどで、一年後に発送される「思い出はがき」を実施中。時間の旅の思い出を自分宛に書き綴ってみては。