Vol.5
食材の力で、毎日をもっと健康に。
管理栄養士がお悩みに答えます。
コレステロール値が下がらない。食事を制限しているのに、なぜ?
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コレステロール値が下がらない。食事を制限しているのに、なぜ?
卵など、コレステロールの多いものを控えているつもりなのに、数値があまり変わりません。ほかに効果的な食事の摂り方はありますか? 控えるだけではだめですか? (埼玉県・康子さん 44歳・主婦)
コレステロールは身体に必要なもの。ただ、善玉と悪玉のバランスが大事です。
控えるだけでなく、摂ることも考えて。
コレステロール値を気にするのはなぜ?
健康診断の結果、コレステロール値が高いとやはり気になってしまいますよね。でも、そればかりにとらわれないで。数値が高いとよくないのはなぜか? まずそれを知っておいてほしいのです。コレステロールを正しく理解することで、どんな食事を摂ればいいか考えやすくなりますよ。
コレステロールは、悪者のように思われがち。でも、本当は細胞を守る細胞膜や、ホルモン、脂肪の消化・吸収にかかわる胆汁酸の材料になるなど、とても大切なものなのです。ただ、さまざまな食べ物を好きに選べる現代の環境によって、コレステロールが過剰になりやすい。だから不必要なものだと誤解されてしまうんですね。
コレステロールには、LDLコレステロールとHDLコレステロールがあり、LDLはコレステロールを肝臓から全身に運ぶ働きが、HDLには余分なコレステロールを回収し、肝臓に戻す働きがあります。HDLはその働きから善玉と呼ばれていますが、LDLは、増え過ぎると血管壁に入り込み、動脈硬化の原因になることから悪玉と呼ばれています。善玉HDLと悪玉LDLのバランスがくずれた状態が続くと動脈硬化は進行。つまり、コレステロール値が高いとよくないのは、動脈硬化のリスクが高まるからなんです。動脈硬化は、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など深刻な病気を引き起こします。コレステロール値を下げることだけでなく、動脈硬化の予防・改善を目的に、食事を変えていきましょう。
油に卵。意外な食品が、動脈硬化予防に!
動脈硬化予防のために摂りたい食品のひとつは油。身体に悪いイメージがありますが、n‐3系脂肪酸は、健康のために欠かせないものです。魚の油に多く含まれるDHAやEPA、アマニ油やシソ油などに含まれるα-リノレイン酸が代表的。悪玉LDLを減らし、善玉HDLを増やす働きがあり、血液をサラサラにしてくれます。
次にレシチン。大豆などに含まれている成分で、n‐3系脂肪酸同様、LDLを減らし、HDLを増やす働きがあります。納豆は特に優秀な食品。レシチンを含んでいる上、粘り成分であるナットウキナーゼに、血管を詰まらせる血栓を溶かす働きがあるのです。納豆は、動脈硬化の予防にも改善にも役立つと言えます。
康子さんが控えているという卵にもレシチンは含まれているんですよ。卵は食べ過ぎなければ、さほど気にすることはありません。
DHAやレシチンは、“脳の栄養”とも言われている成分。コレステロールのバランスを整える上、認知症の予防になるとも言えます。控えるだけでなく、上手に摂って、未来の健康に役立てましょう!
- n-3系脂肪酸
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コレステロールのバランスを整える油。
DHA、EPAは、さんまや鯖など青魚に豊富。α-リノレイン酸を含むシソ油やアマニ油などは、加熱を避けて。サラダにかけたり、味噌汁に入れるなどして、1日ティースプーン1杯を目安に。
- レシチン
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大豆レシチンは予防に、より効果的。
大豆、卵(卵黄)のほか、胡麻油、小魚、レバーなどに含まれます。大豆レシチンは、血中に長く留まることができるので、より動脈硬化予防に効果的。
- ナットウキナーゼ
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動脈硬化予防には夜に摂るのもおすすめ。
朝食で摂ることが多い納豆ですが、血栓を溶かす力を生かして、血栓ができやすい夜に摂るのが◎。しっかり粘りを出してから食べましょう。